4月10日 諦めない
なぜか、昨日の商談が気になって仕方なかった。
ー4月9日ー
山城には申し訳なかったが、こちらの事情もあるのでこれ以上、サポートすることは難しかった。
俺 「また、何かありましたらいつでも言ってください」
山城「‥‥」
俯きながら資料を見つめている。
俺 「では、こちらなら名刺だけ置いときますね」
そっと机の上に名刺を置いた。
山城「‥‥」
時計を見ると、もう戻らないといけない。
俺 「次、ありますのでこれで失礼しますね」
山城「‥‥。ちょっと、待ってくれますか?」
まだ、何か言いたそうだった山城の話を聞くことにした。
俺 「はい、どうされました?」
山城「どうしても支援してほしいんです」
俺 「ん?」
少し目に涙が浮かんでいる状態だった。
山城「私、まだ18歳なんです」
俺 「若いですね」
似たような状況が4年前にもあった気がする。
山城「それで、コネとかも全くなくて。もし、ここに支援してもらえないとサービス自体が打ち切りになってしまうんです」
たしか、当時、中村さんの契約に一緒に行かせてもらった件だったかな。
俺 「それは、大変ですね」
山城「そうなんです。だから、どうしても支援してほしいんです。無理でしょうか?」
情に訴えかけたが、中村はあっさり断った。
俺 「その発想がダメなんじゃないですか?」
山城「えっ?」
俺 「私も簡単にサービスを安売りしたら、社員がクビになります。助けてもらえますか?」
あの時と同じように、私も断ることにした。
山城「‥‥」
俺 「そんなことしてたら、これから本当につぶされますよ?」
山城「‥‥。すいません」
もう、山城は言い返すことができなくなっていた。
俺 「では、時間が迫ってるので次いきますね」
山城「すいません、あともう一回だけ会ってもらえませんか?」
俺 「えっ?」
それでも食らいついてくる。
山城「また、日を改めて。今度は、違うかたちでサービスして貰えないか考えます」
私の中でもこれ以上、断ることは難しかった。
俺 「わかりました。では、ニ週間後の同じ時間帯で」
山城「お手数をおかけします」
深々とお辞儀するのが見えたのだった。支援したい気持ちがないわけじゃないけど、こういうかたちになってからはしたいと思わない。それがわからないのだろうか?




