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勇者の友人Aの物語  作者: はこお
3/7

お嬢様

息が止まるかと思った.



隣の席に,絵本の中のお嬢様を絵に描いたような女の子がやってきたからだ.



名前は知っている.

アリス・レミィ・エメリス.

金髪というよりはアッシュに近い,絹のようにさらっとした長髪を赤いリボンのカチューシャで留めており,傷一つなさそうな白く綺麗な肌とのコントラストが一層人目を引く.

大きい瞳は一見,人懐っこそうにも見えるが,アリス自体が毅然としているため,気安く近づこうという気にはならない.



なんでも,王国3大貴族のエメリス公爵家のご令嬢だとか.

うちのような子爵家が,間違っても手を出していいような人物ではない.

一瞬,僕の物語のヒロインはこの子か?と思ったが,繰り返す.

間違っても手を出していいような身分のお人ではない.



一応,この学園は園内では身分制度の撤廃を謳っている.

というのも,学園内では実力こそが全て,というのがここのモットーだからだ.

だから僕のような子爵家や平民の者でも,普段は話せないような身分の人と学園内では気兼ねなく喋っていいらしい.

だが,しかし,彼女には近寄れる雰囲気はない.



皆,思ったことはないだろうか?



なぜ,いい身分の家の子というのは揃いも揃って美男美女なのか.

明らかに人生恵まれすぎてはいないだろうか,と.



アリスは,まさにそんな人々の羨望を具現化したような容姿だ.



これでいて,魔法の才能も特級ときたもんだ.

噂ではとんでもないユニークスキル持ちなんだとか.

天は二物を与えるんだな….

そんなことを思った.



アリスがこちらに来る時に一瞬目が合ったが,興味もないという感じで視線を外されてしまった.

アリスはその後,僕の前にいるアレクに刺々しい視線を向けていた.

まぁ,アレクは全然気づいた様子も気にする様子もなかったが.



ということで,クラスメイトの席も大体決まったようだ.



ん!?

待てよ?



さっきも言ったように僕の席は最後方の窓際だ.

そして前の席は勇者.

隣の席は公爵家令嬢のアリス.



しかも,何やらアリスは刺々しい視線を勇者に送っている.

なぜかわからないが,この席周辺の空気はひえっひえだ.



はぁ…勘弁してほしいもんだ….

僕はこれからの生活を慮って,重い溜息をつくのだった.



◇◇◇◇◇



席移動の後,皆で自己紹介をするという話になった.



「それじゃぁ窓際の最前列からー.名前と趣味を言ってってくださいねー.」



それぞれ名前と趣味を言ってはちらほらと拍手する.

僕も,これから仲良くなる友達のことを覚えようと,真剣に耳を傾ける.



次は勇者の番である.



「アレク・リデルだ.趣味は凡人いじり.精々,俺の足を引っ張らないように皆気を付けてくれ.」



相も変わらずな挨拶である.

部屋の温度が一気に下がった.

奇妙なことに,僕の前からは「ほっ…」という音が,僕の隣からは「みしっ…」という音が聞こえた気がするが,気のせいだと思おう.



こんなのの次に僕とか,勘弁してほしいなぁ…と思いながらも僕は立ち上がる.



「レオン・ハーネルです!趣味はラーメンの食べ歩きです!よろしくお願いします!」



ちょっと緊張してしまったが,概ね良かったんじゃないだろうか?

ラーメンの食べ歩きという部分でちょっとクラスメイトの笑いを掴むこともできた.

…と,自分の自己紹介にちょっとした手ごたえを感じていると…



ぐわっっ!と勇者にすごい勢いで振り返られた.

なに!?なんかすごい形相で睨んでる!

僕,なんか悪いこと言った!?

急な事態にクラスメイトもドン引きだ.



ちょっと怖くなり,助けを求めるように横に視線を背けてみると….



アリスさんもすごい横目で睨んでた!

こっちは器用に,皆からは見えないよう首を下に向けて,僕のことを睨んでいた.



えー…ほんとなんなの…この人たち….

怖いんですけど….



「えー…それでは次の人?お願いしますー.」



アライ先生が,なぜか固まってしまった空気をほぐして自己紹介を進めてくれる.

アライ先生は優しいなぁ….

この人に付いていこうと思った僕であった.



「アリス・レミィ・エメリスです.趣味ということではありませんが,弱き者を助けることが強き者の務めだと思っております.その身に余る力を持ちながら傲慢な態度でいる者がいるなんて理解もできません.」



そう言って,アリスはアレクを見る.

これは明らかに勇者のことを言っているのだろう.



対する勇者は意にも介していないようだ.

アリスのことを一切見ることもなく,腕を組んで目を瞑っている.



「は,はいー.それじゃあ次の方にいきましょうー.」



先生,頑張れ!

僕はそう応援せざるを得なかった.

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