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アメリカ在住、40代のガン闘病生活。  作者: 黄色い万年筆
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第10話 決断の時。

さて、CTCAと大学病院、

二箇所で手術やその他の対策を聞いた私は、

すぐにどちらで手術をするのかを決めなくてはいけません。


二つの病院の長所と短所を比べるとこうなります。


CTCA


長所:

・とにかく圧巻のサポート。

大きな手術を受けるのが初めての私としては

手術前のサプリメントから面倒をみてくれるのは魅力。

・色々な課の先生が一つの建物に居て、

すぐにアポイントメントが取れるのも便利。

・もうすべての先生に会ったので、

もし手術以外の治療が必要になってもすぐに対応してくれる。

・執刀医の先生がこの道のベテラン。

・さらにリハビリも充実。

今回の手術ではほぼ関係ないが、今後のことを考えると必要かもしれない。


短所:

・遠い。

患者ともう一人の分は飛行機代が出るが、

子供の分は出ないし、

術後は一週間ほどホテルに住まなくてはいけなくて、

その分のお金もかかる。

・本当にリンパ節を取ることが必要なのか納得はいっていない。


大学病院


長所:

・近い。車で二時間程度。

・リンパ節を今は取らないとの事なので、手術自体は比較的簡単。

術後も経過をみながら、

リンパ節を取るかどうか決めるので、

そういった意味では安心

・人工皮膚で済むのなら、作らなくても良い傷を負うこともない。


短所:

・あくまでも大学病院の一環なので、

他の患者とも空間を共有しなくてはいけない。

いつもなら気にしなくても大きな手術をした後にどう思うかは分からない。

実際に今回の滞在中に結構重篤の患者さんが待合室に来て

看護師さん達がてんてこ舞いしていたのです。

・近いと行っても片道二時間の道のり。

通院のためには結局ホテルを利用することが多くなる予感。

・CTCAの様な手術以外のサポートは無し。

・今回は一人の先生としか会わなかった。

放射線治療を始めたりすることになったらおそらく建物も違うし、

また違う先生に会うとこから始めなくてはいけない。


心の中では地元のクリニックや大学病院の見立てを

信じたい気持ちがあるのです。

今まで大きな病気もしたことないし、

家族や親戚にガン患者もいない。

たばこも吸わない。

お酒だって好きだけどそんなに深酒するわけでもない。

運動も去年まではそれなりにしています。

今回はたまたま貧乏くじ引いただけで、

実は大したことないんじゃないかと。

本当にそう思いたい。


その反面、自分自身の運の無さも知っているわけです。

大学院に入ってからは人の縁に恵まれましたが、

他の事で運が良かった試しがない。

今までも常に最悪を想像して、

それに備えた心づもりで生活をしてきました。

その経験則から行くと、

私の人生、油断をしてはいけないのです。


そんなことを二日間考えつつ、

それと同時に大学病院の先生と話したことを

CTCAの先生に質問してみることにしました。

まず一つは人工皮膚のこと、

そしてもう一つはリンパ節の生検のこと。

例の担当看護師さんの電話に留守電を入れておくと

数時間後に整形外科の先生と執刀医の看護師さんから

それぞれ電話が入りました。


執刀医の先生が手術で電話に出られないとのことでしたが、

看護師さんいわく先生がよく行うのは

首にあるリンパ節の中でめぼしいもの20個ほどを外科手術で取り除き、

手術中に病理に提出。

先生が他の作業をしている間に検査を行い、

その結果によって他のリンパ節を取るのかどうかを決めるのだそうです。


そして整形外科の先生曰く、

舌の裏側は平面ではないので、

立体的に整形をするためには

人工皮膚では難しく、

自身の皮膚の方がやりやすいとのこと。

私の場合はそれなりに大きく皮膚を取るので、

人工皮膚ではおそらくうまくいかないのでは、ということ、

さらに体が人口皮膚にどう反応するのか分からないので、

先生としては自身の皮膚を推奨するとのこと。


整形外科の先生と話している最中、

私の心はCTCAにお世話になることに決まりました。

もし同じ様な質問を大学病院に投げかけたときに、

彼らがこの先生のように直接電話をかけてくる可能性が想像できなかったのです。

(ちなみにこれは手術前の患者を取り込むからというわけではありませんでした。

今でも時折先生から直接電話がきます。)


それは大学病院が悪いと言うことではありません。

先生も親切に教えてくれましたし、

手術の見立ては異なりましたが、

もし生検のサンプルが大学病院に送られ、

大学病院の病理が検査したなら、

CTCAと同じ様な手術を進めてくる可能性も十分あったと思います。


しかし、実際にはCTCAとは異なり、

大学病院は元の生検のレポートを信じることにしました。

これは単純にそれが普通なのだろうと思います。

でも、裏を取るということを面倒臭がらなかったCTCAの方が

私にとって信用できると感じました。


さらにCTCAのサービスを知ってしまったが上に、

同じ様な安心感を求めてしまうと

幻滅するのが目に見えてしまったのです。


例えば、CTCAのオリエンテーションで

色々なサプリのや食事の情報をいただき、

手術前の準備にも安心感がありますが、

もし大学病院にしか行っていなかったら、

普段通りの食事をして手術に望んでいたでしょう。


どう転ぶか分かりませんが、

私の人生の中で一番大きな手術になるのは変わりません。

比較的マイナーな舌癌に関しては

発覚してからの生存率などもあまり分かりませんでした。

何十年も生きる方もいれば

早い進行で数年で亡くなってしまわれる方もいる、と言う感じです。


明確なベンチマークのない状態で、

限られた時間で選択をしなくてはいけないのです。

私はより確実な選択をすることにしました。


すぐにCTCAに手術を予定通りに行うことを知らせ、

大学病院にキャンセルの電話を入れ、

入院の準備を始めます。

年末で少し時間が開いたとはいえ、

手術までは二週間ほどしかないのです。


こりゃまた、忙しくなるぞ。


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