表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/80

3月24日 片川亮太

 昨日の契約打ち切りになった会社の整理をしていた。あんな形になるとは思いもしなかった。トラブルがあったとはいえ、まさかな、、、、。悔しさと無力感でいっぱいになっていた。資料に目を通していると、中村が契約にこじずけたことがわかった。契約日は、4年前になっていた。まだ、俺が入ったばかりの頃だ。

 4年前は、まだ研修が多く、今みたいになるなんて考えもしなかった。同期の青野、今市、森川とよく飲みに行っていた。あの頃は、延々と先輩の悪口を言ったものだ。俺は、ずっと社長をディスっていた。あの頃は、まだ社会人になったということすら実感しておらず、よくわからない日々を過ごしていた。

 入社当初は、いつも同期と比較されていた。特に、青野とは同じ部署ということもあり、いろいろ言われた。青野ができて俺ができないなんてこともざらにあった。ただ、2年目から青野の部署異動とともにこれから、大きく変わることになった。

 あの頃は、まだ自分が責任者になるなんて思ったことなかったか俺は、好き放題していた。好き放題した俺を中村さんが怒らず、片川さんに怒られまくった。

 片川さんには、挨拶と敬語。それだけだった。1日でも上手く使えていない日があれば、次の日は、確実に面談になった。面談では、何度も片川さんに反論していた。しかし、その反論全て却下されてしまう。結局、自分の責任になる。

 営業の仕方や資料作成なんて全く教わらる時間なんてなかった。それでも、片川さんは、熱かった。いつもご飯に作ってくれたり、俺のこれからについて心配してくれた。一方、中村さんには、怒られない代わりに教えられたりもしなかった。3年目以降こそ、たくさん教えてもらったが、仕事のいろは、ほとんど片川さんの精神論だった。

 片川さんは、体調不良で仕事をやめる結果になったが、彼に教えてもらって本当によかったと思う。仕事をやめてからも、1ヶ月に1回は連絡してくれた。4年目の今ですら、連絡してくれるとても優しい人だった。

 今思えば、先輩に怒られるあの日の方が、今より数倍楽であることに気がついた。今は、ミスしても会社の誰かに怒られることはないし、失敗しても部下の責任にすらできる。でも、誰も自分を守ってはくれなかった。自由と孤独が入り混ざったピッチャーマウンドに立っている様な感覚に陥ってしまっていた。俺は、昨日、山本と話した内容をパソコンに打ち直していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ