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一党追放  作者: 藤咲晃
終章 さよなら
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ユキナ・テュラリアの背中

 松明に火を付けず夜の森を月明かりを頼りにユキナとレノは進む。

 梟の鳴き声が木の葉の音と共に響く中、


「流石に整備されてるから歩き易いな。これで明かりが有れば最高なんだが」


「……奇襲に明かりは厳禁、足音も立てないように」


 そう言ったユキナはエデンによって体得した技術を駆使し闇夜には溶け込むように静かに進んで行く。

 レノと一定の距離を保ちながら、彼が付いて来れる範疇で逸れないように。

 

(エデンの道具。ユキナのああいう技量を見るとアデュクの言葉が刺さる)


 彼女も以前アデュクと面会したらしい事は、彼女の退院間もなくにそれとなくルイから伝えられた。

 どんな話しをしたのかをレノは聞かず、そして先日アスガル伯爵の主催のパーティ。その別れ際にアスガル伯爵とユキナが何かを話している所を偶然目撃した。

 人気の少ない噴水の近く、月夜に照らされた長い白髪がいつも以上に綺麗に見えたあの晩。

 そして解散後、程なくして聴こえた爆音に慌てて他の冒険者と駆け付けた時には既に終わった頃だった。

 ユキナは襲撃犯に付いて騎士団には伝えたが、頑なにレノを含めた冒険者に語ろうとはしない。

 またルイとゴリス支部長も知っているらしい様子はレノでも容易に察することができた。

 ユキナの後を追うレノは心の何処で疎外感を感じながら拳を強く握る。

 

(まだ俺が頼りないから、だから相談の一つもしてくれないんだな)


 クエストや冒険に付いては相談してくれるが、ユキナは決してエデンに関する事だけはあまり話そうとはしない。

 不意にもしかしたら先日の覗きの一件で若干信用を失ったのではないのかと頭に過ぎる。

 それも有るかも知れない。

 そう思った矢先。不自然に森の中を照らす火の灯りにユキナが足を止め、木の影に身を潜める。

 レノはそれに倣い、彼女が見ている方向がしっかりと視認できる位置で身を潜めた。

 視線の先にはオークがこさえた松明と木製の壁、門に立つ二頭のオークが映る。

 壁の囲い。その向こう側に見える木製の砦にレノは息を呑む。

 同時に様々な疑問が湧くが今は目前のことに集中すべきだ。

 レノはゆっくりと足音を消しながらユキナの側に近寄り、


「見張りのオークが2か。爆炎で派手にやるか?」


 彼女にだけ聴こえる声量で話す。

 するとユキナのアホ毛がレノの考えを否定するように動く。


「木造は燃え易いからダメ。……ここは任せて」


 そう言うや否やユキナは剣を音を立てずに引抜き、レノの視界から一瞬で消えた。

 彼女の向かう先が分かっていたレノが砦の門に視線を向けると、既に首を失った二頭のオークが音を立てずに崩れた。

 レノはアデュクが白い死神とユキナを呼んでいた言葉の意味を漸く理解した瞬間だった。

 音も認識さえもさせず、たった一振りでオークを絶命させる。

 彼女からしてみればゴブリンに毛が生えた程度の魔物。

 だが、存在を悟られず物音一つも立てずに討伐出来るかと言われれば恐らく熟練の冒険者でも厳しいだろう。

 仮に物音を立てずに討伐が可能な魔法を使えれば可能だが、熟練者ほど弱い魔物に魔力を消費することを拒む。

 ユキナの魔力が使えないなりの戦い方と技術。きっとそれだけじゃないんだな。とレノは察しながら戯けた調子で彼女の下に歩む。


「それで何処から入り込む? それとも中で大立ち回りを演じるか?」


「……一周してみよ」


 ユキナの提案を受入れ砦を囲む壁を一周。

 門番のオーク以外に見張りらしい魔物がおらず、どうにも杜撰な印象を受ける。

 そして一周した所で入口が正面の門しか見当たらず、ユキナが壁に手で触れた。

 

「滑らか」


 レノも壁に手を触れると、手触りが滑らかで細かく木材の荒面をヤスリか何かで丁寧に削ったのだと思うほどオークの砦を囲む外壁は丁寧な作りだった。


「壁をよじ登る案は使えないか」


「うん、爪先を引っ掛けることもできないじゃむり」


 外壁からの侵入を諦めた二人は再び門に戻る。

 そしてレノがゆっくりと門に右手をかけ、


「開けるぞ」


「準備良いよ」


 戦闘体制に入ったユキナに合わせ、レノは魔力の光を左掌に球体状に作り出す。

 静かに門を開けその光の球を放り投げると内部から眩い光が包む。

 そしてオークの騒ぐ様な鳴き声を合図に門からユキナが飛び出る。

 それに続くようにレノが入り込み、視界を奪われたオークを確実に一頭、一頭と息の根を止めて行く。

 門の先、砦の中庭に居たオークを全て討伐した頃。

 警鐘の音が暗闇の森に騒がしく響くのだった。


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