3月22日 人事発表
会社内は、正式に人事発表が行われざわついていた。俺らの部署は、俺を含めて6人在籍することになった。山形、花沢、檜、石木、中丸。どれも、一筋縄ではいかないメンバーばかりだ。
唯一のメリットは、山形と檜がいることだ。山形は、部署こそ違うが最近は、よく時間を過ごすことが多い。それに加えて檜とも仲がよかったことは救いだった。
俺 「山形さん、この資料どうなってます?」
山形「ここは、先日契約打ち切りになったんですよ」
それは、知っている。なぜ、報告してこない、、、。俺は、契約がなかったことより、報告してこなかったことに苛立ちを感じていた。ただ、それを直接言うことはできない。
俺 「そっかぁ」
山形「それより、ここの会社との打ち合わせ誰が行くんですか?」
全然、俺の話を聞いてない。
俺 「そこは、俺と竹中でいくよ」
山形「えーっ。私もあそこの会社行きたかったんですよ」
とても、残念そうに見てきた。そんなにやる気があるなら、連れて行ってあげようかと心が揺らいだ。
俺 「そうなの?」
山形「はい、あそこのオフィスめちゃくちゃキレイじゃないですかぁ」
俺 「そうなの?」
さっきまでの心の揺らぎを返して欲しくなった。
山形「そうなんですよ。よく、SNSにも載ってるんですよ」
俺 「全然知らなかった」
そんなことを話していると、後ろから声が聞こえた。
檜 「伊東さん!」
俺 「ん?どうした?」
かん高い声で、檜が話をしてきた。
檜 「ここの会社行きますか?」
俺 「ああ。行きたくねぇけどな。ハハハ」
檜 「ここって、先日トラブルあったとこですよね?」
檜が指さした会社は、上司交代に伴いクレームがきたところだった。こっちに何か非があったわけではないので、俺は、納得できなかった。それでも、責任は、全て自分にある。そう思うことが苦痛だった。
俺 「そうなんだよなぁ」
檜 「行きたくないですねぇ」
俺 「代わりに行ってくれ」
これから、この部署の責任者になれば、こういったことが毎日起こってくる。正直言えば責任者になんてなりたくなかった。ただ、誰もやってくれる人はいない。でも、、、。
檜 「嫌ですよー、伊東さんが言ってくださいよー」
俺 「じゃあ、代わりにこの資料よろしくね」
そう言って、俺は他の会社の資料を檜の机に置き、肩を叩いた。誰だって、怒られるのは嫌だ。でも、これを嫌だと思っていたら何も始まらねぇ。




