アース、ウインド&ファイヤーズ
2009年に別のペンネームで書いた作品を改稿したものです。
九回裏ノーアウト満塁、スコアは1対0。
地球は絶体絶命のピンチに追いこまれていた。
「ハァハァ……」
マウンドの俺は頬をつたう汗をぬぐった。
あとアウト三つ。三つなんだ。
スコアボードにあと一つ『0』を加えることができなたら、俺は……。
粉袋を手放し、キャッチャーミットを睨み、大きく振りかぶった。
「今日で野球をやめてもいい!」
* * *
それはヤンキースがちょうど三十回目のワールドチャンピオンに輝いた次のシーズンのことだった。
ニューヨークの上空に突如として巨大な円柱が現れた。いったい何事かとテレビカメラが向けられたとき、世界中のチャンネルが一つしか使えなくなった。
青い顔の男は画面の中で言った。
『この惑星は今日から我々が支配することになった。抵抗しても無駄だ』
次の瞬間、ホワイトハウスと国防総省が跡形もなく消え去った。
ニュースを知った人々が大恐慌に陥るなか、欧米、アジア、アフリカ、オーストラリア、と大陸の空は無数の円柱で埋めつくされていった。人々は天を仰いだ。これでもう人類はおしまいだと。
襲来から数日がたち、宇宙人は再び放送をジャックした。
『おまえたちのことは調べさせてもらった。ことによっては植民地にしてやってもよいと思ったのだが、やはりダメだな。我々がやってくるのがあと何年か遅れていたら、この惑星は次の一億年を迎える前に生物が住めない場所になる運命だった。宇宙からの視点を手に入れてもなおこの汚染を食い止められないとは、まったくあきれて言葉にならん。ホモサピエンスにとってゴキブリは害虫だそうだが、この惑星にとってのゴキブリは、おまえたちなのだよ』
地球人は返す言葉がなかった。わかっていたことなのにどうして環境破壊を食いとめられなかったのかと、この期におよんで醜い言い争いが飛び交った。
宇宙人はつづけた。
『だが……出来そこないのサルの惑星にしては、一つだけ驚いたことがある。野球だ。おまえたちは優れた進化をつづける我々と同じスポーツを生みだした。ということは、いずれ地球人も我々のような尊い存在になっていく可能性も、ないとは言い切れぬ。そこでだ。おまえたちに一度だけチャンスを与えることにした』
野球で一回勝負。勝つことができたら今回は見逃してやろう、と宇宙人は約束した。試合は三ヶ月後、開催地は『新東京ドーム』と指定があった。
さっそく世界中からメンバーが集められた。チーム名は公募で『ウィンド&ファイヤーズ』と決まり、ユニフォームが揃うと、関東の山奥で合宿がはじまった。
宇宙人の試合のビデオなどあるはずもなく、選手たちはチームに貢献できるよう自分の技や仲間との連携を磨いていくだけだった。合宿は淡々と進んでいった。少なくとも見た目は。
そして、ついに試合の日がやってきた。
新東京ドームは静まりかえっていた。人類の命運をかけた一戦に、人々はただ固唾をのむばかりで、応援のことなど忘れてしまっていた。この試合に負ければ我々は殺される。何十万年と地上を支配してきた人類が、わずか何十秒で。
一回表、宇宙人が投げた第一球。それですべてが決まったようなものだった。
ウィンド&ファイヤーズの先頭打者、ジャッキー・ブルースは三振しないことでよく知られていた。男はバットをヌンチャクのように自在に扱い、どんな球でも当てることができた。そのジャッキーがなんと、ボールがミットにおさまってからバットを振りはじめたのだ。
内野席から沈んだ声がぽつぽつとあがった。
「終わったな」「ああ、終わった」
地球勢の攻撃はわずか九球でチェンジとなった。
一回裏、俺はなつかしのマウンドに立った。
小学中学とこの地で優勝投手になった俺はメジャーリーグのスカウトに勧められ、海を渡って本場の高校に入った。それから十年、俺は世界一の右腕と呼ばれる男になった。付いたあだ名は『台風』または『心臓にトゲの生えた男』。
三勝三敗で最後の一戦を迎えた三年前のワールドシリーズ。第七戦の先発が決まっているというのに、十二時間も爆睡してその日の練習に遅刻した。
そんな俺の両足が、震えでとまらない。
八十億の希望を一手に引き受けたというプレッシャー。ないと言えば嘘になる。だが俺にとっては、もしも明日から野球ができないとしたら……という不安のほうが多くを占めていた。
審判の声がかかった。
俺は振りかぶり、第一球を放った。いい感触だ。ストライク一つもらった。
青い顔の大男はすうっとバットを出す。
チッ、当てられた。打球は?
打球は彼方の夜空に消えていった。今宵は満天の星空、ならぬ無数の宇宙船がきらめいていて、開閉式ドームは大きく口を開けていた。
ギリギリファール。
マウンドが汗の雫で黒ずんでいく。
終わった……かもしれない。
味方や俺自身の暗い気分とは裏腹に、それから宇宙人たちは凡打を重ね、気がつけば無失点のまま三回の攻防が終わっていた。ヒットは四番の一本だけ。それもバックスクリーン上空に一直線の当たりだったはずが、球場の明かりにつられてやってきたカラスにぶち当たって、ボールは外野手のグラブに収まり、ルール上、二塁打に終わった(そんなルールがあったこと自体、驚きだが)。
四回、五回、六回と似たような展開がつづいた。宇宙人は相変わらず四番だけは野手の間を抜ける当たりを飛ばしていて、エラーで出た二塁ランナーをホームに返し、ついに均衡崩れたかと思いきや、ランナーが三塁をまわったところですっ転んでタッチアウト。それに対し、地球勢は相変わらず三振の山だった。
運も味方してここまでどうにかヒット二本に抑えているように見えるが、実のところは薄氷をふむ思いの連続だった。メジャー屈指の名手とうたわれた二遊間がエラーばかりするのだ。明らかに集中力に欠けていた。それは合宿のときから皆がひそかに怖れていたことだった。
そして七回の裏、ついに事件はおこった。
ワンアウト一塁、打者の当たりは真正面のショートゴロ。
ダブルプレーもらった! 俺はマウンドで小躍りした。
ところが、内野からボールが帰ってくると、ワンアウト一二塁の大ピンチ。俺は我が目を疑った。ショートが放った球を、なんとセカンドが受け取らなかったのだ!
野球はじまって以来の珍事に、超満員のスタンドはどよめいた。罵声や励ましの声はなかった。いったいあそこで何がおきたというのか。人々の思考はショックのあまりひどく滞っているようだった。
俺はつづくバッター二人を特大の外野フライでしのぐと、絶え間なく首筋をつたう汗のことなど忘れて、ベンチにどかっと腰を下ろした。
「あいつらめ……」
二十二人目の地球人打者が青い顔の怪物投手にもてあそばれている頃、ベンチの端では汚い罵りあいが燻っていた。ショートのバルカンとセカンドのカラシニコフだ。
口論の中身は合宿のときから変わっていなかった。宇宙人がやってくる直前まで、彼らの祖国は互いに戦争をしていたのだ。
「俺様は千歩譲って、てめぇの腐れグラブに投げてやったんだ」とバルカン。
「貴様の汚れた球を捕るくらいなら、死んだほうがマシだ」とカラシニコフ。
「死ぬのはてめぇ一人で充分だ。肥だめ野郎!」
「やるか! 馬糞野郎!」
俺はむくと立ち上がると、あえて耳障りなほうへ歩んでいった。
男どもは止めるな言わんばかりに、こちらを睨みつける。
俺はダグアウト前を指し、低く言った。
「ベンチワークの邪魔だ。やるならそこでやれよ」
男たちはグラウンドに出た。一瞬、声を荒げたものの、逃げるように帰ってくると、主人に怒鳴られた双子の飼い犬のように頭をたれた。
「今まで生きてきて、これほど恥ずかしい思いをしたことはねぇ」とバルカン。
「まったくだ」とカラシニコフ。
二十三人目の男が三振した。
俺はグラブを取りにベンチの指定席へ足を向ける。
選手たちは尊敬のまなざしで俺を見送った。
控えの内野手、ンジャメナは言った。
「いったいどんな魔法を使ったんだ?」
俺は天井を指した。
「ああ」
男たちは納得した。
二十四人目が三振し、スコアボードの上半分に八つ目の『0』が点ると、ベンチ真上の内野席に招かれた子供たちから悲鳴があがった。
黒い顔、白い顔、黄色い顔。球場に集まったすべての人々は今日という日に限り、西や東やあの神その神のことを忘れ、ただ一つのことのために声を合わせている。プレイボールのときからそれを見てきた俺は今、妙な考えにとりつかれようとしていた。
試合がこのまま永久につづいてくれたらいいのに……なんてな。
八回の裏も宇宙人は凡打をくり返した。思うようにいかず苛立っているのか、各打者は帰りぎわに不満を口にするようになった。
一人目。「ちゃんと投げろや」
ちゃんと投げてるだろうが。勝負を避けたことは一度もない。
二人目。「ケッ、待ちきれねぇ」
何をだ。スローカーブなんか投げてねぇ。
三人目。「遅すぎて逆に合わないとは、恐れ入ったぜ」
速球投手の最高栄誉『ロケット賞』を五年連続で獲った、この俺の球が遅すぎるだと? 確かに相手のピッチャーは信じがたいほどの豪腕だが、あんなのは稀だと思っていた。俺の球威は奴らにとって平均あたりで、投球フォームのせいでタイミングが合わないのだと思っていた。まさか、そっちのほうだったとはな!
マウンドを降りた俺は、ベンチとグラウンドをしきる金網に向かってグラブを投げつけた。屈辱以外のなにものでもなかった。もう一度マウンドに上がるぐらいなら、死んだほうがマシだ。
ふらふらとベンチに入ろうとする俺の頭を、厳つい手がガシとつかんだ。
「少しは数字を信用しろよ」
バルカンは『0』の数が十六になったスコアボードを指すと、さっさとベンチに消えてしまった。
今度はしなやかな手が肩を包んだ。
「見ているぞ」
カラシニコフにつられて顔を上げると、色とりどりの幼い瞳が俺に釘づけだった。
俺は小さく笑うと、野球帽をひょいと持ち上げ、グラブを拾いに走った。
黄色い歓声があがった。
あと一回。やるべき事をやるだけだ。あのクソ遅い速球で。
九回表、ウィンド&ファイヤーズはベンチ前で円陣を組んだ。日本式のがっちり肩を組む円陣だ。俺のアイデアだった。むさ苦しい顔を突きあわせて作戦を確かめた後、誰かが次の『世界野球』のときに真似してもいいかと訊いた。俺はイエスと答えた。
二十五人目のバッターは七番のバルカン。完全試合をつづける青の怪物が豪腕をうならせると、バルカンはバットをすっと横に寝かせた。
怪物はどすどすとマウンドを駆けおり、ゴロに備える。
打球はぽーんと投手の頭上にあがった。
「クソ!」
バルカンは歯がみしながら一塁へ走った。
白いラインの先、ファーストの男はなぜかミットをかまえている。
走者はヘルメットを飛ばしてベースを駆けぬけた。
「セーフ!」
背のたけ八フィートの塁審が両手を広げた。
「え?」
背番号『23』が大きな目でふり返る。
怪物投手は尻もちをついていた。地球の慣性にまだ慣れきっていなかったようだ。
やんやの歓声。
ついにランナーを出した!
八番はカラシニコフ。ポストシーズンで四度もMVPを獲った、当代最高の『クラッチ』ヒッターだ。『勝利の鍵番』と呼ばれたこの男に送りバントをさせるなど、当人はともかく、ファンが許さなかった。
そんな彼がランナーをどうにか二塁へ送った。やり慣れていないために当然バントは下手くそで、サード正面の強いゴロだった。
見事なのは塁上のバルカンだ。打者のへっぴり腰を見るや、サインもカウントも無視して次の塁へ突っ走っていた。
俺は知っていた。当て勘のいいカラシニコフは、数こそ少ないがバントでの空振りやフライが一度もない。もしやあいつ、そのことを……。
「なに笑ってる。タイ・フー、次のバッターはおまえだ」
監督の声で俺はハッとした。誰もが試合に集中しすぎていた。次の打者はファールグラウンドの小さな円の中で控えていなければならないのだが……。
俺はヘルメットをかぶり、バットスタンドから一本抜く。
監督のレイバンが光った。
「わかってるだろうな、え?」
「へいへい」
俺はバットをかつぐと、口笛を吹きながら右打席へ向かった。
白熱した投手戦でリードしているケースではときどきあることだ。ワンアウト二塁、打者はエース投手。手がしびれたり怪我したりすると次の投球に響くから、おまえは振るなというわけだ。態度の割には小せえジジイだぜ。いや、小せえからこそああしてんのか。どっちでもいいや。
俺は打席に入るや、レフトスタンドに向かってバットを突き上げた。
どよめきと歓声が入り乱れたスタンド。
ベンチで控えるピンストライプの列が波打つ。
「正気か?」「オーマイガッ!」「映画じゃねえんだぞ!」
巨石文明のような顔の厳つい捕手がマスク越しに語りかけてきた。
「なんの真似だ」
「知らないのか?」
「そんなおかしな打法など知らんな」
「そうか……」
ベンチを出るときはなにも考えていなかった。誇りを傷つけてやったら、力んで四死球を出すかも、くらいのやっつけの策だった。巨石文明のひと言で、俺はひらめいた。
「古くから地球につたわる最終奥義さ」
「自信があるなら、はじめからそうすればいい」
「残念ながらこの打法は、一生に一度しか使っちゃいけないんだ」
「使うとどうなるのだ」
「二度と野球ができなくなる」
すかさず捕手はタイムをかけ、マウンドへ走っていった。
怪物投手は俺を見て、ニヤと笑った。
球速が五割増しになった。革の焦げた臭いが打席に漂ってきた。
銅像のようにレフトスタンドを指したまま、俺は三振した。
スタンドからはヤジと悲鳴の嵐。相手ベンチは爆笑の渦。
俺はかまうことなくベンチへ引き下がり、ヌンチャク打法の一番、ジャッキー・ブルースに秘策を耳打ちした。
「俺を信じてくれ」
若者は立てたバットに向かって小さくうなずいた。
ジャッキーは左打席に入るや、ライトスタンドに向かってバットを突き上げた。
デビュー以来、本塁打ゼロの男がなにを血迷ったかと、俺の時にも増してスタンドは荒れた。宇宙人勢ベンチは「笑い殺して試合放棄させる気か」と腹を抱えながら野次った。
地球人は白旗の代わりに白木の棒を上げたか……怪物投手はそんな顔をして振りかぶった。
山なりのスローボールがきた。ジャッキーはそれを逃しはしなかった。
打球はセンター前にふわりと落ち、ホームへ帰ってきたバルカンは飛び上がってガッツポーズ!
あの怪物は俺の秘策にまんまと引っかかってくれた。降伏の意を示した者にさらに恥をかかせようとする、悪い下士官のような性格か否かの大きな賭けだった。
次の打者は三振でスリーアウト。しかしついに……ついに先制した。野球の恐人どもを相手に、俺たち地球人は先制したんだ。
九回裏。不思議とプレッシャーは感じなかった。メジャーで完全試合をやったときのほうが震えたくらいだ。肩の調子は上々だった。スタミナもまだある。相手は打ちあぐんでいる。このまま虎を眠らせたまま終わらせる自信はあった。
で……この有様はいったいなんなんだ?
三人つづけてヒット。三球で無死満塁。
そうなのだ。とうとう奴らは俺の『クソ遅い速球』に目が慣れてきたのだ。
「ハァハァ……」
マウンドの俺は頬をつたう汗をぬぐった。
この回はまだ三つしか放っていないのに、急に疲れが襲ってきた。
やばい……マジやばい。
打席に立つのは宇宙の四番。今日は十割打たれている。いい当たりを飛ばす奴は何人もいたが、今の三本をのぞけば、記録に残ったのはこの男だけだった。規格外打者のなかにあってこの男はさらに別格だ。
マスクをつけた黒騎士が、がちゃがちゃとマウンドへやってくる。男は仮面を外して黒い顔をあらわにすると、ニッと白い歯を見せた。
「敬遠するか?」
「ふざけんな!」
捕手はのろのろ帰っていった。
あとアウト三つ。三つなんだ。
スコアボードにあと一つ『0』を加えることができなたら、俺は……。
粉袋を手放し、キャッチャーミットを睨み、大きく振りかぶった。
「今日で野球をやめてもいい!」
前足を上げ、軸足をふんばり、グラブをぐいと引いて、右腕を高く振った。
最高の感触だった。
サダハルだろうとアーロンだろうと、この一球ばかりは手も足も出るまい。
青い顔の男は腕の血管を浮き立たせ、むんとバットを振った。
「!」
次の瞬間、俺は天国を味わっていた。
KO負けしたボクサーが語る、あの感じだ。
気づくと俺はマウンドの上に大の字になっていた。
そうか……負けちまったか……。夜空の満月も今日で見納め。にしても、ヤケによく自転る月だな。こっちに迫ってくるし……。
その月にはなぜか縫い目があった。
「うあっ!」
俺はとっさに右手をだして顔をかばった。
握り慣れた丸いものが、そこに収まっていた。
なつかしい感じだ……誰のだろう、このボール。
「よこせ! 早く!」
声がしたほうに顔を反らした。取ったボール以外はぼやけていてよくわらかない。
俺は内気な患者のごとく、言われるがままに球を放った。
男はそれを素手で受け取るや、猛然とサードへ投じた。
背番号『6』……ああ、セカンドのカラシニコフか。
「ハッ!?」
俺はがばと上体をおこす。
サードの男はすでに、二塁ベースでふんばるバルカンへ放っていた。
三塁につづき、飛びだした二塁ランナーもタッチアウト。
俺はボールを落とさなかったからピッチャーライナーでアウト一つで……えっと、えっと……。ふらつく頭で指折り数える。
すげぇ! トリプルプレーだ!
俺は再び大の字になった。笑いがとまらない。
ったく、なんて野球バカだ。驚くところが間違ってるぜ。
俺たちは……勝ったんだ。
宇宙人たちは約束を守った。ドーム上空にあった華やかな光が少しずつ減っていく。
MVPには当然、俺が選ばれた。
記者団に囲まれるなか、宇宙人勢の宰相らしき小柄な怪物は、トロフィーの代わりに俺の肩を叩くとこう言った。
「どんな望みでも一つだけかなえてやろう」
囲みの外で泣きながら抱擁を交わす、バルカンとカラシニコフ。俺はそれを横目で見つめながら、青い顔の老人に耳打ちした。
「!」老宰相は黄色い目を丸くした。「ほんとうにそれでいいのかね?」
俺はニッと歯を見せてうなずいた。
「人類はもっと謙虚にならないとな」
地球はそれから数千年の間、静かなる監視のもと、戦争も破壊もない穏やかな時代がつづいたという。
宇宙リーグの野球殿堂には数多くの球聖が祀られている。なかでも子供たちに人気なのは、かつて地球という名の小さな惑星を『クソ遅い速球』で救った『小さな大エース』だ。