〈トーナメント〉本戦3回戦
「これより本戦3回戦を開始します!赤コーナー5位ペドロ!」
ペドロはゆっくりと会場へと入る。
緊張しているのか少々顔が強ばっていた。
「青コーナー2位ユーリ!」
ユーリは堂々として佇まいでゆっくりと入ってくる。
ペドロとは違い、緊張の欠けらも無い……あるのは自信だけの様に感じられた。
「お前と戦うのは1年振りか?成長している事を願ってるよ……いや、私を楽しませろ。」
ユーリは獰猛な笑みでそれだけ言うとゆっくりと剣を構えた。
「そりゃまぁ……期待してくれて何よりだ。」
顔を少し引き攣りながら弓を構えた。
「では開始!」
ユーリは生粋の〈グラディエーター〉だ。
使っている剣は魔物にも……人間にも有利な様に長剣を使い、それを片手でも振り回せる腕力と体幹を備えている。
紛れもない強者と言えるだろう。
「私から行くのも忍びないからな。先手は『しょうが無いから』譲ってやる。」
ユーリは挑発的にそれだけ言うと真っ直ぐにペドロを見た。
「ほう?じゃあ遠慮なく。〈エンチャント〉〈マルチアロー〉。」
〈エンチャント〉は様々な効果を付与するスキルだがユーリの様な接近戦タイプには麻痺が普通は1番効く。ただ……。
「………。」
ユーリは放たれた2本の矢を剣で切り落とすと最初の構えに戻る。
「………まぁそう上手くいかないな。アンタに手加減とかしてる予定なんて無い。盛り上がりも何も無くなるが……最初から全力だ。」
「ああ、それでこそペドロだ。私はお前の全てを超えて……踏み潰してやる。」
ペドロの額に冷や汗が浮かぶ。
前回の〈トーナメント〉ではその言葉の通りに……全てを超えて行った。
「〈エンチャント〉〈マルチアロー〉〈マルチアロー〉」
「ふん。」
〈マルチアロー〉を重ねがけすることにより合計4本の矢がユーリ目掛けて飛んでくるが全て剣で撃ち落とす。
そもそも〈マルチアロー〉は『2本の矢』が『同時』に放たれるスキルだ。
つまり……2本の矢を撃ち落とすにはかなりの剣速が必要になるはずだった。
「!!!」
ペドロは最初から〈マルチアロー〉などのスキルでユーリが負傷するなどと欠片も思ってもいない。
だからこそ……〈スナイパー〉として、予想に反した行動をする事が唯一の勝ち目!
ペドロは弓で牽制しながら距離をユーリをよく見る。
「そんだけか。失望だな。前年と変わっていない。」
ユーリは矢を撃ち落とすのが飽きたようでおもむろに距離を詰める。
「じゃ、逝け。」
ユーリは切っ先で正確にペドロの喉へと切りかかる。
その剣速は矢を撃ち落とした技量を確かなものにする……凄まじい速度であった。
ただ黙ってペドロはユーリの動きを観察する。
ここまでの1年、ひたすらにユーリの研究をしていた。
だからこそ……『切っ先で斬ることが癖』である事も知っていた。
ペドロは半歩後ろに下がりながら流れるように弓に矢を番える。
「お?」
ユーリにとってそれは予想外の出来事だった。
まさか〈スナイパー〉如きが接近戦で避けられるとは考えてすらいなかったのだ。
「もらった!!」
ペドロの標準は正確にユーリの眉間へと向けられるていた。
この一撃が当たれば確実にユーリに勝てる!
矢を番えていた右手を離す。
集中しているからか全てがゆっくりと見えた。
だからこそ……ユーリの口が聞こえないほどの声を発したのが見えていた。
その口を読むに……。
「『前言撤回』」
瞬間ペドロの視界からユーリが消失し、次に見えた光景は見えるはずのない自身の背中が見えた。
「1つ助言するとしたら『切っ先で斬ること』が癖なのでは無く、『切っ先で切った方が美しい』から切ってるだけだ。つまり、私のその余裕を奪うほどの成長、来年が楽しみだな。」
ユーリはそれだけ言うと会場を出ていった。




