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4月5日 歓迎会


 今日は、新入社員の歓迎会だった。ベテランは大盛り上がりしている中で、新入社員は、控えめだった。どうやら、今日は、深山の誕生日らしかった。新入社員が縮こまっている中で、彼らは盛大にバースデーソングを流していた。

「みんな、きて!!」。一気に新入社員が前へと呼ばれた。どうやら、新入社員の自己紹介が始まるみたいだった。今年の新入社員は、高卒、新卒合わせて13人。もう、俺たちの会社も100人を超えて中小規模の会社になろうとしていた。

 新入社員が自己紹介をしようとすると、先輩社員から強烈な声で叫ばれる。あー、俺もこんな時があったな。当時は、恐る恐る先輩に近寄り、あいさつをしたもんだった。"どうだ、緊張してるか?気にすることはないぞ"。トップバッターで自己紹介をした人は、二人目の遠山という男にマイクを渡した。

 遠山という男は、高卒ながら堂々と挨拶をしている。野球をしていただけあるな。どの新入社員も、初めての歓迎会で自己紹介をさせられている。緊張していることも理解できる。そんな新入社員に手を差し伸べてくれたのは、深山ではなく、中村だった。中村の一言で新入社員も一気に明るくなったようで、少しだけ安心を覚えたみたいだ。

 俺たちが飲んでいるこの会場は、明るい色のバルーンや花、飾り竿がいっぱいで、アットホームな雰囲気が漂っていた。俺は、同期の青山や森川たちと同じ席についていた。社員の中には、広い会場を歩きながら、挨拶をする人も多くいた。みんな、見せ合うように笑顔を浮かべていた。

 こんなかたちで祝われている新入社員も、来年になったら何人かはいなくなっているんだろうなと思うと何とも言いがたい。昨年は、15人のうち、5人が辞めるなど会社にとっては大きなダメージを受けた年でもあった。新入社員を見ていると、なんだか危険そうな人物がいることを今年も感じたのだった。

 「伊東、飲めるか?」。ドリンクを注いで来たのは、園山だった。いつの間に。俺は軽く返事をしてビールを注いでもらったのだ。周りの社員たちは、新入社員に横柄な態度で聞かず、心地よい会話の輪に誘うように熱心だった。この心地よい環境と温かい人々に支えられ、俺も育ったのかな?前にいた新入社員は少しずつ堅苦しい空気から解放され、自然な笑顔を浮かべるようになってこれたのはよかった。"新入社員、どこから来たの?"先輩たちとの質問は続く。どんな話題も楽しく返してくれる先輩たちを横で見ていた。

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