2】イマイ・レイ
イマヨミガエレ
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今井 零はなんの変哲もない、書くことがない、特技もない、好きな食べ物もない、嫌いな季節もない、ないない尽くしの少女である。習い事にも言ってない、小学校に行っている時以外はずっと引きこもっている。ご都合ニートと言ったものだろうか。
そう言えば今日は入学式だったから中学1年生になったのか。書くことが見つかってよかった。
彼女が入学したのは浦ヶ町中学校。ただ家に近いという理由で、それだけで選んだ学校。退屈な入学式を終え、彼女はクラスへと向かう。1年D組へ。
唯一の友達だった森川花実はE組へ行ってしまった。おっと、ここで唯一と言ったのは他でもない。彼女、今井零には友達と言うものが花実以外いないのだ。理由は簡単。純粋に零は誰かとコミュニケーションせるのが面倒くさいのだ。花実は幼馴染というだけ。そして友達というだけ。
ただ、今はその存在をとても欲しく思った。
(うわ…自己紹介の時間じゃん。話せる人がいればいいんだけど、運悪くいないんだよなあ、花実以外。)
そんなことを思いながら、平凡ぼっちは教卓の前に立った。
「えー。今井っす。」
「名前は?」
クラスメイトから名前を求められ、零は心の中で顔をしかめながら続けた。
「名前は零。以上。」
「今井さん、好きな食べ物と、好きな季節と、好きなスポーツと、好きな教科を言うのよ。」
今度は担任に言われ、顔のしかめを表に出す。
「好きな食べ物、無し。好きな季節、無し。好きなスポーツ、無し。好きな教科、無し。以上。」
「今井さん、よろしくお願いします、って。ほら。」
またまた担任に水を差される。これが学校か、帰りてーと零は思う。
「………ッッ…よろ…しく。」
教室は、沈黙した。
(私が全身全霊のよろしくを言ったのに無視とかいい度胸してんなーこいつら)
そうそう思いだした。彼女は口が悪いので有名だった。
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そして、やっと苦痛の時間、自己紹介が終わった。
「ありがとうございました」って言ったすぐ後にグループに固まる女子とふざける男子はよほど頭がパッパラパーなんだろうと内心毒を吐きながら、少女は、独りだった。
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「零ー?」
クラス外から声が聞こえる。
何度も聞いた声。嫌というほど呼ばれてきた名前。でもいつしか、気づいたときに聞きたくなるその声。今もずっと、聞きたいと思っていたその声。
零は無意識に顔を綻ばせた。
「花実…‼」
どの声帯からこんな可愛い声がでるんだろう。さっきまで思いっ切り、120%のだみ声で自己紹介してたやつから、こんな、可愛い声が。
それは花実だけに向けられた、親愛の声だから。
「零、元気?今日も茶髪のくせっ毛が踊ってるネー。」
「おい、くせっ毛じゃなくてゆるふわパーマでしょ。勘違いすんな、花実ず。」
「そうやって人の名前で遊ばないことー。零ぞうこー。」
「もう…。あほんだら。」
「そいや、クラス離れちゃったネ。」
「ああ…。お前がいなかったから自己紹介大変だった。」
「ま、零は極度のコミュ障陰キャだもん、しょうがないッ!」
そんな、他愛ない会話を、チャイムは無情にもかき消して。
「うっわ、次の時間給食じゃん。きっと私、喋れなさ過ぎて今日命日迎えるから、葬式きてね。」
「もう、ろくでもないこと言わないのー!」
そう言って、二人は教室へ戻っていった。
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零が給食の時間、会話しなさすぎて死亡したのはナイショのお話。
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2話目ですー。零ちゃん口悪い!
この物語はたまに作者のどうでもいいコメントが混ぜ込んであるので。はい。
寝氷猫




