迷宮へ
この世界に来て数ヶ月後俺たちはそれぞれやっと武器が買えるまでお金を貯め、ある程度戦える様な装備を揃えた。
俺は装備を揃えながらクエストと呼ばれる住民の願いを聞いて回っていた。
その結果どうやらこの世界には各職事に10つスキルがあり、その中の4つまでしか使えない。
そしてスキルを解放するのにはレベルなども重要だがクエストをクリアすれば開放されるスキルもあるらしい。
「それで?夏樹はその職業になって後悔してたりする?」
美鈴はふざけた様に言うが俺には死活問題であった。
「後悔はしてない。ちょうど解決策が見えてきた所だ。」
俺はにっこりと笑うと続けて言う。
「だからちょっと迷宮行こうぜ?」
俺はパーティーメンバーに言うと意外と皆乗り気だった。
「そうよ、その言葉を待ってたの!!もうお手伝いでお金を稼ぐ生活は嫌!!」
どうやら芽衣もウンザリしていた様だ。
「じゃあ今日は迷宮に行こうか。」
俺達は立ち上がり初めての迷宮に挑むために歩き出した。
「なんだこいつらの攻撃……ウザすぎるんだが。」
樂はパラディンの職につき、パーティーメンバーを守る壁として一心に攻撃を受けている。
が、どうも効いてない。
「流石パラディン……1ダメージも受けてないな。」
ここまでは俺の予想通り。
「じゃあ魔法打つわよ!《スターダスト》!」
芽衣が魔法を打つと光が凝縮し、爆発する。
しかし、タイミングが悪く爆発に少しだけ樂が巻き込まれる。
「もう少しだけ早く言ってから魔法を放つといいかもな。」
俺はパーティーを見てアドバイスする。
「了解よ。」
芽衣はソーサラーの職につき、攻撃兼サポートとして頑張るつもりの様だ。
「こっちから魔物の気配がするからこっち行きましょう?」
美鈴はアサシンの職につき、斥候の役割を担っていた。
「ステータスは芽衣以外俺の言う通りに振っているよな?」
「ええ、そうしてるよ?多分夏樹の言う事が正しい……と私は思ったから。」
「俺も言う通りに振っている。そもそもステータスとか訳が分からないからな。」
「それなら良かった。芽衣はそのままでいい。俺もそのうち戦闘に参加出来ると思ってくれていい。」
「ほんと?」
「ほんとだ。」
俺は自信満々に言うと美鈴が言っていた方へ向かって行った。
「ん?あれは……ゴブリンかな?」
「だな。」
短刀を持った小さな鬼。
これまで俺たちはスライムの様な人間とは程遠い魔物を意識して戦っていたが、人型を倒せるという事はこの先大きなアドバンテージとなる。
「やれるか?芽衣と樂?」
「当たり前だ。」
「ええ、迷わずにいけるよ。」
「了解だ。じゃあ樂頼む。」
樂は頷くとゴブリンの前に立ちはだかる。
「こっち来い。《プロボーグ》!」
ゴブリンが樂へ向かっていく。
その後ろで芽衣が詠唱をする。
「《ジャッジメント》!」
芽衣から放たれた光の光線がゴブリンを貫く。
ゴブリンが絶命した所で死体が消え、魔石だけがそこへ残される。
「これで今日は終わりにしよう。帰ろうか。」
「「「了解。」」」
俺たちは今日の魔石をギルドへ換金し各々の宿へ帰る。
「さてさて、これでスキルをくれるんだろ?爺さん。」
「ああ、これで私の願いは完了した。」
夏樹は目の前にある初めてのスキルを眺めるとニヤリとする。
「これで明日からもっと戦える。」
目の前の半透明な板には職業ミンストレルとスキル《名月の歌》とだけ書かれていた。