死後も時間は過ぎていた、実感したわ
「異世界転生、憑依、転移どれに?性別の変更、人間のまま人外、あとはスキルとステータス等いかが致しましょうか?」
キャラメイキングって苦手です。
ゲームだと顔選びだけでウンザリ、ステータスとかなんでもいいよ。とか言いつつ悩んで作るけどさ。
転生と憑依と転移ってどう違うの?
「転生は誕生から。憑依は亡くなった方と魂を入れ替わるあるいは魂の併存。転移は生前のまま赴いて頂くことになります。あとスキルを贈らせて頂きます」
なんか小説でよくある奴だ。まさか自分がなるとはなーアハハ。
「転生には多くのスキルを与えることができます、ただし成長度合いで使えるか否かは決まりますけれども。転移の場合はスキルに応じて肉体改造がされます」
肉体改造。なんか笑ける。
「はい。スキルを扱うには高ステータスが必要なので、生前の肉体に後付する形になるので、いわゆる改造になりますね」
改造人間というとネタでしか知らんけどベルトとマフラーの人?違うけどつい思っちゃう。
「憑依ですと、その人物の肉体及びステータスに応じたスキルしか選べません。またもともと持っていたスキルは継承できます」
…とりあえず両親への愛情を褒められたので、新しい両親はいらないかなぁ。選択肢をバッサリ。
それに前世の両親を覚えてるのに、新しい両親て申し訳無くない?
というわけで転移。あまり深く考えずに大義名分で決定。
スキル選び開始…めんどうくさい。
だけど死活問題。
女神様の許しを得て試しまくる。
「あはははははは」
スキルによって変化するわたしの体。
マッチョになったりモヤシになったり、人外ヤバかっこヤバキモもある、性別変えてナルシー!ウチイケメンじゃぁん、もちろん超巨乳もしたよ。
遊びまくる。女神様はニコニコと見ていらっしゃる、付き合いいいね。
さてさていい加減大まかに大別して考えよう。
近接系、剣とかの武器な。腕太っ、てか全身がガッチリだわ。ヤメヤメ。
魔法系、細マッチョ。魔法の行使にも体力必須のようです。悪くはない〜んだけどさ。
そもそも戦いに参加とかイヤ。
んじゃ治癒系?ところが宗教に属さないといけないぽい。
本物の神様見た後じゃあねぇ…人同士の宗教からくる争いとか馬鹿じゃないの。
なんとなくキャラメイキングの方向性が見えてきた所に、不穏な女神様の小声が聞こえた。
「どうされました?時間かけ過ぎですか?」
「そうなんですよ時間かかり過ぎです!あなたのご遺体が火葬されてしまいました」
今まで丁寧だった口調の中に、微妙な逆ギレ入ってる。
ってそれどころじゃないよ!
「それってもうわたしの体が失くなっちゃったってこと?」
「はい、転移は無理ですね。死んでいても再生可能でしたがこうなってしまうと無理です、存在が別のモノになってしまったので」
なんだかショック。
死んだ自覚もあるのに、体が失くなってしまったって聞くのはやはり辛い?なんか落ち込む〜。
というか時間かけ過ぎたから自爆?
ということはお葬式も終わったってことやよね。
みんなどうしてるかな?家族や友達のことを思い出した。
「通常はご覧いただけないのですが、ご覧になりますか?」
どうやら純粋にミスったぽくて、申し訳無さそうに提案された。ご気遣いありがとうございます。
というわけで女神様同伴で、死後初帰宅。
死んでから初めての現世、今までよくわからん空間にいたのよね。
でもやはり死んだ身なので現実感がないっていうか、夢の中よりも他人事っぽい変な感じ。
私の部屋に、両親と妹と弟それに友達が3人いた。
和気合い合いとお寿司を食べながら、なんで!か?わたしの乙女ゲーをしていた。
お?おおおおお恥ずかしいんですけど。曝け出すない!なにしてくれちゃってるのこの状況?
10畳ある部屋中にわたしの宝物が取り出されていた、墓荒しかよ!
親に見られるとか死ねる。というかこれなんかニュースで見る奴だ犯罪者の押収されたブツ一覧みたいなんだ。
父よその枕を使うのはよせお尻に敷くな殺すぞ、母よ18にならずに申し訳なかったから見るのヤメテお願いします。
弟よ口から魂が漏れるような顔しながらゲームすんな!
還りたい帰ってくるんじゃなかった。
妹もお姉ちゃんとは(カップリングの)趣味が合わないという理由で、フェイバリットをマイ友に譲ったりしている。
というか妹もそのゲーム知ってたのか、死んで初めて知る事実。もっと相手しとけばよかったかなぁ。
いやバッサリ盗掘選別すんなや。
一方で学校の鼻つまみ者マイルドヤンキーもしくはなんちゃってヤンキーな友達は狂喜してくれてる。
羨ましがられてたもんなぁ、いいよ形見分けだ。持ってけコンチキショー。
布教されたししたしで仲良くしてんだけど、今思えばヤンキーというかこのテの趣味のイタイ集団だな。
お前らも早めにヤンキー卒業しとけよ、後でイタイぞ。
そういえばグッズ買い用とか学園外での交流用に、黒髪ショートのカツラで偽名してたんだよね。そこでの付き合いのあった連中にも形見分けしたかったな。
別キャラもやってた…つくづくイタイな自分。
このキャラ好きだったなぁ、グッズ達もレア、苦労したものには愛着が。
「これが乙女ゲーですか?」
興味津々な女神様。だけど応える余裕無しで放置。
その後も盗掘されまくるやらネタにされるやら。
形見分けって、される側から見たら、思い入れの差から辛いもんがある。というか趣味と性癖暴かれるとか死ぬ。
走馬灯は終わったのに思い出が蘇る。思い入れがあると、ちょまぢで血の涙る。
死んでるからしょうが無いとは言え、いとかなし。
それでも両親はわたしの趣味の宝達を悪い風には言わなかった、それだけでもよかった、よかったか?
それにみんな笑ってた、たまにホロリと悲しんでくれたし…もういいや。
妹よ後は任せた。微妙な間柄だったけど、悲しんでくれてありがとう。ここにいない祖父母もまぁ…死ねサンキュ。
もう成仏できそう。むしろ消えたい。
「勝手に成仏しないで下さい」
そうでした。わたしはこれからもわたしのままなんだっけ。
それに今なら繰り返す走馬灯も乗り越えられそうだ。
「確かに魂が強くなってますね。死後ですのに…興味深い」
女神様にも認められた、もう笑いしか出ない。
というわけで転生か憑依になりました。
親元って選べるの?
例えば今は平穏な立場にいても将来的には没落したりとか。
流石に女神様も未来のことはコントロールを失った世界なので断言できないと、しかも複数の転移転生者がいるのでわからないと仰る。
「そういえばわたしの他にどれくらいの人達がその世界に行くの?」
「私を含め4柱に選ばれた31人です。あなたと同じ日にお亡くなりになった方々ですね」
結構な人数が行くんだね。
ところで女神様何してるの?
「乙女ゲームですけれど」
マヂか?
何処から手に入れたかは知らないけど、流石は神。
ゲーム初心者にはレクチャーいるよねぇという訳で、一緒に楽しんだりするわたし達。
段々のめり込んでいく女神様に伝道師気分。
死後も楽しめるなんて思わなかったよ。
だけどしばらく遊んでいると女神様に締め出された。布教やや失敗。
「趣味というものは人それぞれのものです。それぞれが切磋琢磨し集うことで感動が生まれるのです。私には私のオシが生まれました。それよりもあなたはスキルを決めて下さい」
参考にと異世界のデータを渡される。
脳の中にダウンロードってこんな感じ?ていうか多過ぎない?
自然、生物、歴史これはわかるとして、生命体の名やプロフィールまでって脳が追いつかん。いるのか?
女神様多過ぎるよ!
生身なら燃え尽きてたよ。
おかげでどういう立場がいいかの目星はついた、ただし人間で。やっぱ人外はやめとく。
どれに転生しようかな?
候補を絞っていると、たまたま気になる人物の情報が出てきた。というかかわいそうだなぁという存在を見つける。
王家の血を引く公爵令嬢。でも幼少期に事故で記憶を失いその上行方不明になって貧民街で生きるハメとか…なんて物語ポジションな。
この子の妹を転生候補に見てたら、両親の会話から気になったので今後のためにチェックしてたんだよ。
そしたら危機的状況にいた。
ロリに狙われ、大ピンチ!密室で男に襲われていた。
つかロリ過ぎまだ8歳変態だ!
これってどういう状況なのかを確認。てかライブ中継してるうえに、女神様のダウンロードで異世界の現状把握バッチシなんよ。
どうやら貧民街で裏取引をしている奴隷商の不在時に、その手下が勝手に商品であるこの子を襲おうとしているらしい。
助けたい!こういうのは大嫌いだ。
転生は実は気が進まなかったんだよね、この子を助けるのに憑依にしよう。
「女神様!」
「乙女ゲームは素晴らしいですね。あなたが死しても想いを残すだけはあります」
あれ?あ、ハマリはじめだ、これはイカン。
女神様のマシンガントークがはじまる。そしてオシのゴリ押し。
ちょ、時間がないんですけど!アノ子がヤバイ。会話もしたいけどさーヤバイって。
焦るわたし、源泉垂れ流しの女神様。
「異世界憑依でアノ子に!」
女神様のチラ見。何故か満面の笑みが出てる?
「いいですわぁ。アノ子にいたしましょう。是非乙女ゲーを開拓してくださいね」
「どうやって?ゲーム機ないよ。中世風ファンタジーだよ」
「アノ世界にはないスペシャルなスキルをさしあげます。好感度チェッカー!行くのです、この際ハーレムも許可します」
アカン湧いてる、イミフメイ。
意識がボヤケ出す。ヤバイこのまま送り出される?
ちょ待てよ!それもいいけど生きていくためのスキル下さいよ。他の人が色々貰ってるの知ってるよ?せっかく選びに選び抜いたのに!
異世界データをダウンロードされたため色々知った、この世界戦闘スキルないとヤバイ。だってもうすぐ…!
「RPG的なスキルくださいよ!」
これが15年で終わったわたしの最後の声だった。