表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

置き去りにしたプレゼント

作者: KWGJ9

宝くじが当たった。


当選金額300円。宝くじの購入金額は900円。連番三枚を購入した。

微妙な表情が僕の顔を覆う。まさに、僕の人生のような宝くじの結果だ。


『当たらないよりはまし。』という人もいるだろう。

『いっそ外れた方がまし。』という人もいるだろう。


そんな結果だ。


子供の頃のクリスマス。サンタの来ない家の子だった僕にとって、クリスマスとは普通の平日や休日だった。

サンタを信じている、信じていないではなく、そもそも僕がサンタクロースというものを知ったのは幼稚園に入って、他の子と遊ぶようになってからだった。

親が古い人間で、クリスマスという風習にイマイチなじみがなかったのだ。


ある程度の知恵が付いてから知ったサンタクロースという存在は、絵本の中の出来事としか思えなかった。当時はうまく言えなかったが、不確かさを感じていたのだろう。


クリスマスプレゼントがもらえなくて残念ということは全然なかった。理由は簡単で、クリスマスなどに関係なく毎月、何かしらのプレゼントを親や親戚がくれたからだ。

これを同じ幼稚園や小学校の子に話すと、大体の場合

「まいつきなんて、いいなあ。」

と言われた。

当時は自分が恵まれていると思ったが、中学生になって更に知恵がついてくると、別にそうでもないことが分かった。クリスマス以外の日に全くプレゼントを貰わない子が、どれだけいるだろうか。

子供なんてものは、おもちゃ売り場でおもちゃをねだり、お菓子売り場でお菓子をねだり、いたるところでモノをねだっている。それをプレゼントとして渡されるかどうかの違いでしかないのだ。


僕は大変な臆病者で、何かが欲しいだなんて言えなかった。周りの駄々をこねている子と同じように叱られるのではないかと思ったからだ。なので、ただただ物欲しそうに眺めるばかりだった。

それに気づいて、親や親戚は買ってくれたのだ。

高いものや教育に悪そうなものは大人の判断で弾かれていたのだろうが、小さい頃はそんなことも分からなかった。今にして思えば大変扱いやすい子供だ。


大きく得をすることもないが、損をすることもない。


大人になってからも僕は、そんな感じに生きてきた。

器用でもなく、かといって不器用でもない。


1等が当たれば大きな幸せを手に入れられるかと思って宝くじを買ったが、早々当たるわけもなく結果はこのとおりだった。

「まあねえ。」

当たったところで、使い道も思いつかないが。


宝くじの当選番号を確認した次の日、今日は休日だ。いつものようにフラフラと家を出て散歩をする。

疲れたら、水筒に入れた水道の水を飲んで、満足したら家に帰る。ご飯はありあわせ。

そうして、休日が終わる。


布団に潜り込む。

なんだかしらないが、おじいさんを思い出した。

おじいさんと言っても祖父ではない。名前もどういう関係も忘れたが、遠い親戚にあたる人だったと思う。

おじいさんは、怒ったり笑ったり泣いたりととても忙しい人だった。

おじいさんは、僕と会うとなぜだか最近起こった事を聞いてきた。そして、僕の話した内容に対して、いちいち怒ったり泣いたり笑ったりした。

「おまえはもっと、怒っていいんだぞ。」


僕は、泣いた。

結局、怒り方も笑い方もよくわからないまま大人になってしまった。泣き方もよく分からないが、分からなくても涙だけはポロポロと目からこぼれた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ