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ステータスって凄くて辛い

妹が生まれました

 妹が生まれた時、最初わたしは近寄ろうとしなかった、というかできなかった。

 この子を乗っ取ろうと思っていたんだよね…シャルの存在に気づく前、わたしはこの子に転生するつもりだった。

 そのせいで遠巻きに見てるだけ。

 でも生後3ヶ月辺りからちょっと変わった赤ちゃんだという会話を使用人達がしはじめたため、疑念を抱く。

 泣かないしあまり寝ない、それどころかやたらと動こうと頑張っているとの様子。

 そこまでおかしくはないんだけど、子育て経験者からすると心配になることもあるみたい。

 だけどもう一つの可能性がある…もしかして乗っ取られた?

 もしこの子も転生者なら?わたし以外の人の体を奪い取ったバケモノ…同じ存在だ。

 一瞬憎しみが湧く、けどスグに同じ穴のムジナだと自嘲した。

 それでもそんな子を又持つことになったお母様が心配にはなる。

 自分のことは棚に上げてそんなことを思った。

 それに転生者かどうかは知りたい。

 居ても立ってもいられなくなってきたので、とにかくお見舞いも兼ねて部屋を尋ねることにした。


 訪ねた時お母様は授乳していた。

 随分消耗した顔だ、もう産後3ヶ月も経つのに。妹に逆恨みな気分。

 それにしてもこの世界の貴族は自分で授乳するんだなぁとシミジミ。元の世界だと乳母がやるとか本で読んだ気もしたけどウロ記憶。

 オッパイを触る妹を見たら…手つきがいやらしい…ような?偏見ですかね。

 見た感じ転生者かどうかなんてわかんない、そらそうか。

 この位の赤ちゃんて骨格とかが未成長だから動かないし、目も耳も鼻もほとんど働いてないんだっけ?

 ついでにクスグってもあまり反応がない。

 よくわかんないなぁ。真剣な顔で色々チョッカイを出していたため、お母様に笑われた。

 とりあえず母子共に健康そうだ。

 でも噂にはなるくらいだしなぁ、怪しい赤ちゃんなんだろうけど。

 前世の意識があるのならリアクションがあって当たり前?逆に生まれたてでリアクションがとれないなんてキツそうってのが正直な感想だ。

 でもこれなら転生者でもわたしの敵じゃないなぁ。そんな余裕が生まれる。

 何もできない存在なんて怖くない。

 どうにか前世アリなのかわからんもん?


 ジーッと見つめていたら、突然視界に文字が浮かび上がる。

 「え?えええ」

 驚きのあまり声が出る。

 なんこれ?落ち着けわたし。

 心配されたのかお母様に撫でられ慰められる。高鳴る鼓動見開く目。

 どうやらこれはわたしだけにしか見えてない?すかさず文字を読み取る。

 そーかそーかコイツ転生者か。

 しかも元男とか?

 オッパイを触る手を奪い、握手する。

 「仲良くしましょうね、弟ちゃん?違った妹ちゃんかこの世界にようこそ」

 満面の笑みで睨む。

 その途端妹がビクッと体を大きく震わせたので、ちょっとスッキリした。


 「それではお母様ご機嫌用、わたしそろそろ行きますね」

 考えることが山程ある。退室し部屋を後にする。

 妹かっこ弟を見た時に文字が浮かんだんですが?

 これってステータス?流行りモノの小説でお馴染みのアレ。

 こりゃまた便利だな、久々に異世界に来たぞ気分。

 でもあれ?おかしくない?少し疑問。

 確か女神様ってばこの世界にはステータスを見るスキルはないって言ってたのにな?

 特別だとかいう好感度チェッカーなるものを与えられた気がしたんだけど、もしやその能力の範囲ってこと?

 破格やん。

 それにしても色々貰い過ぎてるような、もっとも肝心なこの世界専用スキルを除きではあるがさ。

 ありがたや、ありがたや。

 自室に戻りながら出会う人のステータスを見れないか試す。

 どうやら対象を見詰めると情報が読めるのがわかった、オーケーこれは本物だ。

 というか好感度も見れたんだけど、そのオマケ機能でステータスが見れた…って、いやいや副産物で済ませられないよ凄過ぎるよ。

 それはさておき…おかげで母や周囲の人間の抱くわたしへの好感度から、行方不明だった子どもへの扱いが微妙であることを思い知らされた。

 人の顔色をうかがうってこういうことかとシミジミした、むしろ数字でわかる分キッツイ。

 取り扱いに困られてるよねぇ、こちとら衣食住環境への慣れとかだけでも大変だっつのヨユーナシナイ。

 だからニコニコして聞き分けが良くても、好感度はなかなか上がっていなかった。

 ご丁寧に好感度の数値が低いと青、それから黄色、高くなると赤色で表示されてた。今の間だけで10人見たんだけどさ、悲しくなるね。


 ステータスというか好感度チェッカーの試運転も終わったし、予定通り自室に戻る。

 この世界に来てから姿見の前に立つことはほとんどなかった。

 でも自分を見ようと思い立った。

 …鏡にうつるわたしの目元は真っ黒だった、あんま寝てなかったからね。これはヤバイ人だわ。

 気持ち悪い子供だなぁと自覚したら笑いが出た。

 それに姉妹で偽物って。

 悲しむどころかもっと笑えてきた。

 妹?が同様の罪悪感を持ってるかなんてまだわからない、もしかしたらわたしだけがこうなのかもしれないと思うと更に滑稽だった。

 かわいそうな両親。

 騙されてるよ。

 笑えた。体中が狂喜に震えてくる、ぜーひぃ。

 苦しくて、おかしさが止まらない。

 ベッドにダイブし顔を押し付けた。

 笑いを止めたいし、これ以上他人から気持ち悪く思われたくないように。

 それにお父様とお母様にこんな気持ちの悪い娘をシャルロットだと思われるのがとてつもなく嫌だった。

 これは罰。

 きっとこの苦しみは永遠に終わらない。

 罪は消えない、ならこの罪を罪のままにしない、してはいけない!シャルに悪いし。

 こんなわたしがシャルロットだなんて思われるのが辛かった。

 本物にはなれないけど、せめて本当の娘らしくあった方がいいよね。

 ここまできたんだからもう開き直るしかないんだ。

 せめてこの罪を知らない人には、シャルロットをイイ子だって思ってもらいたい。

 それに妹がどんな前世の人間だったかはわからないけど、もし道を間違えるようだったら現世の姉として正したいし、転生を罪だと思うのなら救わなければならない。

 罪悪感に酔うより大事な事に気づいた、だからもうやめよう。

 この能力と妹も偽物だって気づいたこの日をキッカケにしよう。

 「シャルロット、わたしが幸せにしてやんよ」

 イケメンキャラのノリで自分に呟く。

 馬鹿だ、自分じゃん。

 大笑いしそうになるのを堪えながらのた打ち回っていると、誰もいないはずなのに唐突に声がした。


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