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バカ勇者(♀)とロリ巨乳魔王  作者: あめふる
魔界で暮らそう!
16/34

勉強と、視察


 魔王のお仕事は、色々あって忙しい。城の罠の強度を確かめたり、陳述書に目を通したり、魔王軍の視察に出かけたりと、その業務は多岐にわたる。本来であれば、同年代の女子と同じように、毎日学校に通い、旧友たちときゃっきゃして過ごす年頃ではあるが、魔王である我に、そんな事はたまにしか許されない。


「……」

「魔王様、この問題、間違っています。ほら、ここ。ここの単純計算で、間違っています」


 現在我は、リリに勉強を教わっている所だ。魔王の業務が暇になると、リリは我に、学校に行けない分の、勉強を仕込んでくる。それでなくとも、1日に最低3時間の勉強が義務付けられているのに、暇になると勉強の時間が増える事になってしまうのだ。酷い時は、1日中勉強で終わる事もある。

 勉強をしている場所は、城の中の一室。我の書斎だ。部屋の奥に置かれた、大きな机と、我の身体によくなじむ、豪華なイス。それと、棚には様々な資料が詰まっていて、それが我を威圧する。その資料が何の資料なのか、我はあまり把握していない。リリがよくいじったり目を通したりしているから、たぶん重要な資料なのだろうな。本来であれば、そんな文字ばかりの資料に囲まれるのは、遠慮願いたい。だが、イスの座り心地は、あの巨大な玉座よりも遥かにいいので、居心地は最高だ。ソファも、ふかふかで寝やすく、昼寝に持って来いなのだ。テレビもあるぞ。あとパソコンも。それらは、今は電源が落とされているがな。

 我儘を言えば、この城のある地帯は、何故か年中雲がかかっていて、日当たりが悪い事のが欠点だ。こんな環境で、窓から太陽の光が入ってぽかぽかだったら、我は一日中でも眠っていられる自信があるぞ。


「魔王様。聞いていますか?」

「うっ」


 我はリリに、丸めた教科書で、頭を軽く叩かれた。ポコッと、心地よい音が響いたが、空っぽなのは我の頭ではなく、丸めた教科書の中身である。

 リリは、昨日の我のテストの結果を受けてか、今日はいつもよりも、かなり張り切って勉強を教えてくる。あまり、良い点数ではなかったからな。本当は、良い点数をとって褒めてもらいたかったが、それは我が至らなかったのが原因なので、素直に反省すべき点である。

 しかし、勉強はなかなか頭に入らないのだ。ゲームであれば何時間でも平気でやっていられるが、勉強は集中力がすぐに切れる。どうしてなのか、誰か説明してくれ。


「……はぁ。では、こうしましょう。このお勉強が終わったら、勇者様と魔術師様の様子を、見に行きましょう」

「よ、良いのか!?」

「はい。気になって、お勉強に集中ができないようですからね。特別に、お勉強が終わったら視察という名目で、見に行ってみましょう。私も、少し気になりますし」

「うむ!そうと決まれば、早く終わらせてしまおう!」

「……はい。頑張ってくださいね」


 やる気の出た我は、急いで目の前にある数学の問題を解きにかかった。集中力が戻った我にとって、これくらいの問題を解くことなど、容易いぞ。


「くっくっく」


 次々と問題を解いていき、やがて最後の問題に差し掛かる。


「魔王様。その前の問題と、その前と、更に前の問題も、間違っています。いくらやる気が出たとしても、頭は魔王様のままなんですから、もっと丁寧に問題を解いてください。適当になってしまった罰として、問題を追加します」

「そんなぁ!」


 我の訴えは退けられ、リリは容赦なく、問題を追加してきた。

 先程は、2人が気になるとか言っておきながら、自ら更に時間のかかる事をしてくるとか、絶対に気になっていないだろう。気になっていたら、これくらい見逃してくれるはずだからな。それを見越して適当にやったのに、墓穴を掘る形となってしまった。

 仕方がないので、それからは真面目に問題を解いていくことにする。これ以上問題を増やされたら、たまった物ではないからな。




 それからややあって、ようやく勉強の終わった我は、リリと共に、勇者と魔術師が今日から働くことになったという場所へとやってきた。そこは、グラムの5番街だ。工場の集中している場所だな。その中の、魔王軍所有の工場内にて、2人は働くことになった。

 目的地までは、ていせつ(転移装置施設)から徒歩で約30分と、立地はあまりよくはない。タクシーを使おうにも、経費削減と運動不足の解消のためと言って、リリは我を歩かせる。

 まぁ、工場地帯の中を歩くのって、なんだかわくわくするから良いのだがな。パイクがくっつきあってできたような、大きく複雑な形の建物と、何かのタンクや、道路の上をまたぐ連絡路に、高い煙突。それらを見ているだけで、何故かわくわくしてしまう魅力を持っている。


「魔王様、お疲れ様です!」

「うむ、ご苦労である!」


 すれ違った作業着姿の男が、我に挨拶をしてきた。ミノタウルス程ではないが、巨体のその男は、まさに現場で働く男という感じがして、カッコ良いぞ。

 彼は、我やリリと同じ種族タイプだな。魔族の種族の中でも、主流となるのは人と変わらぬ形の、我やリリのようなナリを持つ者だ。人との違いは、細かく言えば色々あるが、見た目としては、頭に角があるかどうかくらいの違いしかない。基本的に、これらのタイプは総じて、魔族と呼ばれる。ミノタウルスのように、特に固有名詞がある訳ではないのだ。ミノタウルスは魔族でもあるし、ミノタウスルでもあり、我やリリは、なんの種族かと聞かれれば、魔族でしかない。


「魔王様、今日もお可愛いですねっ!」

「ホント、角についた王冠が、今日も決まっています!」

「う、うむ!あ、ありがとう……」


 続いてすれ違ったのは、スーツ姿のOLのお姉さん2人組みだ。2人は、サキュバス族だな。頭の角に加えて、スカートの下から先端がハート型の尻尾が出ていて、それが自由自在に動いているのが特徴だ。そしてなにより、あふれ出ている色気が凄い。全身むちむちで、それでいてスタイルが凄く良い。地味目なスーツを身に纏い、地味な眼鏡をかけ、地味な三つ編みにしているのに、色気を隠せないのだから、サキュバスという種族も大変だ。


「……こんにちは、魔王様」

「うむ、こんにちは!」


 落ち着いた声で挨拶をしてきたのは、上半身は、人の姿。下半身は、蛇の姿を持つ、女子だ。彼女は、ラミア族だな。鋭い目つきをしているが、彼女たちは総じて落ち着いていて、優しく、そしてキレイだ。彼女もスーツ姿で、恐らくは先程のサキュバスと同じく、工場の事務で働くOLだな。

 このように、魔族には様々な種族がいるのだ。他にも、たくさんいるぞ。だが、それらの紹介は、また今度としようか。

 我とリリは、目的地に辿り着いた。他の工場と比べると、地味だが大きな四角形の建物があり、その敷地内へは金網と、とげとげのついた針金で覆われていて、超えられないようになっている。出入口となっている門には検問所があり、そこに警備の者が数人立ち、入る者の身分を調べているぞ。

 魔王軍の施設なだけあって、警備は他と比べると、厳しいのだ。人間のスパイとかが入ったら、大変だからな!

 検問所での手続きは、リリがしてくれた。我は何もする事無く突っ立っていると、リリに手渡された許可証を首からさげ、中に入る事が許されたぞ。


「ようこそいらっしゃいました、魔王様!本日は、ご視察にいらしたとか……」


 検問所を抜け、敷地の中へと通され、これから勇者と魔術師の下へと行こうという時に、嫌な人物と出会ってしまった。

 その男は、我と同じタイプの、普通の魔族だ。眼鏡をかけ、ひょろ長のやせ型で、顔は長細く、どこか爬虫類を連想させる顔つきをしている。口にはちょこんと髭を生やしており、ちょっと偉そうだ。だが、頭から生えている角は、立派な物だ。天に突き抜けるようについた角は、大きく、太く、理想形に使い。角至上主義の女子が見たら、放ってはおかんだろうな。

 だが、我はこの男の、どこかいやらしく、どこか怪しい目つきが、気に入らんのだ。我の胸を、多くの者がやらしい目つきで見てくることはあるが、その目とはまた違う。この男は、どこか信用ならん目をしている。目は、口ほどにものを言うと聞くからな。それに従い、我はこの男が嫌いだ。

 口には出さぬがな。そんな自分勝手な印象を、魔王が口にする事は許されぬ。


「……うむ。今日から働くことになった、人間の様子を見に来たぞ」

「ええ、ええ、それはご苦労様です!こちらへ、どうぞ。私が直接、ご案内いたしますので」

「うぅむ」


 リリとゆったり視察をしたかったのだが、この男に案内をされるとなると、ゆったりできなくなってしまう。


「それにはおよびませんよ、ダウェンボード様」


 返事をしぶる我の代わりに、そう答えたのはリリだ。

 ちなみに、ダウェンボードとはこの男の名である。更にちなみに、この工場の工場長を務める者だ。腕章には、しっかりと工場長と書いてあって、アピールが凄い。それから、襟を立てたド派手な作業着も、凄いぞ。その自己主張の強さも、我がこの男が嫌いな理由に含まれている。


「リリルラ様は、この工場について、お詳しくはありませんよね?でしたら、私がご案内差し上げるのが、一番効率的かと思われます。魔王様のご側近であるのなら、効率を一番に考え、魔王様のご負担を少しでも和らげて差し上げる事が、重要なのではないでしょうか」

「ご心配されなくとも、こちらの端末にて、工場内の地図を表示しております。それに、地図もしっかりと暗記してきましたので、迷う事はございません」


 リリがそう言ってダウェンボードに見せたのは、手にしたタブレット端末に表示された、地図だ。そこには、工場内の地図が表示されていて、上から見た全体像や、三次元マップへの切り替えもできるようになっている。現在地も表示されており、これさえあれば、迷う事はないだろう。


「たとえ機械に頼ったとしても、たとえ暗記をしていたとしても、現地の人間以上に、工場内を自由に効率よく歩く事は、不可能です。それに、工場内には近づいたら危険な場所もあり、それらの場所は地図に描かれた場所もありますが、描かれていない場所もあるはず。やはり、私が付いた方が、良いかと」

「いえ、結構です。というか、付いてこないでください。これは、抜き打ちの視察でもあるんですから、工場の責任者である貴方に案内され、都合の良い場所ばかり見せられては、意味がありません」

「ぐ……わ、分かりました。ですが──」

「ではな。仕事に戻ってくれ」


 我は、2人の話がまとまった所で、すぐにそう言って、その場を立ち去った。ダウェンボードは何か言おうとしたが、それにはかまわない。案内はいらん。話は、それで終わりだからな。


「……ちっ」


 何か聞こえた気がして振り返るが、そこには我に向かってニコやかな笑顔を見せる、ダウェンボードがいるだけだ。気のせいと判断して、我はすぐに前を見た。

 1日ぶりに会う勇者と魔術師が、どうしているか、楽しみで仕方がないぞ。


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