第15話 術後の経過と帰宅。
ICUでの最終日は比較的のんびりな一日でした。
大きなイベントと言えば
首につながっていた2つのうち、
1つのドレインを取ったことと、
シャワーを浴びたことくらい。
ちなみにこのドレインはかなり奥まで繋がっている特別なもので、
取るときはものすごい不快感で、
思わず声を上げてしまうくらい痛かったです。
シャワーは男性の看護師さんが
付き添ってくれて洗ってくれて、
とても気持ちよかった。
毎日のように体を拭いていても、
やっぱり体を洗えるのは違いますね。
最終日で、さらに私が元気でしたので、
毎時間の診察も二時間おきに変更されていました。
顔見知りになった看護師さんやテクニシャンの方々と
おしゃべりをしたり、
これから必要だからと私の個室で使った道具や備品を
看護婦さんがお持ち帰りようにまとめてくれたりしているのを
感謝しながら待つこと数時間。
外が暗くなった頃、
やっと気管カニューレのポンプが届いて、
看護師さんたちに見送られながら、
病院の近くのホテルへと移動しました。
気管カニューレのポンプを待っている時間が長かったため、
完全に飽きてしまっている子供と、
お疲れ気味の嫁さんとホテルに向かいます。
この数日間受けていた体のケアと、
いまだに体に繋がっているドレインや胃ろうの事を考えると
多少の不安はありますが、
それでも病院から出られるというのは
気分が良いものです。
とりあえずこの日は胃ろうを使って食事と薬を
体に入れる以外は特にする事もありません。
というかこの日から次の検診のある術後7日後までの数日間、
私のしたことといえば、
定期的に食事と薬を取り、
嫁さんにドレインに溜まる血を抜いてもらい、
たまに体を動かすためにホテル内や近くを散歩するくらい。
後はメールやニュースをチェックしたり、
ネットで動画を見たり、
必要な時にちょっと声を出してみたり。
そして術後7日目に当たる日に
執刀医と整形外科の先生と面談を受け、
最後に残っていた首と足、
二本のドレインを抜いてもらいました。
こちらは比較的浅い場所に設置されていたので、
抜くときの痛みもそれなりで済んでよかった。
この時点で私につながっている管は胃ろうのみ。
次の診断には10日ほど空いているので、
とりあえず一度自宅に帰ることにしました。
そのままホテルにいても良かったのですけど、
それだけでもお金がかかりますし、
ちょっと病院から離れたかったですしね。
そこで問題になったのは
どうやって帰るのかということ。
行きは飛行機できたのですけど、
とりあえずちょっと歩ける程度の回復具合で、
空港の人混みに子供連れで向かうのは
いろいろな意味で厳しいなと感じました。
その上気管カニューレはまだついていますから、
ほとんど喋れないですし。
更に病院の手違いで、
流動食がホテルに届いてしまい、
持って帰る荷物がとんでもないことに。
子供連れですので、
そもそもにして荷物が多いですからね。
病院と相談すると、
車で帰っても少しだけ手当が出るということでしたので、
車をレンタルして帰ることにしました。
首に大きな傷のある私は運転できませんので、
嫁さんがハンドルを握ることになりました。
急に沢山の流動食を胃に入れると、
調子が悪くなることがあるため、
私は胃ろうを通して
数時間おきに食事をしなくてはなりませんでした。
胃ろうに流動食を入れるためには
何処かに座って、シャツをめくって腹を出し、
チューブに大きな注射器を差し込み、
(ピストン部は使わずに)
流動食を胃ろうに流し込まなくてはいけません。
車の中なら駐車場所を選べば何時でも食事をとれますが、
これが空港の中だったら、
どこで食事ができたかも分かりません。
食事といえばこの帰り道に
日本料理のレストランに寄って、
お蕎麦を少し食べることが出来ました。
口の中の怪我は治るのが早いので、
術後一週間の検診の時点で、
もし何か口にできたら食べてもいいと言われていたのです。
こうなるといよいよ持って
胃ろうの存在意義が薄れてきます。
おそらくずっと座っていたからだと思うのですが、
この頃から胃ろうのつながっている部分に違和感があって、
特に胃腸が動いている時に痛みを伴うことがありました。
また、お腹に穴が開いている状態ですから、
どれだけ気をつけていても
胃ろうにつながっていつチューブに
何かぶつかったり引っ掛けたりして、
痛みに苦しむ、ということもありました。
そしてこの長距離運転でのおまけとして、
レンタル車がちょうど購入を考えていた車種だったのです。
私はかなり期待していたのですが、
荷物は乗らないし、ノイズは大きいしで、
三日間かけて家に帰ってきたときには
興味は全くなくなっていました。
これも乗る機会がなかったら分からなかった事です。
そんなわけで嫁さんは初めての長距離ドライブで大変でしたが、
この選択は大正解でした。
あまり首を動かさなくていい高速道路では、
私も運転して負担を軽くしましたけど、
自宅から病院までは1200キロほどありますので、
結構な長旅でした。
年明けから本格的に職場復帰したので、
全く自由な時間がありません。
空いている時間は基本寝ているばかり。
週末も働いていて、
このままだと倒れるのは時間の問題なんじゃないかと、
他人事みたいに思っています。
良くないなあ。