第4章――[舞]自分の心と折り合うこと?
第4章――
[舞]自分の心と折り合うこと?
舞)
(あまり買わない種類のファション雑誌も買ってみよう!
見てみたいって思ってたものもまとめて買おう!占い師のオバサンが言ってたもん!
そんなことやっても意味無いとか、こんなことしてていいのかなんて思わなくていいって!
ワー、これなんかいいな〜、でも、こんなスカーフ巻けばもっと良くなるのに・・。
街を歩いている人の服装にも興味が湧いてくるようになっちゃった。
この人、そのシャツなら長い髪を結ったほうが合うよ!
もう少し大きめのバックを持てば、全然雰囲気が変わるだろうなー。
確か私もこんなの持ってたな、どこにしまったっけ・・。)
あ、これこれ!
この丈短くして前を開けて・・、このスカートの形を変えれば・・・、あ、いいじゃん!
これなんか袖を短く作り変えれば、ちょっとしたオシャレ着にもなるな〜。
うゎあ、もうこんな時間!(あっという間に時間が過ぎていく。
でもいろんな服をもっといっぱい欲しい。いろんなバックや靴もいっぱい欲しい。
それらに囲まれて家の中で鏡を見ながら着飾ったり髪型変えたりしながら時間を過ごしたい。
でも、買ってきた服をいろいろ着てみても既製品だと何か物足りないなぁ。
もっと襟の形を変えてみたいし・・。
どうすれば、こんな難しいところも作り変えることができるんだろうか・・。)
よし、前みたいにデザインを描いてみよ!
(こんな服なんかどうだろう。おー、なかなかうまく描けてる!
作ってみたいな〜、自分だけの服。着てみたいな〜。)
自分の思い描いた服を作るのって想像するだけでやっぱり楽しい!なんだかワクワクしてきた。
(こういう世界でずーと生きていけたら楽しいのにな〜。
この自分の好きな世界にずーっと浸っていたい・・。
今までその気持ちを押さえ込んでいたのかもしれない。)
この服はこの角度から見るのが一番いいかな〜。
(本当はこんなことをすごくやりたかったんだ。
オバサンに言われたように、うまく話せることや元気で明るくすることに
固執しすぎていて、こんな自分を忘れてしまってたんだ。)
あ、彼からの電話だ。
「バイト早く終わったから今からそっちに行こうか?っつーか、もう近くまで来てるんだけど。」
「うん、待ってる。ヒャー、どうしよう。こんなに散らかってる。早く片付けないと・・。」
彼)
こんなに服いっぱい散らかして、なにやってんの?誰かとデートでもあるの?
舞)
チョッと着てみてるうちに、どんどん出しちゃって・・、こんな風になちゃったの。
彼)
お前って、ほんと何考えているかわからないとこあるよなー。
何も決めれないっていうか、優柔不断っていうか、もっとちゃんとしろよ。
舞)
ごめん。急いで片付けるからゲームでもしてて。
彼)
ファッション雑誌なんかいっぱい買っちゃってどうしたの?服が好きみたいだけどさー、
たまにおかしなカッコする時あるじゃん、お前って。普通の女の子らしいのが一番良いんじゃないの?
舞)
うん。だから、いつも会う時は普通の女の子らしいカッコしてるでしょう?
彼)
俺に会う時、そんなこと考えて服決めてたの?それにしては、その服ヤバくない?って思う時もあるけどな。
舞)
言ってくれれば気を付けるのに。今度そう思ったら言ってね。私、ちゃんとするから。
何かご飯作る?それとも外食べに行く?
(あ、彼、機嫌悪そう・・。この服が良くないのかな?服いっぱい出していたからかな?
何か話さないと・・。機嫌良くなって欲しい・・。どうしよう・・。嫌われちゃったかな?)
あ〜疲れた、何か今日、彼の機嫌がずーっと良くなかったみたい。
服はまだ散らかってるし、こんなに出さなきゃよかった・・・。
(さっき夢中で書いたデザインもなんだか今見ればそれ程良い感じでもないし・・。
なんかまたあの一人取り残されたような孤独と後悔を感じてしまう)
これ以上、服のことなんかやってたら、彼から嫌われるだろうなー。
(占い師のオバサン、人の顔色を気にする時間とエネルギーを減らして才能を引き出す時間を増やしていけばいいって言ったけど、今さら自分なんかが服飾やデザインやったって、しかたがないように感じてきちゃう。)
やっぱりこんなことなんかやめようかな〜。
友人と渋谷へ
ユウ)
ねぇ、舞。兄の結納があって、ちゃんとした服を買って来いって言われたんだけど、
付き合ってくれない?舞はセンス良いし、いつも自分に合う服をわかってるなーって思うから。
ケーキおごるから来てよ!
舞)
うん!いいよ!(ニコニコ)ユウはスタイル良いし可愛いし、私なんかが見ていいの?
ユウ)
ここのブランド有名だよねぇ。でも、私に似合うかなー?中に入ってみる?
舞)
ワー、似合う、似合う!落ち着いた雰囲気で可愛いから良いと思う。本当にユウに合ってるよ、その服!
ユウ)
ほんと?舞って、なんでも悪いようには言わないからなぁ。アレ?舞、どこ行くの?
舞)
(ワー、布の香り、いい匂い。仕立てが丁寧だな。
色使いもきれい!あ!こんな服!私も着てみたい!こっちのもいいかなー。)
ユウ)
まっ、舞・・・。じゃ次、見に行こう!
舞)
(ここも良いなー。ビーズが使われてて可愛い。こんな細かい所も工夫してある・・。)
ユウ)
舞、これはどう?似合う?っていうか、さっきからどうしたの?いつもの舞と違うけど・・。
舞)
えっ?ちゃんと選んでるよ。私なら、ウインドウに飾ってあるスカートと、このジャケットが合うと思う。インナーは前の店の白いのがスッキリしているかな・・。
ユウ)
ホントに?じゃ、店員さん。ウインドウに飾ってあるスカートとこのジャケット試着させてください!
舞)
(あー・・。布、デザイン、色、細かく丁寧な作り方、もっといろんな事を知りたい、勉強してみたいなー。)
ユウ)
舞!どう?お金持ちがさり気なくお洒落してるって感じでイイねー!これに決めた!
店員)
あら、本当。この組み合わせって本当に合いますね!
舞)
結納でお兄さんの奥さんになる人より目立たないようにして、でも存在感があるようにって考えてみたんだけど・・。
ユウ)
いろんな服の中から、パッと合う服を見つけるなんて舞ってすごい!!これって才能だと思うよ。
舞)
そんなことないよ。大げさだよ。才能なんてナイナイ。
(こんなことが才能?それよりも、たくさんの素敵な服に囲まれた、
こんな世界の中で生きていけたら楽しいだろうなって思っているだけなのに・・。)
ユウ)
ケーキ美味しいね。私、食べることだったら詳しいんだけど・・。
今日はありがとう。この服を早くお母さんに見せたいから帰るね!
舞)
・・・。
(ホントは喜んでなかったんじゃないのかな。なんか勝手に私が決めてしまったようでユウは無理してたんじゃないのかな?
本当はあの服、嫌だったのかも・・。自分の好きな服ばっかり見てしまって、もっとユウの意見を聞いてあげればよかったんじゃないのかな。
あ〜、また後悔と孤独感だ。これで嫌われたんじゃないかっていう不安感・・。
彼の時も友達の時も、自分の好きな服のことでこの気持ちを強く感じてしまう。
やっぱり私なんかが服飾やデザインに興味持ってもいい方向にいかないように感じてきちゃった。あー、落ち込んじゃう・・・。
やっぱり、こんなこと考えるのやめようかな〜。そうだ、ここから近いから、またあのオバサンに聞いてみようかな。)
占)
あら、どうしたの?深刻な顔して?元気ないわね〜。手相見せて・・。
ふむふむ、あらこんなに線が濃くなってるよ。
ゆっくりやらなきゃダメって言ったのに、早く進め過ぎちゃったんだね。
舞)はい、自分の才能を信じることってオバサン言ったけど、
やっぱりそんな自信ないし、やめようかなって思う気持ちのほうが強くて・・。
それで相談に来ました。
占)
どんなことがあったの?良かったら教えて。
舞)
服の世界にいると、この世界の中で生きていきたいって思う自分はいるんです。
でも彼はそんな私を好きじゃないみたいだし・・。私は彼にもっと愛されたいの。
こんな興味は捨ててでも、もっと好きになってもらえる自分になりたいって思うんです。
今も友達に服を選んでって言われて一緒に渋谷に来たの。服を見てると、友達のこと忘れて夢中になっちゃって・・・。
これが良いいんじゃないって相手の気持ちも考えないで決めてしまって友達に迷惑かけちゃったんです。
その子からは才能あるって言われたんだけど・・、今のでたぶん、嫌われたと思う・・・。
占)
そうだったの。彼はあなたが元気で前向きに気を配ってくれて、
彼のいうこと聞いてくれて、大切に扱ってくれるあなたを好きなのよね。
あなたもそんな自分だから好きになってもらえると思ってるしね。
だから彼に愛される事で甘えられる喜びと安心を得ることができると感じてるのね。
だから、そうじゃないあなたに彼は違和感を持っていて、よくは見てくれないと感じた。
そして、やっぱりいつものように彼の好きなあなたでいようと考えた。
友達に対しても同じように初めは明るく相手に合わせてうまく対応しようとしていた。
でも服を選んでいる間にそうじゃない自分になってしまった。
後悔して「やっぱり、いつものように人に好かれる自分でいよう」と考えた。
いつも全力で周りに気を配って喜んでもらわないと独りぼっちになってしまう不安を感じて
後悔して落ち込んでしまうのね。それって、どうしても独りぼっちになりたくない自分がいるからなの。
そうならないようにしていないと安心できない自分。今回のことで、その気持ちの強さがすごいものだってわかったよね。
だから、強引にその自分を差し置いてはいけないのよ。心のバランスを崩してしまうわ。
舞)
うん。でもやっぱりこんな自分を変えたい自分もいるの。
どうすればいいの?どうすれば独りでも大丈夫な自分になれるの?
占)
今回学んだことは、独りぼっちじゃ生きていけない自分がどれだけ強いかってこと。
でもこの自分を感じないように心から切り捨てようとしたら、後でもっと苦しみが待っている。
だって、自分の気持ちを切り捨てることなんてできないからさ。
だから、自分の心の中にあるものを理解して、うまく折り合えるように彼の協力を得て進められるような方法を考えていこう。
そのためには絶対、無理はしないこと。
そして、ゆっくりと進めること。
そうでないと独りぼっちになってしまう不安は恐怖に変わる。落ち込みは絶望に変わってしまうかもしれない。
それだけは避けなきゃいけないから・・。
舞)
うん。なんか、あせりすぎたのかもしれない。
服を考えている時はその世界で独り生きていきたいって思うし、
彼といる時は彼と生きていきたいと思うけど、両方できるはずだよね。
そのためにも彼の協力を得られるまでは無理しないようにします!
占)
そうね、独りぼっちになりたくない自分の気持ちとその強さをしっかり理解して、
無理しないで折り合っていくように進めていくことがあなたに合っているの。
今回、それを学んだんだから、うまくいってるよ!
本屋で
舞)
ネェ、この服なんかはどう?
彼)
どうかなー、俺はこっちの方が好きだけどね。
舞)
私、つくってあげようか?
彼)
いいよ、そんなのわざわざ作らなくて。
舞)
作らせてよ!ここの色すこし濃い色にしたら、絶対に似合うよ!いいでしょ!
この本、買って帰るね。
彼)
別にどっちでもいいけど・・。
舞)
できたの。着てみて!
彼)
へ〜、買ってきたみたいじゃん、これ。本当に作ったの?
舞)
うん。
彼)
すごいじゃん!
舞)
これに合うジャケットも作ってみたいなー。
彼)
ジャケットまで作ろうとしてるの?
舞)
うん。でも作り方がわからないところもあって・・。
彼)
無理して作ってくれなくていいけどさ、どうしても作りたいんだったら、そんな学校でも行けば。
舞)
行ったらズボンも作ってあげられると思う!もっといっぱい作ってあげたい!嫌?
彼)
嫌じゃないけど・・。まー、思ったより作るのうまいし、いいんじゃない。
お前、他にこれっていう取り柄ないしなー。
舞)
じゃ、なんか少しだけ学校みたいなの適当に探して行ってみようかな・・!!
彼)
行くのはいいけど、途中でできないって辞めるなよ。
洋裁学校
先生)
舞ちゃん、本当に上手ね。センスも悪くないし手先も器用。
なんだか男の人の服ばっかり作っているけど女の人の服も作ってみたら?
舞)
女の人の服ですか?先生が言うのなら作ってみようかな!
先生)
どんな服が作りたい?手伝ってあげるから言ってみて?
舞)
みんなに見てもらえるような服。
先生)
あなた感性高いから、いいかもね。じゃ、人に見せる華やかな服。
どこでどんな人に見てもらいたいのか考えて次回までにそのデザイン描いてきて!一緒に作ろう。
舞)
はい。
(彼に課題だから仕方がないって言える!!)
生徒)
今日ね、いつも飲みに行く店でね、1ヶ月に一度のライブがある日なんだ。
そこのオーナーに観に行く約束しちゃったから、よかったらみんなも行かない?どう舞ちゃんも?
舞)
(ライブかー。人に見てもらう服のこともあるし・・。)
はい、行きます。連れて行ってください!
ライブ会場
舞)
(私と同じぐらいの年の女の子だ。気持ちよさそうに歌ってる。いいなー。
この歌の歌詞、私が高校の時に一人で空を見ながら思っていたことと同じだ。
確かあの時、空と夕日と雲のイメージからこんなデザイン描いてたっけ・・。)
あの人・あの曲にはこの直線を強調する服が合う・・・。以外にうまく描けた!
(あの人がこれを着て歌ってくれたら、なんかうれしい気分になれるだろうなー。
そうだ!この人にお願いしてみよう!!)
舞)
はじめまして私、今服飾の勉強をしています、舞っていいます。
茜さんの曲を聴いて、こんなデザインを書いてみたんですけど見てくれますか?
即興で描いたので雑なんですけど・・・。
茜)
エエ?ウワァ、これって舞台衣装?
舞)
はい、学校の課題で服を作るんです。茜さんの曲を聴いてて、なんか私と同じようなことを感じてたのかなって思うとうれしくなって。
そしたら空、夕日、雲そんな情景が浮かんできて、そんな気持ちをデザインしてみたんです。
学校の課題なので提出した後になってしまいますが、こんな服でよかったら次回の時に着て歌ってくれませんか?
(あー、こんな大胆なお願いしちゃって迷惑かな?)
茜)
(それって私の歌をフォークソング部が歌ってくれるのと同じ気持ちなのかも知れない。
大切にしているものを私も大切にしてあげたい。)
ありがとう。私なんかでよかったら喜んで着させてもらいます。
舞)
じゃ、メールで茜さんのサイズと次回出演の日にちを教えてください。ヤッター!
自分が作った服を着て歌っている場面を想像するだけでなんか感動してしまう。うれしー。




