4月19日 ジャケット
俺 「ここの会社ですね」
中村「おう、ありがとう」
営業三課の3月の売り上げ表と取引先が書いたプリントを渡した。
俺 「こんな遅くまで、何してるんですか?」
中村「また、明日会議なんだよ」
もう、21時を過ぎている。他の社員は、2時間前に帰っているのだ。早く帰りたいわけじゃないけど、なんで俺だけ残っているのかと思うとイラついてしまう。
俺 「誰が来るの?」
中村「園山さんや深山とかも来るよ」
俺 「凄いな」
大変なメンバーたちだ。
中村「資料も多くてさ」
俺 「頑張ってくださいよ」
もうジャケットが疲れているように感じた。
中村「もう、帰るの?」
俺 「まだ、帰れないですよ」
中村「大変だな」
お前も残れと言わんばかりだ。
俺 「聞いてくださいよ」
中村「どうした?」
仕事に飽きた俺は、パソコンをうちこむ中村に話し始めた。
俺 「花沢がめんどくさいんですよ」
中村「また、なんかやってるのか?」
俺たちは、いつも花沢の話をしていた。
俺 「この前、新規契約とってきたところなんですけど、何聞いても答えてくれなくて」
タイピングの手が止まった。
中村「そりゃあ、大変だな。何を聞きたいの?」
俺 「その会社の社長像とどんな会社かを聞きたいんですけど、そこが何回やっても答えられないんですよ」
パソコンを机の上に置き、俺の方を向いた。
中村「なるほどな、困るな責任者として」
俺 「そうなんですよ」
ここから、いつもの中村のセリフが来ると思った。
中村「じゃあ、これから契約する前に、見て欲しいポイント伝えてみたら?」
やっぱりそうだ。
俺 「いやー、そういうことじゃないんですよ」
中村「なんだよ、それ」
どうしたらできるかは、中村さんに求めていなかった。
俺 「もう、わかってないですね」
中村「何がだよ」
俺は、髪をかきあげた。
俺 「こう言う時は、俺の愚痴にもっと共感するんですよ」
中村「無理だわ」
俺 「もう、飽きた」
俺は、仕事できる状態ではなかった。
中村「俺も残りは、明日しようかな」
俺 「間に合うんですか?」
中村「いや、間に合わんけど、間に合わす」
俺 「なんですか、それ」
何となく、言いたいことはわかる。やりきることが、最も大事なのだ。




