4月20日 ジム
いつものように、ジムのドアを開けて中に入ると、テンションが上がるような音楽と、おっさん達の筋肉勝負の様なものが行われていた。そんな競うほど頑張らなくても。俺は、心の中で思った。汗と筋肉の匂いが室内に充満しているような気がした。俺も、ロッカールームに荷物を置いて、早くトレーニングをしないとや。ここ最近は、仕事に追われてなかなかトレーニングをする時間すらなかった。営業三課の成績が出ないことに加えて、中村さんや深山さんたちとも話す中で結果が出ないことにもがいていた。
中村さんや深山さんたちからは、気にしなくていいと言われていた。しかし、この言葉こそ一番気にしてしまうのだった。いつもそうだが、この人たちは、俺に怒ったことがない。いつも肯定的な声かけしか行わない。意図的かどうかは知らないけど、こういう声かけをされる方が逆に困ってしまうのが俺だった。ロッカールームに着いた俺は、いつものようにカバンを中に入れて、着替えて始めた。今日は、いつも着ていた服が見つからなかったので、違うトレーニング服を着用した。トレーニングだけだから、服なんて何でもいいというのが本音だった。
中村さんや深山さんからしたら、仕方がないと言ってはいるものの結果は出してほしいと思うのが本音だろうな。俺は、いろいろなことを考えていた。結果を出す方法はもう見つけていた。あとは、リスク覚悟で挑戦できるかどうかがポイントだった。挑戦できない一番の理由は、退職者を出さないことを一番の成果として求められていたからだ。営業三課は、既に高山さんが辞めたことに加えて、休職中の比良までいる。会社内では、最もヤバい部署として名を馳せていた。
そんな俺たちを見て、会社側もテコ入れを測った段階なのだろう。やっぱり、いろいろなことを考えてしまう。早くトレーニングに集中しないと。着替えて、再びトレーニング室に入った。今は、どれも埋まっていそうだな。唯一空いていたのがランニングマシンだった。ウォーミングアップがてらランニングマシンを走ることにした。走っている間は、できるだけ考え事をしないように頭の中を無にした。開始3分ほどで、だいぶしんどくなってきている。トレーニングをしていない証拠だなと思った。息を吐きながら、ぎりぎりのところまで追いこんでいく。いきなり、ここまでしなくてもいいように思ったけど、こんなことをしない限り、俺は何かから解き放されない気がしたのだった。




