第一話:非日常はやはり突然やってくる
実は去年書いてた奴だったりします。
「誰かに呼ばれた気がする」
「何も無い所で躓く」
「誰かがそこにいたような気がする」
「誰かの視線を感じる」
といったことや、
「何かを忘れているような気がする」
「唐突にいつものルートから変えたくなる」
「勘なのに妙な確信がある」
といったことを、一度は感じたことがあると思う。
しかし、その違和感に対して大体は、気のせい、見間違い、疲れ、はたまた精神不安定、第六感といった様々な理由をつけて無かった事にしたり、気づかない振りをしたりしている。
果たしてそれは本当に見間違いで、気のせいなのだろうか。
果たしてそれは第六感という曖昧なものなのだろうか。
もしかしたら、見えないだけで、私達の知らない”何か”が、存在しているのかもしれない―――
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「眠い・・・」
萩月 大地。私立舞泉学園高等部1年である。
「いってきまーす!」
「気をつけてねー」
大地がいつものように学校へ向かっていく。すると
「大地くーん!」
後ろから声が聞こえる。大地が振り向くとそこには、
「大地君、おはよう!」
幼馴染である、古見 子音が、気持ちのいい挨拶と共に現れた。
「ああ、子音、おはよう」
大地も返事を返す。学校へは子音と一緒に行くのが通例となっている。リア充である。
「今日も一日頑張ろうね!」
「そうだな」
いつもの会話を終え、学校へ向かう。その時。
「・・・?」
大地の目の前が少しノイズがかかったかのようになる。そして、
「うわっと!?」
躓いて盛大にこけてしまった。
「大地、ボーっとしてたでしょ。まだ寝ぼけてるの?」
「あ・・・いや・・・すまん」
大地は昔からこけることが多い。それを子音に注意されるのは一種のテンプレである。
だからこそ大地は思う。おかしい。さっきまでこけるようなものはなかったはずだが?そう思い、自分がこけた場所を見るも、やはり何も無い・・・と思っていたら。
こけた位置にノイズがかかっていた。
「・・・?」
触ることは・・・できない。なんだろう。
「大地?」
子音が呼びかける。
「子音、ここに何か見えるか?」
「何も見えないけど、どうしたの?」
「・・・なんでもない」
「??」
よくわからないまま、二人は学校に登校した。
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大地が一人で下校している。子音はまだ学校内だ。大地は早退しているのだ。
「はぁ・・・」
大地がため息を吐く理由・・・それは、例のノイズである。一日中、ずっとノイズが見えるのだ。教室の窓の外にも、欠席者の椅子にも、先生の肩にもだ。あまりにノイズが多く、気分が悪くなったので、保健室に行って休んだのだが、全く治まる気配は無く、むしろ悪化してきたので、帰って休んだほうがいいと判断したのだ。
「なんなんだろうな・・・これ。寝て治らなかったら病院だな」
最悪の可能性を考えつつ、帰宅。
「ただいまー・・・いるわけないな、うん」
萩月家は両親が共働きである。特に今日は共に深夜帰りのため、両親はいるはずが無かった。しかし・・・
「ゴトン」
「えっ」
2階から物音がする。大地は自分の部屋のものが何か落ちたのかと思い、自分の部屋へ。そしてドアを開く。
「・・・」
本棚から本が何冊か落ちている。なぜだ。
大地にはこういったことは昔から起きていた。しかし、頻繁に、というほどではなかったため、気にせずに過ごしていたし、他の人だってこういうことくらい体験したことあるだろう、と思っていた。実際物が落ちたりすることはある。しかし、今回は気にせずにはいられなかった。
「ノイズ・・・」
本棚にノイズがかかっていた。どういうことだ。分からない、が気になる。とりあえず本を戻して寝ることにする。
「よいしょ・・・」
本を片付け、ベッドに向かう。その時。
「・・・うぇ!?」
またしても足を躓く。今日二度目である。頭からベッドに突っ込み、地味な首の痛みに耐えつつ、状況を把握する。
ここは勝手知ったる俺の部屋。地面に引っかかるものなど置いていないし、躓いても逆の足くらい間に合うんじゃないか。朝のだって間に合うはずだ。そんなに運動能力が低いわけでもないぞ―――
などと色々なことを考えていたが、顔を上げて振り向くと、それまでの考察が全て吹き飛んだ。
そこには・・・
「・・・やっと、会えたね」
少女が、いた。
そして、大地の日常的に非日常な日々が、始まる。
「・・・頭打ったか?俺・・・寝た方がいいかもなあ」
「えっ」
・・・非日常な日々が始まる・・・かもしれない。