4月26日 ご褒美
仕事がひと段落した頃には、檜と二人きりだった。檜も同じく仕事を終え、休憩しているように感じた俺は、話しかけた。
俺 「後輩は、どうだ?」
檜 「うーん。微妙っすね」
アッサリと切ってしまった。
俺 「微妙じゃ困るんだよ、ちゃんと指導しろよ」
檜 「えー。だってイチイチ言うのめんどくさいじゃないですか」
知らないな、それは。檜がどう思うかは勝手だけど、ちゃんと育成してもらわないと困るな。
俺 「それは、そうなんだけどな」
檜 「言われてもなんか反応今一つって感じしますよ」
俺 「知らねぇよ」
思わず心の声が漏れてしまった。気持ちは、わからなくはないけど。このままほっといてもどうせ変わらないだろ。
檜 「えー。そんなこと言わないでくださいよ」
俺 「じゃあ、どんな奴か言えよ」
コイツの相手はめんどくさい。けど、この営業課で使えるのはコイツしかいない。
檜 「石木と中丸でしょ」
俺 「ああ」
檜 「石木は、仕事は早いですけど、個人プレイって感じんですね。営業やらせてもそんなにいい結果は出ないと思いますね。中丸は、理論が先にくるので、やれることとやれないことがハッキリしてる印象ですね」
要するに、二人ともそんなに仕事はできないということだろう。そう決めつけてもらっても困るんだけどな、俺は。
俺 「ふーん」
檜 「俺、ちゃんとしてたでしょ?」
俺 「どうだろ」
呆れてあんたりモノが言えなかった。
檜 「まぁ、育成してやりたいんですけどね。なかなか難しくて」
俺 「わかるけどな。でも、お前がやらないと他の奴らにはできないだろ」
檜の気持ちは理解できる。それでも、やるしかなかった。
檜 「山形さんもいるし大変なんですよ」
俺 「それはわかるな」
頑張って傾聴に努めた。
檜 「でしょ?」
俺 「もし、いなければできそうか?」
檜 「はい」
そんなに言い切れるもんなんだな。
俺 「じゃあ、なんとか山形さんに言うこと聞くようにいうから任せたぞ」
檜 「わかりました。できた時には、奢ってくださいよ」
相変わらず、コイツはご褒美でしか釣れないな。
俺 「まぁ、考えとくよ」
檜 「なんですか、それ。ハハハハ」
まぁ、笑い事で済めばいいけど。ここから、どうなるかは全くわからなかった。




