表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

第2章――[舞]私、明るく前向きなのに・・

第2章―― 

[舞]私、明るく前向きなのに・・


彼)

今、どこにいるんだよ?


舞)

渋谷、友達の誕生日プレゼントを買いに来たんだけど良いのがなくて・・。


彼)

本当に何やってるの?


舞)

ごめん。今日、バイトは?


彼)

今日、バイト休みだって言ったろ!


舞)

休みになるかもって言うのは聞いたけど・・、すぐ帰ってご飯作るから。


彼)

だから確認しろよ!ほんとに!もう、いいよ!友達と一緒に居酒屋にでも行くから。

ほんとお前ってダメだよな!抜けてるって言うか、気が利かないんだよ。


舞)

ごめん。本当にごめん。あ〜切られちゃった。

(あ〜あ、また怒らせちゃった。いつも、いつもこんな調子。

でも自分が悪いから仕方がない。

それにしてもあんな偉そうに言うこともないのに・・。

ほんといつも勝手なんだから・・。

これからはちゃんとすれば良いんだ。気を取り直して明るくしよう。もう大丈夫!)



占)

どうして嫌なのに、笑顔をつくろうとするの?


舞)

え!?なんですか?占い師さんですか?

今、無理して笑顔を作ろうといましたか?


占)

いきなりごめんね。悪気があって言っているんじゃないの。

でも本当は辛いのに、それを隠していつも無理して笑顔をつくろうとしているんじゃないかなって?

だって無理して笑顔を作っている‘しわ’ができちゃっているからさ。


舞)

無理して笑顔を作っている‘しわ’?


占)

そう、彼の顔色を気にして、心配して、そして落ち込まないように、前向きになろうといつも努力しているしわだよ。

そのままでいくと今度は疲れきった顔になってしまうかもよ。どう?ちょっと占ってみない?安くしとくよ!


舞)

えーじゃ、どうすればそのしわが取れるんですか?教えてもらえますか?


占)

じゃ、ここに座って。お名前は?


舞)

ハイ、舞といいます。それでは宜しくおねがいします。


占)

本当に占っていいのかい?いつも良い子なろうとするし、

その場をうまくとりつくろうけど無理しなくていいんだよ?時間は大丈夫かい?

私の占いで本当にいいの?こっちが気を使うよ!


舞)

ハイ、大丈夫です。占ってください、お願いします。今日は彼、うちに来ないと思うし・・。


占)

でも、また彼から電話来るんじゃじゃないかって落ち着いてないみたいだけど?

私の前では「ハイ、大丈夫です」って無理して作らなくてもいいからね。


舞)

ハイ、大丈夫・・。それより彼の顔色を気にして無理に笑顔を作ってるしわってそんなに目立ちますか?

そんなの絶対に誰にも気付かれたくはないんです。


占)

誰も気付かないよ。私は占い師だからわかるだけだよ。


舞)

なんだ〜よかった。じゃ、どうしたら勝手な彼を偉そうにさせないようにできますか?

それとも違う人を選んだ方が良いですか?


占)

人を変えるのは難しいものだよ。まずは自分が変わらないと何も変らないよ。


舞)

自分を変えないといけないんですね。


占)

そう。だって自分が変わらないと、また次に誰か見つけても同じような結果になってしまうかもしれないよ。

多分、前の彼の時も今と同じように我慢して結局、嫌になったんじゃない?


舞)

えー!どうしてわかっちゃうんですか?


占)

前の彼は弱い人かな?そして今の彼は強い人?そんな感じ?


舞)

それもどうしてわかるんですか?そう、意志の弱いところがあってお金にルーズだったの。

お金が無いのに使うんです。どうにかしてあげようと思ってバイトを探してあげたり自分のバイト代あげたりしたんだけど、

いくら言ってもダメでそれで別れたんです。


占)

そして今度は強い人?全然タイプは違うけど同じようにあなたの気持ちをわかろうとしないで好き勝手にしてゆく。

あなたも同じように前向きになろうと我慢しながら笑顔を作っていくけど嫌になってきている。


舞)

言われてみれば、そうかもしれない。


占)

前の彼はあなたより弱かった。そして彼に対して前向きな生き方をしてもらおうと

上の立場から我慢して笑顔をつくって尽くしていていった。

でも変らない彼が嫌になった。今の彼はあなたより強い。

そして彼に対して前向きな自分でいようと下の立場から我慢して笑顔をつくって尽くしている。

上の立場か下の立場かの違いはあるけど、それ以外はあなたの恋愛のスタンスは基本的にあまり変わってないんじゃない?


舞)

言われれば言われるほどショックなんですけど・・。そんなこと聞いても落ち込むだけじゃないですか。

私は一生そんな風に運のない人生なんですか?常に希望を持っていたいんです。そうでないと生きていけない。


占)

運のない人生なんて人はいないんだよ。無意識の中で運を拒んでしまっているから運は良くならないんだよ。


舞)

私が運を拒んでいる?じゃ、運をつかむにはどう変われば良いんですか?

私、たまに悪い方に物事を考えるからいけないんですよね。

もっと明るく元気で積極的で前向き、そんな自分になれるように努力していけば良いんですか?


占)

もっと前向きになる努力?


舞)

そう、よくネガティブに考えてると本当にそうなるって言うじゃないですか?

だから私、ネガティブに考えないように努力してるんです。そうなりたくないから・・。


占)

無理してもっと前向きになりたいの?


舞)

ハイ、いつも前向きなそんな自分。どうしたら、ずっと前向きなままでいれるんですか?


占)

そう、じゃ、ちょっと手を見せてみて。うーん、うーん。良い手してるね!あんた。

すごいじゃないの、これ!人にない素晴らしい才能を持っているよ。

それにこの才能は多くの人をひきつけるし多くの人から尊敬を集めることができるよ!


舞)

えー、ホントですか?そんなことウソでしょう。でも、うれしいです。


占)

前向きに、前向きにって自分に無理させながら苦しんでいるあなたをここに座らせて、

それをわかっていながらあなたをさらに元気付けてもっと前向きにさせようなんて、

そんなこと私にはできないよ。だからウソでもなんでもないよ。本当だよ。


舞)

え!?どういう意味?まぁいいか・・。それより、どんな才能なんですか?

どうしたらその才能を開花させることができるんですか?


占)

やっぱり、その才能には気付いていないみたいだよね。

でも、今の話しを聞いてたらそうじゃないかなとは思ったよ。


舞)

どうして?


占)

その前にチョッと教えて欲しいんだけど、今の彼は初めからそんなに勝手で横柄だった?


舞)

ううん、違う。初めの頃は優しくて、いろんなところに連れて行ってくれて、

私を引っぱってくれる人だった。一緒にいるのが楽しかった。

その時はこの人に付いていけば良いと思った。



占)

そう初めの頃はあなたも明るく元気で彼ととてもうまくやってたよね。

そのうち彼も変っていくけど、そういうあなたも付き合ったときから変わっていった。

彼の顔色を気にして気を使うようになっていった。前の彼も、今の彼もそう。

相手がどんな状態でいるのかどうすればうまくいくのか顔色を見て気にしすぎてしまっている。

前の彼には相手がうまくいかない、今の彼には自分がうまくやれないって、相手の状態や表情に振り回されている。

そして、うまくいかなくなって落ち込みかけるとそうならないように、すぐに前向きになって意地でもしがみつこうとする。

なぜなら、「どうしても、ひとりにだけはなりたくない自分」が心の中にいるからね。

その態度が「何やってもコイツは良いんだって」相手を図に乗せてしまう。

それに相手が気付けば絶対に変ろうとはしない。

そのうち、自分が都合の良いように扱われていて利用されているのに気付いてくる。

結局、自分も相手も全てが嫌になっていく。

今、その繰り返しをしてエネルギーを使ってしまっている。

だから自分の才能に気付く余裕がないんだよ。


舞)

本当はこんなの嫌だなーって思うときが何度もあります。

なんで付き合っているんだろうって感じる時が何度もある。

でも、今は別れてひとりになる方がもっと嫌。


占)

わかってるよ。だからこんなことにエネルギーを使うのはやめて、

早く別れなさい!なんて、私は無茶なことを言わないよ。

もっと自分を理解して才能を信じることができてから、

それからゆっくり考えていけばいいことだからね。


舞)

どうすればいいんですか?


占)

恋愛はね、人生の縮図なんだよ。

だから彼とのやり取りを聞いただけであなたの生き方がだいたいわかってしまう。

違ってたら違うと教えてね。

学校でもバイトでも、本当は不安で落ち込み易くて孤独なんだけど、

そんな自分を隠していつも周りに気を配って、あなたは明るく元気で前向きになろうとする。

そして、そんな自分はみんなから好かれて愛される自分だと思っている。

だから、そうじゃない人を見つけると、明るく元気で前向きな生き方をして欲しい、

助けてあげたいと思って近づいて相手を励ましたりするの。

嫌だなって思う人の前でもついつい好かれるように努力する。

でも所詮、無理して作っている自分だからいつかはそれができなくなる。

そうなると、いきなり嫌われるんじゃないかとか考えて不安になって、

すごく落ち込んだり強い孤独感に覆われてしまう。

今度は自分が落ち込んでた人を励ましたように

自分も助けてもらおうとして人に依存的になった恋愛を始めるんだけど・・。

そして辛いけどこんなパターンの繰り返しをしてしまう・・。

どう?大きくはずれてる?


舞)

当たってる・・・、ところもあると思います。


占)

あなたが強く望んでいる明るく元気で前向きでいることが、

このパターンを作って人に振り回される自分をつくってしまい、

エネルギーを消耗させ結果的に孤独を生んでしまう。

そうして自分の才能を育てる余裕をなくしてしまっているの。


舞)

オバサンの言ってることはよくわかります。

でもね、だからと言って後ろ向きにだけは絶対になりたくないし独りぼっちにもなりたくないです。

なったら終わりでしょう?


占)

前向きか後ろ向きか、誰かと一緒か独りぼっちか、

そんなことに全く関係ない自分ていうものをあなたは本当は持っているのよ。

その自分を信じていけばいいの。


舞)

そんな自分って?


占)

んー、小学校の時、あなたはどんな子だった?


舞)

え、小学校?あまり記憶はないんだけど・・。

普通だったと思います・・。

どちらかと言うと目立たないような感じ。


占)

どんな子とどんなことして遊んでいた?


舞)

うーん、近所の子とか・・。

だいたい決まった子といつも・・。


占)

学校の子とはどうだった?


舞)

そう言えばあんまり遊んではなかったと思うな。


占)

ひとりの時はお部屋でなにしていた?


舞)

うーん、塗り絵。

ほら女の子の服とかに色を塗るようなのとかをよくやってましたね。

そう言えばいつも女の人の絵ばかり書いてた。


占)

どんな絵


舞)

周りの景色だとか、その季節だとかを考えてそれに合う髪型や服なんかの絵を書いていた。


占)

服とか髪型とかに興味があったの?

じゃ、よく自分で鏡なんかを見て髪型変えたり服を合わせたりなんかもしてたの?


舞)

あー、それひとりでよくやってました。


占)

その頃もクラスで今みたいに明るく元気で前向きになって、

みんなから愛されようと努力してた?


舞)

ううん、してなかった。


占)

中学校の時は部屋で一人の時はなにしてた?


舞)

うーん、同じように鏡見てこういうの作りたいとか考えては作ってました。

編み物したり布買ってきて本の通りに服作ったり。

時々、自分で一部作り変えたりもしてましたよ。

そういえば、高校の時は自分でデザインした服を作って、それに合う変った髪型を美容院でカットしてもらった!

今考えればチョッと変なカッコだったけど、みんなにどこで買ったの?どこでカットしてもらったの?って興味持ってもらった。

自分でデザインしたって言っても信じてくれない人もいた。


占)

そんな時、多少はあったかもしれないけど、

今ほどは人の顔色気にして明るく元気で前向きになっていこうとはしてなかったんじゃない?

自分の感性や独創性を信じて人からどう見られようと気にしないで

自分らしく生きようとしている自分がまだいたよね。


舞)

うん、それでも進路を決める時に、

うまく人と話ができるようになりたいって気持ちが強くなって

服飾関係ではなくコミュニケーション学に進むことにしたんです。


占)

周りに対して、いつも明るくうまく話せるようになりたい自分が大きいからね。


舞)

そう・・。服や髪型にはもちろん今も興味はあるんだけど、

学校や彼やバイトこととかで忙しくて何か作ろうとかっていう気にはならないんです。


占)

自分の感性や独創性を信じて自分らしく生きている自分が少なくなってきた分、

周囲に振り回される自分が大きくなってきてしまっているのよ。


舞)

そうか〜。


占)

明るく元気で前向きなのが悪いわけじゃないの。

でも本来の自分を失うほど過剰にしてしまうことがよくないんだよ。

だから、初めにあなたは不思議がってたけど、

私がこれ以上あなたを前向きになろうとはさせないって言ったのはこの意味だったの。

あと、多くの人をひきつけるあなたの才能は何なのかって、これでよくわかったよね。

これからは周りに気を配りすぎたり顔色を気にしてうまく対応しようとする時間とエネルギーを減らそう。

その分、自分の感性や独創性を信じて才能を引き出す時間をもっと増やしていこう。きっと良いことが待ってるから。

だって、あなたのように周りに気配りもできて、豊かな才能も持ってる人ってすごいじゃない。

そうなれば、あなたの手相が示すとおり、多くの人をひきつけるし多くの人から尊敬を集めることが間違いなくできるでしょう。


舞)

オバサン、ありがとうございます。私、もう一度やってみます。

今日だって友達の誕生日プレゼントを買いにきたんですけど、

その子の服装や髪型を考えて品物を選ぶのが楽しくて仕方ないんだもん。

どこかでいつもそんなことを考えている自分がいるんです。

今日はそんなことをやってもいいんだって言われてホッとした気持ちにもなっています。

ずっとやりたかった自分が今、喜んでいるんだと思います。


占)

ただし、絶対に早く進みすぎないこと!!

周りを気にして、いつも人前で明るくなろうと全力で頑張って、

それでも良く思われないと不安でさびしくて落ち込む自分がいるよね。

独りぼっちにはなりたくない自分。その自分の気持ちはとても強いんだ。

だから、無理に急いでなくそうとしても逆効果さ。その強さを理解しながら、

ゆっくり二つの自分のバランスをつくっていけば、あなたは大丈夫よ!


舞)

本当にありがとうございます。また何かあったらここに来てもいいですか?


占)

ハイ、いいですよ。私はいつでもここにすわっていますから。


舞)

それじゃ失礼します。



舞)

(周りに気を配りすぎたり人の顔色を気にする時間とエネルギーを減らして、

才能を引き出す時間を増やしていけばいいんだ。なんかわかってきた。)

あ!いっぱい彼からメールと電話が来てる!

「居酒屋を出て友達の彼女も合流してカラオケに行くからすぐに来い!」

あ〜携帯切られてるし、急がなきゃ!何も返信しなかったから怒ってるだろうな!

遅れて着いたら彼や友達とその彼女はどんな風に私を受け入れてくれるかな〜。

どうしよう!とにかく場をうまく盛り上げるようにしないと!

あー、また人に振り回されてる。でもこんな時はしかたないよ。

ううん、自分を変えなきゃいけないし!二つの自分のバランスってどうすればいいんだろう。

また今度オバサンに相談したほうがいいのかな〜!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ