〈トーナメント〉本戦4回戦
「これより本戦4回戦を始めます!赤コーナー美鈴!」
芽衣が敗北した今、〈ランカー〉として上位に行けるのは私しかいない。
そう思うと緊張する……ましてやこれから行われるのは死なないにしても一種の殺し合い。
それで緊張しない人間は殺し慣れている人間だ。
美鈴は会場へ入ると観客が大いに盛り上がる。
「相手……は。」
「青コーナー4位エコー!」
エコーは予選で戦った相手だ。
生粋の魔法使いであり……美鈴自身が勝てないと悟った相手でもある。
しかし……美鈴の一撃が入ればそこで終わり。
逆にエコーの魔法が1発でも当たったら死んでしまうだろう。
「貴方となんてね。偶然にしても嫌ね。」
エコー自身も一撃入れられたら終わりということを解ってここに立っている。
エコーはどうやって近づかれる前に倒すか。
美鈴はどうやって近づいて倒すかを考えなければならない。
「ええ、エコーさんの事を私は多く知りません……ですが、4位という立場から引きづり下ろします。」
挑発的に美鈴が言うと一瞬エコーは驚いた顔をするが直ぐに微笑んだ。
「そう言ってくれるのは有難いけど……私もここで倒される訳には行かないのよ。ほら、4位って肩書きはかなり得だから。」
ふふっとにこやかに笑う。
「では!開始!」
「私は貴方を過小評価なんてしないわよ?むしろ……いいえ、なんでも無いわ。」
美鈴はエコーが喋っている内に仕掛けようかと思ったが……その仕掛ける瞬間すらもエコーは与えなかった。
「そう……そうなのね。では私から〈ダークネスエリア〉」
エコーがスキルを発動させると周囲の光が少しだけ弱くなる。
「〈アクセラレーション〉〈コンビネーション〉〈暗殺者の領域〉。」
美鈴もスキルを発動させ、隙を伺う。
実はこの試合、美鈴の方が圧倒的有利な立場にいる。
相手は〈ダークネスエリア〉を発動させ、闇魔法威力を底上げすると同時に光を少し遮断し、自身を見えにくくする用途があった。
だが、〈暗殺者の領域〉は存在そのものを認識するスキル。このスキルは壁や地面、ましてや光など関係無く……全てが見える。
エコーの戦闘方法が1つ失われる為に美鈴の方が有利ではある。
「〈ダークバレッド〉」
エコーは間髪入れずに闇の弾丸を射出するが美鈴は避けながらエコーへの距離を縮めていく。
美鈴自身もエコーがどの様な戦法を取ってくるのか分からない。
だからこそ慎重になるべきだと感じていた。
「〈ダークネス〉」
〈ダークバレッド〉よりは少し大きな丸い玉が飛んでくるが余裕を持って回避する。
美鈴の〈アクセラレーション〉によってただでさえ高い回避能力を底上げしているのでまだ余裕があるのだ。
「〈ダークネスバレッド〉〈ダークネスバレッド〉」
今度は2発連続で射出してくるがこれを避け、距離1歩1歩と縮めていく。
「ここだ!」
美鈴が足を踏み出し、全力でエコーへと近づく。
「っ!〈ダークネス〉。」
エコーから放たれた魔法を美鈴は空中で体を捻らせ回避する。
ただ問題は美鈴のスキル〈バックスタブ〉は基本背後からの攻撃しかダメージが通らない。
だからこその樂がいるのだが……。
「っ!」
それをエコーは分かっているのか美鈴が回り込もうとした方向へと体を回転させる。
「しっ!」
エコーが何故魔法使いなのに4位という立場にいるか……それは魔法使いらしからぬ戦い方をする他無いからだ。
「え?」
エコーはあろう事か持っていた杖を振りかぶり美鈴へと攻撃する。
美鈴はその予想外の攻撃へと体が固まり、一瞬の隙が出来てしまった。
「もらった!」
「いいえ?事前情報通り。」
エコーが杖を振った先には美鈴の姿はもう無く、後ろから声が聞こえる。
一向に〈バックスタブ〉を打たない美鈴にエコーは後ろへと話しかける。
「なぜ?確かな隙だったはずよ?なんで動けるのかしら?」
「………女の子は『演技が得意』なの。〈バックスタブ〉」
エコーはそれだけ聞くと満足そうに笑い。
そして絶命した。
後日エコー曰く。
「ええ、美鈴ちゃんはとっても苦労してきた子ね。私が分からない『演技』なんてこれまで『どんな環境で育ってきた』のかしらね?」
と満足そうに言っている姿が街中にあった。




