4月28日 残業
最後の山形は、ゆっくりと歩いていった。ようやく全員が帰った。しかし、俺の仕事は全然終わらない。これが、残業だった。俺は、淡い光で照らされながら、この前使っていた資料を見返していた。この資料は、この前のプレゼンテーションで使ったものだ。あんなに時間をかけて作ったのに一瞬で、批判され俺のプロジェクトは終了してしまった。あんな日は、二度と思い出したくなかった。この資料は俺一人で作ったものではなかった。同期で仕事熱心な今市にも手伝ってもらったものだった。机の上には果てしないタスクが山のように置かれている。
いつもは、キーボードを叩く音が社内で賑わっているがこの時間は静寂そのものだった。この空間にずっといるのが嫌になっていた。時刻は、もう20時を過ぎようとしていた。たしか、同期会のスタートは、20時だった気がする。当然、すぐには間に合わない。これも想定してたから仕方がないんだが。今日中に終わらせないといけないタスクは残り4つ。なんとしてでもしなければ。とくに、このプレゼン資料。こればかりはな、、、、、、。ため息が出そうになったが、このプレゼン資料は作らないといけない。締め切り時刻が迫っていることで、なんとか自分を奮い立たせた。
スマホに着信が。俺は、それがアイツらからであることがわかった。マイクスピーカーにし、着信に出ると、軽快そうな声が静寂な社内を切り裂いた。「おい、新!!大丈夫?」。大丈夫ではないけど、やるしかない。俺は、そう思えた。俺は微笑みながら、「ああ。もう少ししたら終わるさ」。俺は、渡された資料をちらりと見る。このレベルの資料を作るには時間がかかるだろうな。それでも、弱さは見せなかった。そして、静かに着信終了ボタンを押したのだった。
頑張れば、あと2時間で終わる。そしたら、アイツらにも会いに行ける。俺は、再び、キーボードを叩き始めた。コンコン!!何か音が聞こえる。コンコンコン。辺りを見渡すが何もない。新!!後ろを振り返ると、そこにはいつものアイツらが待っていた。森川、今市、青野。俺たちが集まるいつものメンバーだった。まさか、ここまで来てくれるとは。森川が呼んでくれたんだろうか?やる気はないけど、人一倍優しさに溢れる男だった。いつもなら、合った瞬間ふざけあう俺たちだったが、今日ばかりは違うかった。俺の仕事を手伝いながら、これからの会社について語ってくれたのだ。




