初めての会話。
私には、学校が終わるとすぐに行く場所がある。
それは、みんなにはどうでもいい場所で、私にとってはすごく、特別な場所。
一気に走ってたどり着いたのは、近くのスーパーの休憩所。
「っ…いた!」
小声でつぶやいて、私は目にその姿をうつした。
いつも決まって一番奥の席には、男の子がいる。
水色の髪が特徴的で、その赤い瞳に私は一目惚れをした。
いつも眠りながら日光浴をしている。
私が帰る時間まで一度も起きないのは、とてもすごいことだとおもう。
ハッキリ言ってそんな彼を見にくるだけに毎日学校が終わって走ってここにくる私はストーカーに近いのかもしれない。
そんなの、別に気にすることじゃないと言い聞かせたい。
でも、私は彼に話しかけれないだろうなぁ。
あんなの見られたら、嫌われちゃうもん。
今日は彼がいつ起きるのか、待ちたい。
親にはいつもより学校祭の準備で遅くなると言った。
「…」
いくら好きな人といえども、ずっと見ているのは飽きてしまう。
「本、読もうかな。」
私は文庫本みたいな可愛らしい本とはあきらかにかけ離れて太い本をだした。
「読み始めると止まらないんだけど…まぁ、いっか。」
私はその本の世界に吸い込まれるように、本を読み始めた。
こんなこと、しない方が幸せだったのになぁ。
「ねぇ。」
ポンと叩かれた肩に私は一気に本の世界から現実に戻った。
丁度、起承転結の転と結の間くらいだっただろう。
私は肩を叩かれた方をみて、その分厚い本を机の上に落とした。
私は方針状態に近い状態になった。
目の前には、赤い瞳を光らせた男の子がいた。
言葉が何もでない。
なんだか、星が地上に落ちてきて、突如話しかけられた気分だ。
「大丈夫?もう、夜だけど。」
「え?」
私はあわてて時計を見ようとする。
制服の裾をまくると時計はない。
かんじんな時なのに家に忘れたみたいだ。
「…ほら。」
その人が取り出したiPhoneが明るく光ると、夜8時をさしていた。
私の予定で7時には家についている予定だった。
「…」
あまりの衝撃に言葉がでない。
帰って家にいれてもらえるだろうか。
そんなくだらないことしか頭によぎらなかった。
そして今の状況に思考を傾ける。
今、目の前にいるのは、私の好きな人。
好きな人に私は肩を叩かれた。
そして時計を見ようとしてなかったという馬鹿な行動も見られた。
顔が真っ赤になる。
「君、あまりにそれに集中してたから、止めない方が良かったのかなって思ったけど、なんかほおっておいたら本当に読み終わるまでいそうだったからさ。」
こんなとき、なんと言えばいいのだろう。
頭の中は真っ白だ。
話せるとなったときのシュミレーションは何もかも無駄だったと感じる。
「じゃあ、僕は帰るから。」
そしてようやく言葉がでる。
「あ、あの、ありがとうございます…!」
「…感謝するなら僕の眠り妨げるのやめてくれない?」
「…え?」
また、頭は真っ白になる。
私のシュミレーションだと、「別にいいよ」って言って消えて行くのだと思ってた。
予想外すぎるその言葉に冷や汗が溢れ出す。
「あ、あの…え?」
「気づかないと思ってた訳?君、いっつもここにきては俺を凝視してくるじゃん。」
「え?…え?」
今までの全ての行動が蘇る。
爆睡してるとおもってガン見してしまった。
何も疑わずに。
「ち、違います、ただ、風景をいつも眺めていただけです!それに毎日きてはいませんよ!」
なんとかして、逃げなきゃ。
「嘘だね。」
「え?」
「毎日きて、窓から俺がいる事は絶対に確認してた。俺にはわかるんだよ。」
そう、私は毎日きてはさすがにバレるとおもい、人が多い日を狙ってきてた。
外から中を見て、この人を見て、決めていた。
羞恥がどんどんバレる。
思いっきり叫んで死にたい。
「他にもあるんだけどさ、まぁ、言わないどくよ。」
そうして、そうして、お願いはやく消えて!!!
彼は、私の目を直線的に見て、最後にこう言った。
「お前みたいのが一番嫌いなんだよね。」
終わった。
彼は振り返る事もせず、去っていった。
人生で一度として体験した事もない絶望に襲われる。
あぁ、なんていうことでしょう。
告白もしてないし話してもいないのに、最悪な印象を植え付けてしまった。
ストーカーという第一印象から、動かす事ができない気しかしなくて、ため息がでた。
「恋なんてするもんじゃないや。」