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勇者の友人Aの物語  作者: はこお
2/7

席決め

みんな,聞いてくれ!



一体,僕が何をしたっていうんだ!?



なんでこんなことに!?



僕の名前はレオン.

ユークリウス魔法学園1年A組出席番号37番.



しがない子爵家の次男さ.

もともと魔法は得意だったからこの学園で腕を磨いてゆくゆくは騎士団に入っちゃったり!?

なんて夢見るふっつうの少年さ.



入学式の日のクラス分けを見て,かの有名な勇者と同じクラスになったことにそれはもう歓喜したさ!

もしかしたら僕,勇者の従者になれちゃったり!?とか思ったさ!



それがどうだい!

あの新入生代表の挨拶



魔法を唱えたわけでもないのに,場が一瞬にして凍り付いたね.

あんなやつだったなんて知らなかったんだ.



そう思いながら,僕は前の席の住人を見て,溜息をつく.

制服を着崩し,話かけるなオーラばりばりの勇者様は,今日も健在だ.



そう,なによりの不幸は,そんなやつと同じクラスになってしまい,しかも席が近いこと.



順を追って話そう―――



◇◇◇◇◇



「はい,1年A組のみなさんー.私が担任のアライですー.これから1年間よろしくねー.」



担任の先生は名をアライと言った.

背丈は小っちゃく,本当に教師なのかと疑うが,被っているとんがり帽子は馬子にも衣装という感じで意外と様になっている.



「それでは早速ですが,席決めから始めちゃいましょうー.」



今はみんな思い思いのところに座っている.

机と椅子の数はクラスメイトの数にピッタリのはずだが,既に勇者の周りはなぜだか空間が空いている.

そう,単純にみんな引いているのだ,勇者に.



勇者はと言うと,皆のそんな態度もどこ吹く風,一向に気にした素振りはない.

さすが,新入生代表挨拶であんなことを言うだけある.



アライ先生はどこからともなく取り出した箱を手に,皆に言う.



「それでは,この箱の中から好きな紙を選んでくださいー.黒板に書いてある席番号と同じ番号のとこに移動してくださいねー.」



そう言うと,いつのまにか黒板にはこの教室の机とそれに対応する番号の書かれた座席表が描かれていた.

あれは念写の魔法かな.

頭の中にある座席表を,黒板にあれだけ精確に模写できるとはさすが魔法学園の先生だ.



前の生徒たちは既に箱の中から紙を取り出しては,その内容に一喜一憂している.



僕は理解している!

席替えにおいて最も価値の高い位置はどこか!

それは窓際最後尾だ!

まさに主人公ポジションといってもいいこの位置は,柔らかな風を受け,グラウンドを眺めることができつつも,教師からの注意が外れるポジションとして絶大な人気を誇る.

(実際に教師からの注意が外れるかは謎だ.)



「はい,次はあなたですよー.」



とうとう僕の番が来た.

見た所,まだあのポジションは埋まっていないようだ.



よし!引いてやるぜー!!



「うぉりゃぁ!」



紙の中身を見た僕は不敵な笑みを浮かべた.

ふふっ,やってやったぜ!

主人公ポジションだ!



あとはこれで隣にヒロインちゃんでも来れば完璧だ!



「はい,じゃぁ次はあなたですよー.」



どうやら次は勇者の番らしい.

まだ引いてなかったのか.

自分のことに夢中で見ていなかった.



なんとなく,勇者がどこになるのか,気にしながらも僕は席の移動を始める.

ふぅ,いい席だなぁ.



すると,なぜか勇者が僕に近づいてくる.

なんだ!?なんだ!?



勇者は僕のことを気にした風ではないが,僕の目の前で止まると,僕の前の席に座った.

な,なんだって…僕の前の席は勇者か…ま,まぁいい.



あらためて勇者を後ろから観察してみる.

名前はアレクと言ったか.

身長は僕より少々高いくらいだが,デカいという程でもない.

あとは,黒髪がちょっと珍しいかな,程度でとりたてて派手さがあるわけではない.



だが,こいつは勇者だ.

勇者には,一般人では絶対に敵わないような補正がかかると言われている.

曰く,全ステータスが数倍に向上するだの,勇者特有の魔法が幾つも使えるだの,それはもうチートというにふさわしい.



そう思ってあらためて観察してみると,こいつには絶対敵わないような,数々の修羅場をくぐり抜けてきた強者のようにも見える.

やはり,触らぬ神に祟りなし,だろうか.

なるべく関わらないようにしよう,と思うのだった.



そうこう考えてるうちに,隣のクラスメイトが移動してきたようだ.

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