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4月6日 資料作り

 俺のところに配属となった石木、中丸。昨日の歓迎会では、他の部署の人と比べると、あまり目立っていないみたいだった。あの二人が他の人にどう映っているのだろうか?

 俺は、いつものように取り引き先に電話をかけて、その資料をまとめていた。中丸には、その資料作りを手伝ってもらっていながら、学んでもらっていた。俺はデスクに向かいながら、中丸の様子を見た。彼は、机の上に置かれたフォルダに手を伸ばし、そこから資料を引き出した。その様子を見ていた俺は、空白の席に視線がとらわれた。

 いつまでも帰ってこない奴のことを考えても仕方がない。それはわかっていた。でも、あの場所にはアイツしか受け入れることが難しかった。アイツとは、比良のことだ。彼がいなくても、彼の存在だけで何か心地よいものがあった。俺は、それだけ彼の帰りを待っているということに気がついた。ある程度、中村や深山たちはわかっている。アイツが帰ってこないことも。

 俺も頭の中では理解できた。俺は資料作りのスピードをあげた。素早く、手を抜かずにキーボードを叩き出していく。たしか、アイツは、この作業がとても苦手だった。横にいた中丸は、早くタイピングを打ちこんでいく。長い時間がたっても、彼は時間の重さを感じないみたいだ。

 ただ単に、コンピューター上の資料作りだけだと思っていた彼はどこかテキトウに仕事をしているようにも見えた。実際、そうではないのだろうけど。1時間ほどたって彼が作り上げた資料は、とても素晴らしかった。俺は、手伝ってもらったというより、ほとんど彼がしたといっても問題ないくらいだった。

 比良なら、もっと時間がかかったんだろうな。それでも、ガムシャラにやっていく彼のスタイルにどこか惹きつけられるものがあった。一方、短時間で結果を出した中丸をどう評価したらいいのだろうか?俺は、わからないでいた。とりあえず、完成した資料をファイルにしまいこみ、花沢と石木が作った資料を確認する作業を始めた。

 花沢たちが作った資料は、この会社のプロジェクトに関するもので、俺たちの未来に関わっていくものだった。彼女が作り上げた資料はすばらしかった。見栄えもよく、内容も充実していた。さすが、芸術学科卒業なだけある。俺がそれを伝えると、彼女は満足感に浸った。こういう資料は、俺たちのような男性陣にはあまり向いていないように感じる。これからは、アイツらに任せようと心の中でつぶやいた。

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