〈トーナメント〉本戦7回戦
「そろそろ終盤に差し掛かってきました!第7回戦!赤コーナー〈ランカー〉2位ユーリ!」
ユーリはこの時が来たのだと思いを馳せながら入場する。
不思議と緊張も無く、自然体でいい試合が出来そうな予感がしていた。
ユーリは試合会場の指定の位置まで行くと深呼吸する。
これから相手するモノは人間などど思ってはいけない。
正真正銘『怪物』だ。
「青コーナー〈ランカー〉1位ミズキ!」
瑞希は何も言わずに遠い所を見ていた。
ゆっくりと会場へと入場するとユーリを見つめる。
今回はフードを被らずに顔がハッキリと見える。
「やぁ、2位の人。僕を倒せたら暫定君が1位だ。1位からの景色が見たいなら倒すといいよ。」
「当たり前だ。そのためにこれまで……貴方を倒す。」
「では開始します!」
開始の合図と共にユーリが全力で瑞希へと接近し剣を上段から振りかぶる。
瑞希の手にはこれまで使用してこなかった杖が握られていた。
その杖を日に抜くと隠し杖になっていたのか中から細い剣が出現する。
「はっ!」
何のスキルも使わずに上段から瑞希へと放たれた剣撃はマトモに受けたら剣ごと叩き切られる。
「まだ。」
瑞希は音もなくユーリの剣を迎え撃つ。
ユーリの剣は空気でも切り裂いたかのように力が横に流れた。
「っ!」
流れるように瑞希が横から剣を振る。
瑞希の剣は一見威力が無いように見えるがそれは間違いだ。
これがユーリと瑞希の差でもある。
しかし、ユーリはその超人的な反応速度で自分と瑞希の剣の間に剣を挟み込みカバーした。
それでも衝撃は抑えきれず自ら飛ぶことで軽減する。
「……やっぱり強いね。」
それは瑞希からユーリへ送る最高の賛辞だった。
「そりゃどうも。」
再びユーリは瑞希へと接近するが瑞希が陽炎の様に霞むと横から剣戟が飛んでくる。
それを剣で受け流し空いている腹へと剣を走らせるがそれも瑞希が半歩下がる事で服を少し切り裂く程で終わる。
ユーリは大きく下がり深呼吸をする。
「〈ソードコロッセオ〉〈オーラ〉」
ユーリがスキルを使用するとその攻撃力と防御力が大幅に強化される。
このスキルは全職業の中でも最高峰のバフスキルだ。
攻撃力と防御力が大幅に上がる。
その攻撃力は岩をも木端微塵にし、その防御力は剣で切られたぐらいでは傷1つ負わない。
「じゃあ僕も。」
瑞希は少し深呼吸するとバフスキルをかける。
「〈怪傑の歌〉〈夜霧の歌〉〈一徹の歌〉。」
それはユーリにしか聞こえない様な声だったが確かに聞き取れた。
「アンタそんな職業だったのか。」
ユーリの額から冷や汗が流れ出る。
「ああ、知らなかったんだね。前は使う必要もなかったし。」
瑞希は涼しい顔で言うがユーリにはそれどころの騒ぎでは無い。
夏樹も瑞希と同じ〈ミンストレル〉だが夏樹はあくまでも〈サポート〉、瑞希は自分にバフをかける〈アタッカー〉だ。
そのバフの上昇率はどれも最高峰のバフ。
しかも……スキル無しの瑞希の戦闘センスは桁外れだ。
つまり、もともと岩を砕く力が木端微塵にする力へ。
もともと回避能力が桁外れの能力が更に強化された。
「じゃ、決めよう。」
瑞希はそれだけ言うとユーリの反応できるギリギリの速度で距離を縮める。
それでも速度を制御出来るていると言うことは……まだ瑞希は速くなる。
「!!!」
瑞希は剣を直線に構え、その細い剣を利用して正確に心臓へと突きを放つ。
だがそこはユーリであった。
突きはその特性上剣を横から叩けば起動が簡単に逸れる。
剣を横から叩き、軌道を逸らし流れるように大きく今度は半歩下がっても避けきれない距離で剣を振る。
「ーーー。」
瑞希は辛うじて反応し、しゃがむ事で首への攻撃を逸らす。
しかし額を浅く切ってしまった為に血で右目が見えずらくなってしまった。
「ッ!!」
そして右からの追撃に反応が遅れる。
辛うじて剣を盾にし自分から飛ぶ事で軽減するが肋骨の何本かは折れた音がした。
「終わりだ!」
ユーリは吹っ飛ばされる瑞希へと追撃を加えようと距離を詰めようとする。
「〈久遠の歌〉」
瑞希がスキルを発動すると傷が瞬時に癒えていく。
「なっ!」
その行動が予想外だったユーリだが、もう瑞希の前へと着いてしまったユーリにできる選択肢は1つしか無かった。
「ーーー。」
ユーリが右から全力で剣を振る。
「ーーあ。」
その剣を瑞希は上へと受け流し空いた右腹から上へと貫く。
その軌道上には生命維持に必要な臓器を全て刺し貫く。
「貴方は強かった。僕が焦るぐらいには。だけど、それでも僕のが上だったね。」
崩れ落ちるユーリの顔はとても満足そうで、少しの悔しさが滲み出ていた。
「やっぱり瑞希さん強いですね。」
ルウトは珍しく観客席からその試合を見て呟く。
「ボクとどっちが強いのかな?」
首を傾げて独り言を紡ぐ。
「まぁいいや。」
そう言うと観客席から立ち、廊下へと出る。
「それで?こんなオモチャな世界で貴方はどうなのですか?」
ルウトは後ろから唐突に聞こえた声に振り向く。
「………。」
その声をかけてきた男はボロボロの羽織に腰に剣?を差していた。
「そう言う貴方こそ誰ですか……?」
そのあまりにも弱そうで……しかし、その存在がとてつもなく怖く感じられた。
「あぁ、申し遅れました。俺はーーーと申します。」
男は一例するとルウトへと近づく。
「それでですが相談があるのです。」
「なんです?」
「ーーー。ーーー。」
ルウトは呆然とすると頷き男について行った。




