ランカー3位
あぁ、1位から見る景色はこんなもんか……。
正体性別職業不明のニンゲンはそう思った。
「お前……どう…いう………。」
ボクの目の前に倒れている人間はそれだけ言うと事切れたようだ。
ただボクは目の前の脅威を排除しただけだ。
だが、『たった1人犯罪者を殺しただけ』で畏怖の象徴となるのは可笑しいだろう。
黒いマントを靡かせながら二度とその人間だったモノを見る事無く歩む。
「この世界は弱くてダメだ。もうちょっと刺激が欲しい所。」
口元だけしか見えないがその口元はどこか悲しそうで、哀しそうだった。
「なぁ夏樹?この人はなんて言ってるんだ…?分かりやすく、私に教えてくれないか?」
「だから……俺達に王国騎士団へ体験入隊して欲しいんだとよ?」
「ああ、聞き間違いじゃなかったんだね……。で?なんでその副騎士団長と知り合いな訳?」
美鈴は軽く夏樹を睨む。
「なんでって……酒屋で酒を奢った時?」
「ははは!あん時はありがとうな!おかげでのんびり飲めたよ!」
そう、リゼットを介抱した時に会った気のいいおじさん、それがこの国の副騎士団長。
しかもランカー3位と来たもんだ。
調べた所1位以外は顔と名前が割れている。
このおじさんはダニエルと言うらしい。
「そりゃ良かったよ。で?なんで俺なんかを騎士団へ?」
「あぁ、それなんだが……困ってるんだ。」
ダニエルは頭を掻きながら表情を歪める。
「この国の騎士団は基本的に貴族を対象として編成してるんだ。」
「あー……貴族が威張ってるのか?」
「そうそう、全くもってその通り……。俺は平民出身だからと言ってあんまり言う事聞かないし……。騎士団長は騎士団をまとめる気ないし……。」
それでいいのか騎士団……と思わなくもないがそれもしょうがないのだろう。
貴族と言う階級があるからこそ……しかも国の中枢を担っているとなると面倒だろうな。
「で?俺たちに何して欲しいんだ?」
「お?受けてくれるのか?」
ダニエルはうるうるとした瞳でこちらを見つめるが内容を聞かないで承諾するほど信用していない。
「内容は?」
「団員をぶっ倒して欲しいんだ……そりゃもう惨めに、どうしようもなく。プライドを粉々に。」
「それやったら俺達……この街に居られなくなるんじゃないか?」
「それは大丈夫だ。あくまでも『訓練』だからその中で起こる面倒事は『不幸だったな』の一言で終わるからな。」
「はぁ……ダニエルがボコせばいいだろう?」
「俺がやってもどうせ副騎士団長だからー、とか言い出すだろ?だったらまだひよっこのお前さんらにボコしてもらった方がダメージが……な?」
ダニエルが悪い笑みを浮かべる。
夏樹は肩をすくめる。
「で?報酬金は?」
「これぐらいだ。」
ダニエルは指を5本全部上げる。
「銀貨5枚?」
「いや?金貨5枚!」
「これ受けよ!?ねぇ!夏樹!!」
今まで静かだった美鈴が食いつき夏樹の肩をぶんぶんと揺らす。
「うわっ!分かったから!離せ!」
「あ……ごめん。」
美鈴は恥ずかしそうに顔を伏せると大人しくなった。
「じゃあ受ける方向でいてくれ。パーティーの後2人に聞いてからまた連絡するよ。」
「わかった。期待して待ってるよ。」
ダニエルはひとしきりに笑うと歩いていってしまった。
「と言っても芽衣も賛成するだろうけどな……。」
「そうだね……。」
ここ最近浮き彫りになってきたのだが芽衣はどうも守銭奴の毛かある。
まぁそのお陰でお金の事を任せられるからありがたいが……。
「帰って会議だ。」
「りょーかい。」




