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バカ勇者(♀)とロリ巨乳魔王  作者: あめふる
勇者と魔王の出会い
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襲撃者


 ドーム型に広がった広場。その最奥に位置する、数段上の高台。その高台の上には、魔王と呼ばれる者だけが座る事を許された、巨大なイスが鎮座している。数千年もの間、歴代の魔王が鎮座してきたそのイスは、血のように赤く塗られた物で、とても巨大だ。背もたれは、優に数十メートルを誇る。横幅も、デーモンやゴーレムのような、身体の大きな物が座って尚、余るような巨大な物だ。

 我のような普通サイズの者が座ると、手すりに手は届かないし、足も床に届かない。背もたれに背を預けると、足が下げられない。背もたれに背を預けて座ると、周りが何も見えなくなる。

 なので、我はイスの座面の先端に腰かけ、足をぶらさげた上で、手すりの部分にあたる所に身体を預けて座るのが、いつものスタイルとなっている。

 ハッキリ言って、とても不便なイスだ。何度ぶっ壊してやろうと思った事か、その回数は優に二桁を超える。だが、このイスはとても丈夫な作りになっていて、簡単に壊す事はできない。そういう素材が使われているからな。無論、我の手にかかれば、本気を出せば壊すことはできるだろう。しかし、たかだかイスを壊すために本気を出すのって、どうなの?という訳で、仕方なく使っている。


「──魔王様」


 我の眼下に、どこからともなく浮かび上がった光の渦から姿を現した人物が、我に向かって膝をつき、頭を下げて来た。イスよりも下の、高台の下に現れたその人物は、我のよく知る人物だ。

 長い後ろ髪を、赤いリボンで結んでポーニーテールにしていて、前髪は右目だけ隠れるように、長く伸ばしている。左目は、普通に出ている。とても艶やかで、きめ細かい。闇のように黒い髪色をしていて、それが少し羨ましく思う事もあるのだが、きっと我には似合わんな。そんな髪の毛をかきわけて、遠慮がちな巻き角が、左右に2本ついていて、彼女が魔族である事を主張している。


「遠慮はいらん。面をあげろ」


 顔を上げ、我を見上げて来た彼女の顔は、よく整っていると思う。目つきは鋭く、若干悪役顔にも見えるが、その赤色に輝く瞳も、高い鼻も、口から覗く牙も、立派な魔族である証拠であると同時に、女としての魅力を兼ね備えている。本人は気にしているようだが、丸顔も立派なチャームポイントである。

 更には、モデルのようにほっそりとした身体の持ち主で、背も高く、魔王軍幹部の制服である、黒地に赤色の装飾が施されたローブが、よく似合う。

 ローブさえ着こんでいれば、その下は何を着ても良いのが、我らのルールだ。その下に着ている彼女の服は、彼女の私服なのだが、彼女の場合はスーツを着込んでいる。下半身にはパンツを履いていて、彼女の長く細くて、キレイな脚を強調するように、ラインを見せつけている。白のYシャツの首元は、紺色のお洒落なリボンで結ばれていて、堅苦しく見えるのを和らげようとした、彼女なりの配慮だ。


「どうしたのだ、リリ」


 彼女の名前は、リリルラ・ナウル。魔王である我の側近にして、家族にも親しい人物だ。親しみをこめて、リリと呼んでいる。


「もうじき、勇者が訪れます。魔王様の指示通り、各所の防衛隊は退避。予定通り、勇者は真っすぐこちらへと向かってきています」

「そうか。報告、ご苦労。では、下がっていて良いぞ」

「……」


 我の指示に、リリは正面からそれて、黒のローブを翻して脇に立つと、そこで止まった。

 確かに我は、下がれと言ったので、リリは下がったと言えるのかもしれない。だが、我が意図した下がれとは、違った。


「……ここにいたら、戦いに巻き込まれてしまう。魔王の間から、出て待っていろ」

「失礼ながら、そのご命令には服従致しかねます。私は、魔王様の配下であり、最側近である身……。魔王様がこれから戦うと言うのに、そのお傍から離れろという命令は、側近を罷免する行為に準じます。どうしても、そのご命令を実行させたくば、私を側近の座から降ろしていただけないでしょうか」


 リリは、頭が良い。そんな意味がくみ取れない人物でない事は、分かっていた。


「ふ……相変わらず、頑固なヤツだ。良い。命令は、撤回だ。傍にいてくれ、リリ。だが、手は出すな。お前は、見守っていてくれれば、それでいい」

「は。この、リリルラ。魔王様の勝利する姿を、この目に焼き付けさせていただきます」


 リリは、我の勝利を信じてくれている。だが、勇者がこの城へ侵入し、僅か2時間。城にはりめぐらされた罠を、勇者パーティは難なくくぐり抜け、この魔王の間まで迫っている。恐らくは、相当できるはずだ。過去に、この城を襲撃してきた勇者とは、格が違う。

 それに、何よりも、離れていても感じる、威圧感……。それを感じ、我は今朝、飛び起きた。最初、ママが起こしに来たのかと思ったが、違った。勇者の、あまりに強い威圧感を感じ、全身を揺さぶられるような衝撃を受け、起きたのだ。

 正直に言えば、不安もある。相手の実力が未知数すぎて、果たして我が勝てる相手なのか……否。我は、負ける訳にはいかない。我は、魔王。最強にして、災厄の存在である。人間如きに遅れをとり、負けるなどという事は、あってはならない。

 それに、我の勝利を信じ、傍にいてくれる者もいるのだ。情けない姿など、見せる訳にはいかない。


「……来たか」


 我は、気配を感じ、そう呟いた。

 直後に、我から真っすぐみた先にある、正面の観音開きの扉が、ゆっくりと開き、2人の人間が姿を現した。

 1人は、背の大きな人間だ。スラリとした体形で、身体の凹凸は、少ない。だが、顔つきはキリッとしながらも、可愛らしい。燃えるように赤い髪の毛も、ストレートのロングヘアーで、後ろは腰元まで伸ばしているようだ。白の、胴部分が長く、腹のあたりでスリットになって別れている上着は、ひざ元にまでその先端が伸びていて、歩くたびに先端についた輪っかが揺れている。白によく映える、金色の、大きめのボタンによって左右が留められていて、キッチリと、着崩すことなく着ているその服は、乱れを一切伺わせない。その下に履くズボンは、上着と同じデザインの物で、ダボっとしていて締め付けがなく、中に何かをいれられそうな膨らみがある。

 何かの、制服だろうか。どこかで、見た事のあるデザインだ。どこで見たのかは思い出せないが、しかしカッコイイ。着ているのが、モデル体型の彼女だからだろうか。とても良く似合っていて、凛々しく見える。


「──よく来たな。勇者!」


 我は、そんな彼女に向かって、声をかけた。

 間違いなく、彼女が勇者だ。彼女が放つ威圧感……プレッシャーが、我が今朝から感じ続け、目覚ましもなく飛び起きた、力の源だ。


「貴女が、魔王……メルポロス」

「いかにも。我が、魔王だ。名は、アーティア・メルポロスと言う」

「嘘をつかないで!本物の魔王は、どこにいるの!」


 我は、勇者に魔王と言われ、そうであると肯定し、自己紹介をした。しかし、勇者と一緒に来た、もう1人の人間の女が信じてくれなくて、そんな事を言ってきた。

 彼女は、黒のフード付きのローブを被った、金髪の少女だ。ローブには袖を通しておらず、フードを頭に被り、首元の紐をつないで肩に羽織っただけの状態だ。ローブの下は、ミニスカートに、スパッツを履きこみ、ハイブーツを履いている。上半身は、白の袖なしブラウスを着ていて、腕全体を露出させている。ローブに手を通していないので、金色の腕輪を両手首に装着しているのがよく見えるが、それが魔法具だと、一目で分かった。勇者と比べると、まだあどけなく、背もさほど高くはない。片目には眼鏡をつけていて、知的そうな女子だ。その見た目や、手に持った、先端に青い魔法石がついた杖などから、彼女が魔術師である事は、明白だ。


「嘘ではない。我が、魔王である」

「分かり切った嘘をつくのは、よしなさい!貴女が魔王でない事は、分かっているわ。私たちを欺くつもりでこんな事をしているんでしょうけど、残念だったわね」


 魔術師の女が、勝ち誇ったようにそう言ってくるが、我は嘘を言っていない。本当に、我が魔王なのだ。


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