〈トーナメント〉本戦5回戦
「これより本戦6回戦を始めます!赤コーナー3位ダニエル!」
ダニエルは深呼吸すると会場へと入場する。
今回の相手は未知数であり、底知れない恐怖を感じ取っていた。
「青コーナー!ルウト!」
ルウトは首を回しながら会場へと入場するとダニエルを見つめる。
「貴方が3位ですか。『大分1位と差があるんですね?』」
ダニエルにとって順位というのは誇りであり、ユーリという巨大な壁に挑むための券だと思っていた。
それよりも強い1位との差はもちろんあると頭では解っていたが……どうにも人に言われるのは気に入らない。
「そんな事言って俺に負けたらどうするんだ?かっこ悪いぞ?」
ダニエルは少しイラつきながら買い言葉に売り言葉で応じる。
ルウトはキョトンとしてダニエルを見つめる。
「あぁ……そういう人種ですか。なるほどなるほど。僕に今現在は順位が無いから。ですね。」
ヤレヤレと頭を振りながらルウトは肩を落とす。
「………。」
ダニエルはかなり頭にきていた。
実際にルウトの言う通りヤツには順位も無く、実力もまだ解らない。
なのに神経を逆撫でするこの言動がどうしようもなくダニエルの誇りを傷つけていた。
「では開始!」
唐突に始まった試合でダニエルは本気でコイツを潰すと決めた。
「〈レインアロー〉〈マルチアロー〉!」
〈スナイパー〉の常套手段。
上からも前からも降り注ぐ矢の雨に行動が制限され、動きが読みやすくなる。
単純が故に強力な戦法である。
「そんなんじゃ意味無いですよ?」
ルウトは上を見るわけでもなく、降り注ぐ矢の雨を躱していた。
「なんだアイツは……?なんで避けれる。」
「えー、そんな事を僕に問うこと自体が間違いですよ?そうですね。僕と貴方の差は地力の差だと思いますが?」
なんてことの無い残酷な返答。
ダニエルもそれ自身は理解している。
なぜユーリに追いつけないのか。
それは根っからの『戦闘センス』に他ならない。
才能と言ってもいい。
それがこのルウトはずば抜けているだけ、それだけの話だった。
「接近戦はどうです?」
ルウトは避けているのが飽きたようで一瞬で距離を詰めてくる。
「くそっ!」
ダニエルは弓でどうにか近寄られないようにするがその努力も虚しくルウトの拳が当たる間合いまで接近される。
「ッ!!」
ルウトの拳に合わせて弓を体との間に挟み込み直接的な攻撃は回避したが弓を通じて凄まじい衝撃が襲いかかる。
「………。」
ルウトは黙って拳を見つめると少し笑う。
「貴方結構強いんですね?とても『いいと思います』。」
追撃とばかりに再度距離を詰め、右拳を振りかざすルウトとの間に再び弓を挟む。
「2度も同じことしないですよ。」
「あーー。」
全く警戒していなかった左手が腹の部分へとピッタリと付けられていた。
「はっ!」
ルウトが掛け声をすると観客から見た感じは全くの『無衝撃』。
ダニエルの体は何も動くことが無かった。
しかし数秒後にダニエルが崩れ落ちる。
「僕にこの技を使わせるってまぁまぁ誇っていいと思いますよ?」
それだけ言うとルウトは会場から去っていった。




