表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/15

女神様お世話になりました

見過ごすなんてできないな、弱い者の味方だぜ!

行き当たりばったりで憑依先決めました。

でも女神様からスキル貰い損ねました。

 「助けて」

 粗末なワンピースは強引に脱がされようとしたため破れかけていた。

 胸元から切り裂かれた布は大きく隙間を作り、手で抑えないと胸が丸見えになりそうに…まだふくらみがあるかないか程度だけど。

 というか商品に手を出すなよ!しかも主不在を狙った部下の所業というサイアクな場面。

 そもそも商人も違法な裏取引や不法な手段で奴隷を手に入れているせいで貧民街に根城なんか作るから、こんなヤツを部下にするんだろうなサイテーだ。

 たまたまチェックしていた女の子のその悲惨な現状に、わたしはキレそうになっていた。

 つかこの子まだ8歳て…ヤバ過ぎ死ね!こんな幼い子供を襲うなんてどんな変態だよ!

 その時のわたしは転生先を考え候補を絞っていた…んだけど、怒りに任せて憑依してでもこの子を助けようと異世界に飛び込んでしまう。

 いわゆる異世界憑依者になった。

 なのに!

 男の大きな手の平が横薙ぎに少女の頬を叩く、そこまで強烈なものじゃなかった。

 でも軽々と吹き飛んで壁に…派手な音がしたんだ。

 頭からぶつかって…血が流れて…。

 たったのこれだけ、こんなしょうもない奴のこんな一撃で少女が死んだ。

 間に合わなかったぁぁぁあ、ちくしょう。

 この世界に来て最初に感じたのは怒り、悔み、悲しさ。

 目の前のコイツが許せなかったし、間に合わなかった悔しさが辛い。

 助けたかった。

 それに生前同じような目にあったフラッシュバックで怒りが蘇る、あの時何もできなかった恐怖と悔しさが蘇る。

 あの時と違う!今ならやれる。

 反撃する意思と力を身に着けた今のわたしならなすがままで終わらない。

 コイツを殺す。

 抑えきれない怒り、熱が全身を巡る。

 コイツを殺す。

 なのに 何もできなかった。

 憑依したばかりで魂と肉体がまだ噛み合っていなかったから、それに損傷した頭部の再生中で激痛と吐き気でクラクラする。

 体を動かせないまま弄ばれる体。

 男は欲望のままに服を剥ぎとっていた、少女が死んだことにも気づかずに。そういうの全部が燃料になる、ぶちのめしたくて堪らない。

 早く、動け!いまだピクリともしない肉体に力を込める。

 でもピクともしない。

 心の奥底から咆哮した、でも声にならない。

 わたしは護りたいんだ、この子を!

 死者再生だけでもありがたいとは思う。だけど女神様もう少し力貸してよ!アフターフォローミー!怪しげな英語。

 欲張りだけど、この子を汚したくないんだよ。

 男の唇が近づく。気持ち悪い、殺す殺す。

 この子をこれ以上汚させたくない…もちろんわたしも嫌だしな。

 『乙女ゲー友達ですもの、特別にアフターフォローします。3倍再生と肉体補助』

 女神様の声が脳裏に響いた途端、わたしの体が赤く輝く。

 指が動いた!腕が動いた!全身も動くね。ニヤリ。

 一気にいくぜ!

 肘を伸ばす最小の動きで、中指を男の左目に突き刺す。

 嫌な感触。続く絶叫、反撃の一撃がくる。

 鼻血が出た、だけど男の下から抜け出せた。

 痛くないなぁ、この怒りと比べたら。

 全身が動く〜あはははは、笑いが止まらない。

 さて殺そうか。

 男は怒りのままに、でも子供相手と緩慢な攻撃をしてくる。

 コイツのプロフィールも知ってる。左肩は脱臼した後遺症で右手でしか相手を殴らない。

 女神様の豪快な量のデータ(以下『世界の知識』)が役に立つ。

 それに現時点周囲に人はいないんだよね、じゃあ心置きなくブチのめす!

 男の左膝にローキック。

 なにしろ身長差があるから、下から攻めないとなぁ。

 意気込んだ最初の攻撃で、男がアッサリ倒れる。

 お?弱過ぎ?それとも女神さまのおかげで威力アリ過ぎ?

 無様に地を這い逃げる男。

 おかげで冷静になる。

 相手が弱過ぎるとどうケリをつけるか迷うのよね。

 そもそも殺すつもりだった…じゃないと気が済まなかったから。

 それにこの世界はそんな異世界だ。特にここは貧民街、死なんて日常。

 強引に自分を納得させようとした、でも迷う。

 殺りたくて堪らないけど躊躇う。

 人を殺したことなんてないし、それに女神様が見てる。

 迷っていると、男の手が伸びてきた。

 咄嗟に投げる、呆気無いほど男は転がった。

 この小さな体でよく動けたな。前世の体術のノリだったけど…。

 肉体補助の影響はかなりのものだ、おかげで助かった。女神様ありがとうござます。

 『どういたしまして。あと殺してもなんとも思いませんよ』

 お、おう。さすが高次元生命体だけに考え方も高次元だね。前世の常識だとなぁ忌避感だよ苦笑。

 『女の敵ですし?やっちゃえ』

 軽く言われた。でもね一般ピープルなわたしには敷居が高いよ。異世界に来たばっかしだし。

 『それではもいでしまうというのは?』

 たぶん頂いた肉体補助の効果があるからさ、もげるんだろうけどさー感触的に嫌です、というか過激っすね。 

 だけど…こんなヤツにこの子が殺されたのかと思うと…やっぱ殺そうかな。

 『それではツブシましょう、そして殺しましょう。…邪神の間違いなんじゃ?とか思わないで下さい』

 いやいやいや邪神ぽいよ?ていうか思考が言葉になる前にツッコむとか早過ぎ。

 『第一邪神なんていませんわ、人間だって同じでしょう?善悪や手段の良し悪しの範囲内の個性ですよ』

 個性て…ツッコんだら負けだ、やめよう。

 でもまぁ躊躇いもあるけど殺すのは後腐れそうだし問題が起きそうだからぁ、とりあえずタコ殴りかな。ヘタレですまんごめん。

 男に触れるのは嫌悪感があるのでエモノ…テーブルの上に置かれた男の剣を見つけ素早くゲット。

 突き技で滅多打ち〜股間は特に集中打。

 もぐ代わりに潰しちゃえ。

 トドメはフルスイングで剣を叩きつける、プチッとな。

 男は動かなくなった。

 でも油断せず、素早くロープで縛る。

 都合よくロープがあったけど、コイツもしやわたしに何やらする気だったか?と脱線しそうになる。

 たぶん生きてる?刃じゃなければ死なずでござるよ、怒りと恨みでやり過ぎたけど。

 深呼吸。

 落ち着いてる場合じゃないけど、来ちゃったんだなぁとシミジミしてしまう。

 手をグーパーグーパー。

 この子になっちゃった。

 神様まだ聞こえる?この子の魂はどうなったの?

 『資源に還りました』

 早くない?ていうか言い方がストレート過ぎて怖い。

 『まだあなたの魂がこの世界外と繋がっていたから3倍再生と肉体補助はできましたが、直接関わるのは無理なのですよ』

 もうひと押し!サービスとかダメ?

 『残念ながら』

 そっか、ごめんね贅沢言って。それに助けてくれてありがとう。

 『アフターフォローというものですね…そろそろお別れです。あなたの魂が完全にその世界に定着しつつあるようなので』

 色々ありがとうございました。

 『そういえばあなたの推しマンガなんですが続きを見てきました』

 「え?どうなったの?」

 だけど返事はなかった、しばらく待ったけど返事が来ない。

 まぢか!?

 なんか最後に嫌がらせをされたような?

 『失礼な』

 いたんかい!

 『ハッピーエンドになりましたよ、それでは!』

 言い切るように声のボリュームも小さくなって終わる。

 いやいやいやそれやっぱり嫌がらせだから!逆に気になるからぁ!


転生先候補の姉になってしまった、助けられなくて乗っ取る形で…鬱るんです

女神さまのアフターフォローがスキル頂くより凄かった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ