3月15日 新店舗
会社に来てみると、朝から騒がしかった。俺がいつものデスクにつこうとすると、すぐさま、檜がやってきた。
檜 「伊東さん、おはようございます」
俺 「おはよう」
檜 「さっき、中村さんから電話あって」
まだ、何か言いたそうだった。
俺 「あっ、わかった。後で、かけ直すわ」
檜 「いや、今すぐかけ直した方がいいと思います」
珍しく、檜が俺に意見を言ってきた。
俺 「今すぐ?」
檜 「はい」
凄い勢いで、頷いた。
俺 「わ、わかった」
檜には、細かいことは聞かずに電話をかけることにした。デスクのノートパソコンを起動したが、斜めに折りたたみ、スマホを持って部屋から出て行った。部屋を出て、右側に進むと階段がある。ここであれば、周りに声が漏れることはない。俺は、スマホから中村へと連絡をかけた。
中村「おつかれ」
俺 「お疲れ様です、今、いいですか?」
中村「いいよ。ごめんね、折り返してもらって」
中村は、申し訳なさそうにしていた。
俺 「いや、いいですよ」
中村「実は、高山さんのことなんやけど、、、、」
俺 「はい」
高山。今、最も俺を困らせている人物だ。
中村「実はさぁ、急遽やめることになって」
俺 「えっ?」
中村「やめることになって」
俺 「どういうことですか?」
想定外のことで言葉がでなかった。
中村「実はさ、新店舗行きたいらしかってんけど、残ること想定してなくてさ」
4月から新店舗が出き、そこで仕事がしたかったらしい。
俺 「マジですかぁ?」
中村「そうやねん。だから、辞めるって」
俺 「いや、ネタですね」
笑いにかえるしかできなかった。
中村「そうやね。で、どうしよか、めちゃくちゃ迷ってて」
俺 「うーん。まじかぁ」
中村「いやぁ、驚いたよな」
俺 「これから、どうするんですか?」
中村「たぶん、新店舗は、出せへんと思うから。このままになるな」
新店舗を出す予定で動いていた会社の上層部は、とても慌ただしくなっているだろう。
俺 「そっかぁ、、、」
ため息をついてしまった。
中村「ごめんな、せっかく準備してくれてたのに」
俺 「いえいえ。比良もいないんで、タイミングが悪いということでしょ」
比良。1月まで、俺たちの部署で働いていたが。2月から、体調不良という名のもと、ずっと休んでいた。しかも、今では音沙汰もない状況だ。
中村「比良くんねー」
俺 「とりあえず、そこの説明をしていって、対応する感じで大丈夫ですか?」
中村「うん。問題ない。また、なんかあったら言うて」
俺 「わかりました」
そう言って、俺たちの電話は、終了した。




