同級生
「翠くん、大ちゃんが迎えに来てくれたよ」
「あ、うん。行って来ます」
玄関に行くと、同級生の西田大吾が立っていた。
「おはよう、翠」
「おはよう、大吾…」
「どうしたの? 気分でも悪い?」
「そんなんじゃない…」
僕は靴を履いて振り向くと、
「行って来ます」
と、玲子さんに言った。
すぐ後ろに鷹也が立っている。僕はどきりとして目を逸らした。
「気を付けてね。遅くなる時は連絡してね、迎えに行くから」
「ガキじゃないんだから、平気だろ」
鷹也が呆れたように言って、玄関先に出てきた。
迎えに来た大吾が目を見開いた。
「だ、誰……?」
「こいつの兄貴だよ」
偉そうな口調で言う。僕はびっくりした。
「友達の大吾だよ」
「ふうん…」
鷹也は大吾の事をじろじろと見た。大吾は高校一年生にしては背が高い。身長は170センチ以上ある。
「大吾、行こう」
「う、うん。あ、小母さん、翠は大丈夫です。俺がそばに付いていますから」
「用心棒なのか?」
鷹也が呆れたように言った。
「だったら何ですか?」
大吾がむっとしたように聞き返した。
「いいから、行こうよ。大吾」
僕は大吾の袖を引いた。早く家を出たかった。
「行ってらっしゃい」
玲子さんが手を振る。むっつりした鷹也が見えたが、僕はうつむいて外へ出た。
「ねえ、翠、本当にあの人お兄さんなの?」
大吾が心配そうに言った。僕は、一瞬、びくりと肩を揺らした。
「う、うん」
「えーっ、大丈夫なの?」
「今のところ、平気…」
「もし、何かあったらすぐに言ってね」
「うん。サンキュ」
少しだけ笑うと、大吾も笑い返した。
「傘は持ってきた?」
「うん。カバンの中に折りたたみ傘入れてる」
「なかったら、俺の傘に入って帰ろうね」
「サンキュ」
でも、雨は降らないんじゃないかな、というくらいすっきりとした青空だった。
視線を感じて顔を上げると、大吾が見ていた。
「翠、本当に大丈夫?」
「大丈夫だって」
実を言うと、僕は年上の男の人が苦手だった。でも、鷹也の事が平気なのはなぜだろう。ふと、そう思った時、どきりとした。