3月21日 矢澤恭司
今日は、朝から高校時代の友だちである矢澤の家に来ていた。矢澤の家は、ギターやベース、そしてドラムで家が埋め尽くされていた。昨日の喜早同様、最近について話をしていた。
俺 「彼女、どう?」
矢澤「美希?」
浦沢美希は、矢澤の彼女だった。
俺 「ああ」
矢澤「もう、別れたよ」
俺 「マジ?」
驚きで上手く声が出なかった。
矢澤「うん。2ヶ月前くらいにな」
2ヶ月前って言えば、俺が会社で苦労していた頃だ。
俺 「だいぶ前なな」
矢澤「だって、お前と全然会えてないからな」
たしかに矢澤と会うのは、1年ぶりだ。
俺 「なんで別れた?」
矢澤「えー、なんか、フラれたからな」
矢澤は、たいして気にしていないようだ。ああいう能天気なところが意外とモテるんだろうなと心の中で思った。
俺 「めっちゃ面白い。ハハハハ」
矢澤「いや、面白くないわ」
浦沢のことは、小学校から知っていた。今でも、同窓会でたまに会ったりしていただけに、次会う時に聞いてみようと思った。
俺 「今、浦沢って何してる?」
矢澤「うーんとね、、、」
俺 「出てこねぇじゃんか」
すぐ思い出せない矢澤に、ツッコミを入れた。
矢澤「いや、会社で働いてるのはたしか」
俺 「そら、そうやろ。お前が、バンドしてるから別れたんやろ」
矢澤「それはわからん」
矢澤は、ドラムスティックを触りながら何かを考えている様子だった。矢澤には矢澤しかわからない何かがあるんだろうと思う。人の気持ちはわからないけど、わからないからこそ何を考えてるのか話すべきだ。
俺 「いや、わかる」
矢澤「いやいや、俺はバンドしてるだけで迷惑かけてないから」
俺 「浦沢は、働いて欲しかったんちゃう?」
勝手に浦沢の気持ちになって聞いてしまった。
矢澤「どうだろうな」
俺 「結婚の話は、出んかった?」
矢澤「いや出てたよ。でも、バンド辞めてからとは言ってたからそれかもしれな」
これ以上、ふみこむのも違うと思った。これは、矢澤と浦沢の話。俺には全く関係ない。
俺 「じゃあ、バンドのせいやな」
矢澤「まぁ、俺も売れると思ってしてるわけじゃないからね」
俺 「なんでやってるの?」
矢澤「面白いからな」
俺 「それだけ魅力あるってことやもんな」
矢澤は、手元にあったスマホを見ながら頷いた。




