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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

え、は、お前…ああ分かった、呪いだな。(現実逃避)

作者: juggler

「報酬だ。次の仕事が入ったらまた連絡する。」

ジャラリ。重そうな音を立てて袋が投げられる。

妙ににやけた男達。その中で金貨を数えていた銀髪が、ふいに顔を上げた。

「おやおや、これだと…ちょこっと足りませんよ。」

眉をひそめ、吐き出すように答える。

「悪かったな、次の仕事の前金に上乗せしといてやる。さっさと失せろ。」



おや、今日は乗ってくれないんですかい。とおどけた男を、鋭く睨みつけるアスクル。

その男は物ともせず、ついでに戯けた調子で続けた。






「そういや、新しく情報が入ってきたんですけどね。聞きたいですか?

聴きたいですよねえ。なんせ、この国の宰相様(・・・)に関することですから。



ご自身の噂話、聴いておくと便利でしょう?」



アスクルは何時ものように腕を組み、微動だにしない。

クスクスと笑いながら、銀髪は、世間話のように話し出す。





「さてさて、この国の宰相はクシスト公爵家のご子息。そう()では回っているようですが、肝心の公爵家には現在、息子は1人も居ないんですよ。養子、隠し子も居ない。ですが現在の宰相は、クシストの姓を名乗っている。


そうですよねえ、公爵令嬢、アスクル・クシスト・ディアナ殿。」




(何故!?何故……協力者?甘く見たつもりは無かったけど、やっぱり護衛の一人や二人…だめだ。こいつらにそれは通用しない。それに。)



「それを言いふらしたからと言って、お前に益はあるのか?私にはなんの損害もないぞ?」


(こんな下級が喚いたところで、ケイル…王太子殿下の耳に入るわけじゃ無い。それならいいんだ。弱みを決して悟られないように。)


「あら、そんじゃもう一つ。この国の王子殿下と親友の宰相様のことを、王子は確かに"彼"と呼んでいる。つまり男だと思っている。

小さい頃からずっと一緒。しかも美形。何度か助けられた事もあったそうですねー。

どんな感情を抱いているか、これだけの事実を流しただけでも想像するのは容易い事です。しかも、全幅の信頼を寄せる親友が、まさか女だったとは…ああ、可哀想に。ショックでしょうね?

さらに、隣国に流せばこれからの婚姻関係も…あらら。」





ギリッと唇を噛む。それを肯定と受け取ったのか、銀髪はじっとしているアスクルを壁際に追い詰め、みぞおちに一発。


「ガハッ………何を…ひっ……辞めろ!!その手を退け…ひぃっ!」


「まさか、女一人でここへきて、無事に帰れると。弱みも握った事ですしね♪」




近くにいた男がアスクルを押さえる。ローブの下に着ていたブラウスをはだけさせ、首筋に顔を埋めた。拘束の手を緩めながら。

男が顔を上げた後、目の前からアスクルが消えたのに気づくのと、後ろに回りこんで剣を振り上げた動作は同時だった。



首筋に綺麗な太刀筋。着地の反動で、壁を使って上を取り一気に男達の輪の外に出る。

目の前の数人を薙ぎ、剣についた血を振り払いながら口を開く。





「予定が狂った。仕方ない。正式な騎士団で殲滅させてやろう。」



男達には、月を背にして立つアスクルの目が、とても美しく、恐ろしく見えたことであろう。





城への隠し通路へ入った。ここまで来れば。



「たす…かった……。」


怖かった。悲鳴を上げそうになった。でも、自分がそれを許さなかった。

ケイルの手助けをする、そのためにはここで折れたらダメだ。



通路を歩きながら、これからの対応を考える。




「あのグループはもう少し使うつもりだったけど、もう切り捨てる。騎士団による殲滅作戦は変わらないとして、団長に証拠を持っていけばすぐに動く…いや、招集をかけて装備をして、情報を集めるから最速半日は掛かるか…」







大丈夫。普段通りに。私はアスクル。アスクル・クシスト。この国の宰相で、ケイル・シャリア・フィールフ殿下の友人……そう、友達だ。


親友に、何か別の親しみが湧いたとしても、決してこの関係は壊してはいけない。






















だから、勝手に自分の中で想って、慕って、怖さを押し込める支えにするくらいなら、大丈夫。















なはずなのに。







「……あれ、アスクル?良かった。もう少しで仕事場まで迎えに行こうと思ってたんだ。まったく、根を詰め過ぎると体を壊すぞ。」



ああ、どうしよう。なんで本人居るんだよ。もう寝てろって。

おまえこそ体壊すぞ。



「……うん、ケイルこそ、しっかり休めよ。」


「アスクル…どうしたの?」




ちょっと、声がおかしかった?やばい、追いかけてくる。



「そういえばそのローブ…1日籠りっきりなのにどうして裾が濡れる。おい、アスクル。ちょっと待て。」


早く。追いつかれないように。撒けなくてもいい、せめて顔を見せないでくれ。





「おい、おいアスクル!」

ちょっと乱暴に肩を掴まれた。そのまま後ろに振り向かされる。


「俺の目を見ろ!まったく、どうして逃げるんだ………」




なんだよ、こっちはまだ涙堪えてんだぞ。

そんな固まるなよ、泣いてるわけじゃ無いんだから。




「おい、何があった!?ブラウス破けてるぞ!


って…お前、怪我してたのか?いつ!俺ら一昨日手合わせしたよな、まさかその時からか?

というか包帯の巻き方も…お前下手だな、なんで俺に言ってくれなかった?巻くくらいなら手伝ってやったのに。


しかもなんか首からも、血が……え?………」





ああ。服直すの忘れてた。





「・・・誰だ、誰にやられた。いや、まあ今はいい。とにかくすぐに風呂入れ。

ああ、でも怪我してるのか。いいか、部屋に真っ直ぐ戻れ…いや、一緒に行く。そのままじっとしてろよ。体拭くものを持ってくる。」


「いらない!ケイルこそさっさと部屋に戻れ!」


「お前なあ!心配してる奴に向かって戻れなんて、素直に聞くわけないだろ!部屋で落ち着いてから聞こうと思ってたが、ダメならここで聞く。

アスクル、お前誰にキスマークなんて付けられた!!」


「誰でもいいだろ!お前には関係ない!………あ…」




まずい。そう思ったけど、もう止まらない。



「ああ、そうだ、関係ないんだ!だからさっさと部屋に戻れ!

しばらく手合わせも無しだ!この…「分からず屋!大体怪我だってどうしたんだ。そんなに血も滲んで無いし、包帯といても問題なさそうだな!ちょっと動くなよ!」


「やっ…やめろ!首を飛ばされたいのか!」

「お前の剣に反応出来ないほど鈍ってない!というか関係ないなんて……そんなこと言うな「ガシャンッ!!」




「「「え?」」」



手が止まったのをいい事に、素早く抜け出す。

そこでふと、さっきまでの状態を考えてみる。



はだけたローブの下に破れたブラウス。嫌がる私を壁に押し付け、ケイルがサラシを取りかけていた。けっこうはしたない格好。サラシ取れかけ。あ、やばい、ギリギリ誤魔化しがきく…な。

極め付けに首のキスマーク(があるらしい?)
















いろいろ不味い。







「うわああぁぁぁぁ!!変態!ケイルの馬鹿野郎!何してやがる!!」


「?………ああ、悪い。頭に血が昇って。よし、部屋行くぞ。」


「・・・・・・・・・・・・・・・」


「あー、もう…分かったよ!行きゃ良いんだろ!その代わりさら…包帯はとらねえからな!」









ケイルの大バカバカバカバカ馬鹿野郎!警備中の騎士君に見られたじゃねーか!






「成る程。つまり人違いでケンカ吹っ掛けたら投げ飛ばされ、武器庫の外にたまたま並べてあった剣のところに突っ込んで、宮廷医師に包帯巻いて貰ったが朝起きたら地味に血がにじんでいて、時間も無かったので自分で巻いて来たと。

ついでにその首のやつは、虫に刺されていたところ、使い魔が威嚇の為(?)に襲いかかってきて、そうなった、と。」




この説明で納得すると思ってる所が、こいつの可愛いところだ。


なんて思えば、少しはこのイラつきも収まるのだろうか?






「…とりあえずお前の意図だけは伝わった。とにかく早く身体を拭いて寝ろ。面倒くさいから俺もここで寝る。」


「……………………………チッ………私に床で寝ろと?うわー、親友に対してその扱い酷くない?」



寝るまで見張らないと逃げ出すとか、本当に猫か、お前は。というか。


のろのろと布を手に取り、拭き始める。

……?お前、親友の前でくらい、服脱いだっていいだろう。別に刺青くらいじゃ驚かないぞ。父さん(前国王)入れてたし。



「だいたい、なぜ床で寝る必要がある。無駄にデカいベッドなんだから、有効活用するぞ。」

「……そう。じゃあ侍女達のリネン室でも行って枕根こそぎ取ってくるか。」

「誰が2日で睡眠時間4時間の親友にまくら投げしようと言った。寝るぞ。」

「…仕事まだ残ってる。」


それは最近摘発が多くなってきた騎士団に文句言ってくれ。


「騎士団長や魔術師長にも、本来は頼まない外交内政についての仕事振ってるんだぞ。

ほら、だいたい拭けたらもう横になれ。着替える暇があったら寝ろ。」



ああ、もう。違う。とりあえずお前が倒れたら俺は…俺は?…………困る。そう、困る。

心配になるし後悔もするだろう。だからもう寝ろっ!







あまりにも素直に横にならなので、無理矢理布団を被せて体重をかけてやると、しばらくして寝息が聞こえてきた。



「はあ………アスクル、お前ちょっと痩せ過ぎてないか…」


布団を被せたとき、あまりの細さにギョッとしたが、確かにアスクルの身体を触っていたわけで。

自分の手を見ても、まあ完全に武人の|シュークス(将軍)や|カスキリャ(騎士)よりは細く綺麗なわけだが、やはり剣を握る手、腕なのだ。



そっと布団の上から肩に触れてみる。さっき廊下で掴んだときはそんなに違和感が無かったが、あれはローブの所為だろうか?

あまり褒められた行為では無いので、躊躇いがちに肩、腕、足首に触れていく。







乱暴に扱えば壊してしまいそうなほど、脆く感じられた。




「いやいやいや、ありえない。あのアスクルだぞ?俺より身長が低いくせに、剣と魔法で互角に戦える、あのアスクルだ。

最近書類仕事ばかりで、お前も俺も疲れているんだ。」



さあ寝よう、と無理矢理変な思考を押し留め、布団へ潜る。

目の前にいるぬくぬくした柔らかい物を抱き締めながら、そういえば最近は魔法戦術が多くなってたな…なんて考える暇もなく。

3日で5時間睡眠の王子殿は眠った。














起きた。完全に起きた。


やばい、なんでだ?アスクルの顔が一瞬、物凄く可愛く見えた。

俺の腕の中に収まって、気持ちよさそうに寝ていたアスクル。不意にく…くちづ…いや、断じて違う。顔をよく見ようと思って近付いたところで、目が覚めた(われにかえった)




「ほんとうに、どうしたんだろう。」


頭を軽く振って、ベッドを降りる。時刻は午前5:00。侍女達はもう働き始めているころだ。

そういえばリディム(従者)に無断で外泊した。怒られるだろうが、まあ妙にスッキリとした朝だし、そんなに気に病まなくても問題ないだろう。



ついでにその下手な包帯を巻き直してやろうと思い、取り掛かった30秒後、驚きの悲鳴を上げず、アスクルを起こさなかった自分に拍手を送りたい。


















アスクルの包帯を綺麗になおし、布団をかけ、部屋を出る。

この時すでに数名の侍女にキッチリ目撃されていたのだが、全く気づかない程は動揺していた。





包帯を同じ場所に何度も巻いているからこその膨らみかとばかり思っていたが、中身があった時は焦った。


いや、でも。まさか、アスクルがおん...男じゃないのか?

しかし、そう言われるとそうかも…しれない…訳が無いだろう!何を考えている、俺!


「あー、殿下!まったく、何処へ行ってらしたかと思えば!朝帰りですか。で、ちゃんと避妊したんでしょうね。」


煩い。

大体、幼児の頃からの付き合いだというのに、ずっと勘違いしたままというのもあり得ない。

夜会では必ず女に囲まれているし、ドレスなんて着た所は見たことがない、というかあいつ、正装は軍服しか着てないんじゃないか?



「もしもし、でーんーかー。答えて下さい!というか後始末するこっちの面倒くささだって考慮するように!ってクシスト宰相殿に言われていたでしょう!

で、どこ行ってたんですか?」



煩い。「アスクルのとこで寝てた。」


そうだ、何かの間違いだ。20年来の親友の性別を間違うなんて。

はっ、まさか、呪術じゃないだろうな。変な呪いで一時的に、身体を変化させられたのか。ああ、そうだ、それが一番の可能性だ。




「……殿下、ディアナ様に手出したんすか。・・・・・この外道(ボソ」


「は、ディアナって誰だ。」


「え、あんたまさか、男だと思ってディアナ様を………ああ、ヘディウス(前国王)様に報告しなければ。あとティアネリア(前国王妃)様にも…。殿下、あんたがまさかそういう趣味だったとは…言ってくだされば良かったのに。

というか、あんた親友襲ったんすか。いつか国内の人間に暗殺されますよ。」




ん、ちょっとまて、なんか凄い話になってるんだが。


「だからディアナって誰「貴方がアスクルアスクルって言ってるアスクルさんご本人のことですよ。マジで馬鹿なんすか?」・・・」












「ははは、何言ってんだリディム、ディアナは女名だろ、アスクルは…「手ェ出したんでしょう、分かりきったこと聞くなこの変態。」











・・・・・・・え。




「もういいや、さっさと部屋戻りますよ。言っときますけど、僕一応既婚者なんで。早く愛しい人を起こしに行かなきゃ。変態に構える時間は少ないんですよ、ってなわけで早く歩く!」














終わらせ方中途半端ですいません。

これ以上書くとほんとただの駄文になってしまうので……勢いだけで書きました。

反省はしていません。後悔はしています。

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