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バカ勇者(♀)とロリ巨乳魔王  作者: あめふる
魔王軍に入ろう!
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テストの結果


「それでは、結果発表を行います!」


 教壇にたったリリは、大きな声でそう言い放った。教室には3人しかいないのだから、そんなに大きな声を出されなくともちゃんと聞こえる。むしろ、ちょっとうるさいぞ。

 こうして心の中で怒りをぶつける我だが、気が気じゃないのだ。テスト、全然できなかったからな。勇者に誘われた、はさみ将棋や、罰ゲームやらで忘れていたが、全然自信がない。ビリだったら、どうしよう。そんな不安に、苛まされている。


「まず、魔術師様の結果からです。魔術師様、100点。全問ほぼ完ぺきな解答で、非の打ちどころがありません」

「ふん。当然ね。私にとって、この程度の問題は、問題にならないもの」

「が、一か所だけ」

「え?」


 テストの結果に、自慢げに胸を張った魔術師だが、リリは言葉を続け、そして紙を取り出した。そして、何枚かあるその紙を、それぞれの机の上に、一枚ずつ置いていく。

 その紙には、絵が描かれていた。引き伸ばしたのか、荒い画像だ。描かれた絵は、まるで子供の落書きのような物である。が、かろうじてそれが、クワガタを描いていると分かる。線とか、何故そうなったのか分からんくらいぐにょぐにょで、しかし妙に足だけ細かく描いてあるのだが、大きさが不揃いで、お世辞にも上手いとはいえん。オマケに羽根の具合が、微妙にゴキに似ていて、角も何故かゴキの触覚に近しい物となっている。よくよく見たら、クワガタなのかどうか、分からなくなってきたぞ。


「リリ。なんなのだ、この下手糞な絵は。昨今はエコなんだぞ。こんな下手糞な絵をプリントして、紙がもったいないではないか」

「その紙は、背面で既に使用済みの物です。会議で使われた資料を再利用しています。また、この後他の紙と一緒にまとめられて、再生紙として利用します」


 言われて裏を見ると、確かに会議の事が書いてあった。城の警備体制についてや、城のセキュリティについての内容が、書かれている。いつ、こんな事を議論したのか、我の知らん内容だが、それなら良いだろう。


「それは、分かった。では、この下手糞な絵がなんなのか、教えてくれ。酷い絵だぞ、これは。五歳児の方が上手く描ける。実際、我の親戚の子のほうが、上手だ」

「問題にあった、クワガタの絵です」


 そういえば、そんな問題あったな。クワガタを描けという問題だ。我はクワガタ大好きだから、それは正しく上手く描けた自信がある。


「……ロゼの絵だね。このアジのある絵は、間違いない」


 勇者が、配布された絵を眺めながら、そう呟いた。我はそれを聞いて、恐る恐る勇者の向こうの席に座る魔術師へと目をやると、魔術師がそのゴ……じゃなくて、クワガタの絵を握ってくしゃくしゃにして、震えていた。

 どうやら、本当に魔術師が描いた絵のようだ。信じられん。この絵を……5歳児にも劣るこの絵を、頭がよく、美人で勇者に対して偉そうな事を言っているこの女が、描いたというのか……。


「ええ、そうよ。この下手糞な絵は、私が描いたの。でも、100点って言う事は、これもクワガタの絵だと認められてるという事でいいのよねぇ?」

「はい。本来ならあっているのかどうか、微妙な所です。しかし、特徴は描けていますし、バランスはおかしいですが……その絵を描いている時の、魔術師様の楽し気な様子を見たら、不正解にはできませんでした。オマケして、正解です」

「なんっか腑に落ちないけど、でも正解ならおっけー!」


 いいのだな。だが、おっけーというわりに、不機嫌そうである。


「ところで、私の絵を公開したんだから、残りの二人の絵も公開してくれない?じゃないと不公平でしょう?私の絵をバカにした二人は、当然私の絵より上手くかけてるわよね?そうじゃなきゃ、おかしいでしょう?だって、私の絵をバカにしたんだから」


 やはり、魔術師は下手だと言われた事を、怒っている。本人を前に、悪い事を言ったと思うぞ。だってな、まさかこの絵を描いたのが魔術師だとは、誰も思うまい。


「そうおっしゃると思い、勇者様と魔王様の絵も、用意してあります。どうぞ」


 リリはそう言って、また紙を配った。今度は、2枚だ。片方は、我が描いた絵だ。時間がなかったのでものの数分で書き上げたクワガタが、そこにある。


「凄い。魔王は、絵が上手なんだね。リアルに描けてて、今にも動き出しそうだよ」


 勇者は、我が描いたクワガタに目を通し、感心してそう言ってくれた。我は照れて、自分の顔が赤くなるのを感じる。


「と、当然だ。我は魔王だからな。これくらい描けなければ、魔王は務まらん」

「魔王様は、絵を描くのが得意なのです。このクワガタも、とてもよく描けていて、当然正解です」

「勇者の絵も、可愛くていいではないか」


 自分ばかりが褒められるのは照れるので、もう1枚の絵を見て、我はそちらを褒めた。少しアレンジして、丸みがあり、イラスト風になったクワガタは、それはそれで可愛くて、とてもよく描けていると思う。何かの絵本とかに出て来そうなクワガタだ。


「ありがとう。魔王に褒められると、嬉しい。魔王が望むなら、何枚でも描く。見返りに、私の物になってほしい」

「見返りが重すぎるぞ!?」

「へ、へえええぇぇ?二人とも、上手いじゃないのぉ。うん。よく描けていると思うわああぁぁ」


 そんな我と勇者の絵を目にした魔術師は、顔を引きつらせて褒めて来た。褒められるのは嬉しいが、しかし目が褒めていない。魔術師の、その目。それは、嫉妬の眼差しである。

 結果として、魔術師が見せろと要求した我と勇者の絵は、魔術師の怒りの炎に、油を注ぐ事となってしまったようだ。


「魔術師様の衝撃的な絵心については、ここまでにしましょう。これ以上いじると、魔術師様が泣いてしまいます」

「別に泣かないけど!?」


 泣くとか泣かないとかではなく、我は命の危険を感じるぞ。


「魔術師様に続いて、テスト結果をお伝えします。次は、魔王様ですね。魔王様、35点です」

「35点……」


 リリは唐突に、我のテストの点数を発表した。もう少し、もったいぶってほしかったが、それよりも、あまり良くない点数に、我は気を落とした。リリがテストの答案を机に置いてくれて、それを眺めるが、不正解がよく目立つ。自信があった問題も、間違えている物があった。


「──ふ。35点、ねぇ。魔王様ともあろうお方が、35点。いくら絵がちょっと描けても、テストで良い点数が取れない魔王様とか、笑っちゃうわ。これからは、魔王じゃなくて35点と名乗ったらどうかしら。ぷすすす」


 魔術師が、そう言って我を、鼻で笑ってきた。我だって、こんな点数が取りたかった訳ではない。もっといい点数をとって、皆に褒めてもらいたかったのだ。


「う、うぐっ……ひぐっ……」


 顔が熱くなり、目の奥から何かが這い上がって来て、溢れそうになるのを感じる。鼻水も出そうになって、鼻で息を吸って我慢する。


「あ……いや、待って。泣かないで……絵、絵は、凄く上手に描けてたじゃない。さすが、魔王って感じで、感心させられたわ」

「そうだよ、魔王。テストの点数なんて、どうでもいい。気にする必要はないから、泣く必要もない。それでもどうしても泣いてしまいそうなら、私の胸を貸すから、遠慮なく、私の胸の中で泣くといい。今なら、頭をなでなでしてあげるサービスつきだよ」

「ぐすっ」


 勇者と魔術師に慰められ、更に溢れ出そうとする物を感じるが、魔王を倒しに来た勇者の前で、涙を流すなどと言う情けのない姿を、リリには見せたくはない。我は思いとどまり、無になって堪えたぞ。

 そして何気なく目を向けた解答用紙の、この絵の微生物の名前を答えなさいと言う問題で、適当に書いたミジンコという答えが、正解だった事に気が付いた。


「わぁ!見てくれ、勇者!ミジンコ!あってたぞ!」


 嬉しくなり、はしゃいだ我は、隣の勇者に解答用紙を見せて、それを自慢する。


「凄いね、魔王は。こんな事まで知ってるなんて、やっぱり魔王は凄い魔王だよ」

「そうであろう、そうであろう!」


 勇者はそんな答えを見て、褒めて来てくれた。それが嬉しくて、先ほどまで泣きそうだった事も忘れ、笑顔になってしまう。だって、嬉しいのだから仕方あるまい。


「ちなみに勇者様の点数は、4点です」


 リリが言った言葉に、我は固まった。4点は、さすがにおかしい。クワガタの絵の問題は正解だったようなので、問題の数的に、残りは1問ほどしかあっていない事になるのではないだろうか。


「よっ……う、嘘であろう……?」

「本当です」


 リリはそう言って、我に勇者の答案用紙を差し出して来た。受け取り、そこに目を通すと、酷いもので丸印が全くない。現在の人間の王の名を答えようというサービス問題ですらも、間違えている。というか、うんこって書いてある。いくら空白をなるべく埋めるようにと言われているからって、この答えは酷いだろう。

 ちなみにあっていた他の1問は、現在の魔王の名前を答えろという問題だけだ。そこには、我の名前であるアーティア・メルポロスという名前が、上手な字で書いてある。人間の王の名前は分からないのに、魔王の名は答えられるのは、ちょっと問題だと思うぞ。

 結果として、〇は2問。点数は、4点で間違いなさそうだ。


「言ったでしょう。勇者の頭は空っぽの、バカだって。テストなんてしたって、このバカが受かるはずがないのよ」


 魔術師は、勇者に対して言いたい放題だ。そんな事言われたら、我だったら泣いてしまうぞ。だが、4点は酷い。泣いてしまうのではないかと心配しながらも、その点数が信じられず、侮蔑の目を向けてしまった。

 すると、思った通り、顔を赤くして身体を震わせているではないか。


「良い……良いよ、魔王。その目。最高だよ。もっと、私の事を蔑んだ目で見てほしい」


 泣いてしまうのかと思ったら、違った。何故か、喜んでいる。


「満足した?4点じゃさすがに、不合格間違いなしよね?それじゃ諦めて、帰りましょう。どうせ魔王と戦うなんてもう無理そうだから、不本意だけど仕方ないわ」

「いえ。魔術師様は勿論、勇者様も合格です」


 席を立ちあがり、帰ろうとした魔術師に対して、リリは合格だと言い放った。それを聞いて、魔術師は大げさにも、その場でコケてしまった。イスと机を巻き込んで、それはそれは見事なずっこけであった。


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