スペシャルなお飲み物はいかが?
「うーん。おっかしーなー」
「なんだ、どうした想也。浮かない顔して」
月曜日の朝。
一週間の始まりは如何ともしがたい気怠さの塊だ。
今日もかなり朝早くに起きることができ、最近の僕の起床時間から予想するに目覚まし君1号2号の犠牲が今になって効力を発揮し始めたのだと思う。
実咲さんが僕の部屋の扉を開けた瞬間に目が覚め、何故かちょっと不機嫌な――気のせいかも知れないけど――彼女が朝ご飯を作っている間に一風呂浴びて、二人でゆっくりとテレビを見つつお茶を飲んでいたら遅刻寸前になると言う、まあ大体いつも通りの朝な訳だが、今日に限っては一つだけ違うことがあった。
僕にその自覚は無いんだけど。
「浮かないっていうか……不可解?」
「何がだ」
「なんて言っていいのかな。自分でもよく分からないから、結果だけで良いよね?」
「おう」
「土曜日の夜に寝て、起きたら月曜日の朝――今日の朝になってた」
「何だそりゃ。まるまる一日以上寝てたって訳か」
「正確に言うなら、夜ご飯食べた後から記憶無い。寝過ごすとか言うレベルじゃ無いよねコレ。折角の日曜日を無駄にした感がヤバい」
「不思議なこともあるのね。本当に不思議だわ。ご飯食べ終わったら気を失うように眠ってしまったの」
「ごめん、実咲さん。心配させちゃったかな」
「いえ、良いのよ。一ヶ月でも、一年でも、お世話するわよ」
「仮にそんな事になってたら病院に連れてって欲しいんだけどね」
そんなに起きないって明らかに異常事態だ、僕の身体が。
にしても、何で丸一日も寝てたんだろう。
あの島で『理想世界』を使いすぎた時にも丸一日以上寝てたことはあるし、前例があると思えばそこまで深刻な事態では無いと思うんだけど……そんなに寝込むほど疲れてたっけ?
心労的な意味で言えば木曜日の事件があるけども。
ちょっと土曜日の流れを思い出してみよう。
えーっと…………………
…………………
……………
………
……
…
◇
「………………おはよう?」
「あら、おはよう」
「……なんか……前も同じことあった気が…………ああダメだ眠い……おやす……み」
正確な時間は分からないが、恐らく朝8時過ぎ位に仰向けで寝ている僕の上に人の気配を感じ、目が覚めた。寝起きの頭と目は靄が掛かったように周りの情報を正確に受け取ってくれないが、経験と声から推測するに実咲さんが僕に馬乗りになっているのだろう。
直接体重を掛けない心配りは嬉しいが、密着度が高くて意味がない。
前日の夜遅くまで家の中で『理想世界』の訓練をしていた為、生半可な刺激では睡魔の侵攻作戦を阻むことは出来ない。
僕は睡魔の波状攻撃の前に陥落した。
引きずり込まれるように眠りに落ちる寸前、実咲さんが何かを閃いたような顔をしていて、そこはかとない不安に襲われたけども、だからと言って抵抗出来るような力も残っていない僕は神妙に目を瞑った。
そして、一時間後。
二度目の覚醒。
「…………まぁ、大体予想付いてた」
「…………ん……………」
実咲さんが僕の布団の中に潜り込んで寝ていた。
布団をガバーッと取り去ってみれば、あられもない姿の実咲さんがあどけない表情でグッスリだ。
今更こんな事で取り乱すような真似はしないのだ、僕は。毎週かなりの頻度でこんなことをやられていれば嫌でも耐性は付いてくる。
流石に下着姿とかだったら今頃奇声をあげてベッドから転がり落ちていたところだが、普通に服を着ているから問題無い。
僕はあまり服とかに興味がないから、どこのブランドなのかとかは分からないけど、水色のTシャツにかなり短めのデニム……ショートパンツか? と言う、何とも動きやすそうなスタイルだ。そのまんまベッドで寝てたらコーディネートもクソもないと思うんだけどね。
て言うか、デニム短過ぎじゃね。
もう殆ど股関節とパンツが見えないようにすればいいやぐらいの勢いじゃね。
生足だよ殆ど。寒くないのかな。
「…………(ゴクリ)」
改めて見ると、足ながっ!
スラリとした、日焼けを知らないような白い足は、それでいて健康的な筋肉の付き方をしており、太股からふくらはぎにかけてのラインはまさしく曲線美をこれでもかと言うほど表現し、まるで彫刻のような神秘さすら纏う、理想的な流れだった。
それでいて、壊れてしまいそうな繊細さと思わず頬ずりしたくなってしまう包み込むような柔らかさが、少し身動ぎするだけで艶めかしい魅力となって目を通り抜け脳へ直接訴えかけてくる。
しかもそれが二本もある。
いや、僕は何言ってんだ。なんだ二本て。
回りくどい言い方をしてしまったが、僕が布団を剥いで目に飛び込んで来た生足を見て最初に思ったことは、
(うっわ……エッロ……!)
である。男なんてそんなもんだ。
おっと、危ない危ない。
いや、ホント危ない。僕の鋼の精神力と理性はこれぐらいのことでは揺らがないのだ。実咲さんは、僕なら大丈夫だと思って、安心して寝ているのだ。それはこの寝顔を見れば分かる。
信頼。そう、実咲さんは信頼してくれているのだ。
それ裏切るような無様な真似は絶対にしてはいけないのだ。それだけはしてはいけないのだ。
今更、他人の信頼なんてほとんど無いし、あったとしてもどうだって良いが、実咲さんだけは裏切りたく無い。
「起こすのもアレだし、歯ぁ磨いて、ご飯作っちゃうか……朝なのか昼なのか分からないや」
大きく伸びをして部屋を出た。
家中の窓を開けると、そこかしこから風が吹き込み埃を乗せて出て行った。この季節にしては湿度の低い風だ。良い風である。
「おはよう」
「ええ、おはよう、想也君」
朝昼ご飯を作っていると、実咲さんが起きて来た。
どうやら実咲さんは僕の部屋に乗り込んでくる前に、ご飯の支度を途中まで終わらせていたようだったので、そんなに時間を掛けずにご飯が食べられそうだ。
「お腹空いたわ」
「もうそろそろご飯出来るよ」
「献立は何かしら?」
「トーストとか、スクランブルエッグとか、実咲さんが用意してくれてたポトフとかだね。あ、今日は確か仕事だよね」
「そうね。二人で仕事よ」
「今、軽く食べて、ERCの近くでまた食べてから行こうかなって思ってるんだけど、どうかな」
「良いと思うわ」
新しい家になってから、家具家電類をほぼ全て新調したのだが、恐らく一番の変化はキッチン周りであろう。ハイペースで仕事をこなし、時間がある時に怪物を大量に乱獲し、怪しまれない程度に売っているので資金は潤ってきている。
そのため、色々と家電をアップグレードしている。
特に、冷蔵庫。
超大容量の冷蔵庫のお陰でマンション暮らしの時に何度かあった、明日の朝の分の食材が無くなると言う事態は解決されたのだ。
勿論、魔道具なので、大きさも相まって結構大量に魔力を込める必要があるが、僕らにとってはデメリットでも何でもない。
毎日買い出しに行く必要はあるんだけどね。
「今日はどっち方面に行く?」
「そうね、もうアーマーベアは飽きたし。あ、またポイズンボアを食べに行きましょう」
「それなら、そっち方面の依頼を受けて、見つけたら食べようか。僕らのランクだとポイズンボアの依頼は受ける事自体出来ないからね」
昔、ローウェルさんや護人が転校してくる前のこと、海や内宮さんを連れてポイズンボアを狩りに行ったことがある。
ポイズンボアとは読んで字のごとく毒を持つ怪物だ。戦闘能力は殆ど持たず、保持者であればCランクもあれば余裕で殺せる程度の弱い怪物なのだが、寿命以外の要因――つまり、他殺によって死ぬと致死性の毒を広範囲に撒き散らすと言う厄介極まりない特徴を持つ。
この特徴のお陰で条件付きではあるもののAランククラスに指定されている凶悪な怪物なのだ。他の怪物の様に、人間を見かけると襲い掛かってくる性質を持たないので見つけたらその場から離れれば問題無いけど。
確かあの時は、戦いに行く前に予め『理想世界』で毒を消す液体を作ってから行ったんだっけな。『理想世界』を大々的にバラすわけにも行かなかったからね。血清とか抗体とかワクチンとかそれっぽいことを捲し立ててポイズンボア以外には効き目の無い試作品の薬剤であると押し切ったのだ。
ポイズンボアにしか効かない薬剤とかそんなものあるわけ無いんだけど、海と内宮さんが信じてくれたのでちょっとした罪悪感を感じつつ美味しく頂いた経験が有る。
今回は僕と実咲さんだけなので隠す事なく気楽に狩りに行ける。
で、何の事故も事件も無くポイズンボアを狩って、その場で焼いて食べた。
ジューシーで美味かった。
そのあと家に帰ってきて、強化の練習をして過ごした。
……うーん。ここまでで特におかしいところは無いんだよなあ。調子に乗って『理想世界』を使いまくったりしたけど、それが理由とは思えないしな。
実咲さんと一緒にいると、誰かに見つかるってリスクを殆ど考えなくて良くなるからつい使い過ぎちゃうんだよね。カッコつけたいって理由もあるけど。
そして、夕餉の時間。
今日の夕食係は僕だったのだが、実咲さんが新メニューを試したいとの事だったので役割を譲り、余った時間で実咲さんのリトリビュートを強化する事にした。
新しい概念を封入するには時間が掛かるし、そう何種類も概念を追加すると実咲さんも使いきれないだろう。それに、どんな概念を追加したいかは本人に聞いた方が良いだろうしね。大抵の事なら出来るだろうし。
切った敵を確実に殺せる能力とかは……出来るのかなあ。仮にできるとしても、普通にリトリビュートで斬り裂いた方が早いよなぁ。
ま、それは今度でいいか。
今回は概念強度を上げる方向で行こう。ついでにリトリビュート自体の強度も今の内に引き上げておくか。
「想也君、もうそろそろ出来上がるわ。準備して頂戴」
「分かった。お腹ペコペコだよ」
「いっぱいあるから沢山食べてね」
30分程、リトリビュートに意識を集中していたから、実咲さんに声を掛けられて初めて部屋中に美味しそうな匂いが充満している事に気が付いた。
リトリビュートの強化をキリのいいところで終わらせて、食器の準備を始める。
盛り付けられた料理をテーブルに並べ、二人で向かい合うようにして椅子に座る。
「「いただきます」」
手を合わせ、猛烈なスピードで料理を口へと運んでいく。
美味い。
ごちそうさま。
パクパクと食べ終えて一息ついていると、不意に実咲さんが声をあげた。
「ゴホン……んんっ…………そうだ、想也君!」
「え、うん、何」
「私、スペシャルドリンクを作ってみたのだけれど」
「スペシャルドリンク」
実咲さんが探るような声色で切り出した。
なんだスペシャルドリンクって。
実咲さんお手製のジュースって事かな?
「そうよ。頑張って作ったから、是非、想也君に飲んで欲しいの」
「良いよ」
「じゃあ、今持ってくるわね!」
ならば飲む以外の選択肢などあるまいて。
パタパタとキッチンへ向かった実咲さんが、少しして両手にコップを持って帰って来た。
赤色と黄色を混ぜた様な色合いの液体がなみなみとコップを満たしている。
実咲さんの好みからいくと、多分オレンジやグレープフルーツ系のジュースだろう。
「さ、飲みましょ」
「うん」
実咲さんに差し出されたコップを受け取り、一息に飲み干す。
オレンジの爽やかな甘酸っぱい味が口の中に広がり、多分隠し味のレモンの風味が後味をスッキリとさせる。僕の予想は的中してたみたいだ。
ゴクゴクと飲めるぞ、これは。
「とても美味しいよ」
「嬉しいわ。えっと……何が入っているかは、分かった?」
同じ様に飲み終えた実咲さんに感想を伝えると、不安そうな顔が一転して安心した表情になった。
でも、気の所為かもしれないが……何故か実咲さんはそわそわと落ち着かない様子だった。
うん、気の所為だな。
「多分、オレンジは入ってるよね。あと、レモンが少し。あとは――」
「あとは?」
「なんだろうこれ……さくらん、ぼ……かな……」
「……え。如何したの想也君」
「うぇ……すご、ねむ…………なんだこれ…………ぐう」
「想也君!? 大丈夫!?」
僕の異変を察知した実咲さんが椅子を蹴飛ばしながらテーブルを回り込んでくる。
ペチペチと頬を叩いて呼び掛けられるが、その痛みも鈍くなっていく。
ヤバい。眠い。これもう睡魔ってより麻酔レベルの眠気だ。なんだこれ。いきなりきたな。
「だいじょ…………ぶ………………………」
「想也君! 想也君!?」
肩を掴まれて揺さぶられるが、落ちていく意識を引き止めることは出来ない。
椅子から転げ落ちてしまった僕を、実咲さんが受け止めてくれた……のが最後に覚えている記憶だ。
◇
「想也君。ねえ、想也君。起きて、ねえ!」
何度も何度も呼び掛け、頬を引っ張ったり、肩を揺らしたり、腕を思いっきり抓ったりしてみたが、一向に起きる気配がない。
夕飯の途中にいきなり眠りこけてしまったら、心配だと思っただろう。理由を知らなかったら。
「く、くふっ、ふふふふふふふ!」
どうあっても起きない事を確認した。
と、同時に笑いが込み上げてくる。
やった。やってしまった。
「今から約24時間は……何をしても絶対に目を覚まさない」
あのレイオットとか言う幼女に貰った薬を勇気を出して想也君のジュースに混ぜて使ってみた。本当に効果が有るのか眉唾ものだったけど、想也君の様子を見る限り嘘はついていないみたいね。
これなら、今度レイオットの店に行っても良いかも知れないわね。どこに店を構えているか聞いてもよく分からなかったから、最初は想也君と行こうかしら。デートね。
私の腕の中で眠る想也君の寝顔を見ながら、色々な妄想に想いを馳せる。
想也君が、私に全てを預けている。眠りこけた顔を見ているだけで私の心が何かで満たされていくのが分かる。鏡を見れば、きっと私の頬に紅葉が散っているのを見ることが出来るだろう。
「ああ……ごめんなさい。ごめんなさい、想也君――」
高揚感に包まれた私を、罪悪感が塗りつぶしていく。
一瞬で、心が冷えていく。
ああ、何て事をしてしまったのか。私がやった事は想也君にとって嫌なことなのではないのか。
でも、自分を抑えきれない。駄目だと思っても、思っていても、想也君を独り占めしたいと言う、ちっぽけで卑しい独占欲に負けてしまった。
想也君は私の全て。私は想也君の為に生きると決めた。だからこんな気持ちは捨て去るべきなのだ。独占欲なんて、想也君にとって迷惑になるかも知れないから。
なのに。日々を重ねる程に、私の気持ちは密度を増して、それと同時に暗い感情も渦巻いて、どろどろに粘性を増した心が欲望に衝き動かされるままに、私に染み込んでいこうとする。
分かってる。頭では理解しているのに、心が納得をしてくれない。
想也君に優しくされると駄目になってしまいそうになる自分がいて、そして私はそれが嫌じゃない。
私は想也君を愛しているから。想也君のためならなんでも出来る。私は想也君しか見えていないけど、想也君は私しか見えていないわけじゃない。
今、無理を言って住まわせてもらっているけど、それは私が特別だからじゃなくて、想也君が優しいからだ。きっと、想也君は私以外にも同じことをするはず。
……私は、想也君にとっての『特別』になりたいだけなの。
「――でも、今だけは。こうしていたいの。どうか、許して頂戴」
少なくとも、今は。
私は重要な局面に直面している。
「イケる。いや、行きなさい現乃実咲。私はやれば出来る子よ」
二時間ほど想也君を抱き締めてひとしきり満足した後、想也君の部屋に連れて行ってベッドに寝かせた。いつも何かを考えている想也君は、起きている時はほんの少しだけ眉が寄っているのだけど、寝ている時はあどけない素顔を晒している。この顔を見ると、私は自然と笑顔になってしまう。
薬で眠っているからかは分からないが、いつもに比べて一段と無防備な寝相だ。私が誘拐されかかってから、想也君は私に気付かれないようにずっと警戒し続けている。想也君が少し寝不足気味なのは、それが理由なんだと思う。
無防備に眠る想也君を見下ろしていると……何だか、良くない気持ちがふつふつと湧いてきてしまった。
服が乱れて胸元が結構見えてしまっている。
「こ、このまま寝たら気持ち悪くなっちゃうわよね。き、着替えさせてあげないと」
そう。仕方なくなのだ。
想也君のシャツに手を掛け、ボタンを外していく。
想也君は見た目は細いのだが、毎日鍛えているだけあってかなり筋肉質な体つきをしている。
ほら、この腹筋とか6つに分かれてゴツゴツしてるし……って、何やってんの私は。無意識のうちに手を伸ばして直に想也君の腹筋を撫で回していた。
「お風呂……は無理ね、私が。み、見える所だけタオルで拭いてあげましょう。そうしましょう」
濡らしたタオルを持ってきて、想也君をベッドの上で転がしながら上半身を綺麗にしてあげた。
下半身は、無理よ。
途中で何度か背筋や上腕二頭筋や鎖骨やらに目を奪われて手が止まってしまったけど。
あとは顔を拭くだけね。
ああ。なんて愛おしい。
そう思いながら、顔を拭き終えた後、次に私が目を奪われたのは想也君の唇だった。
何時の間にか、自分の唇に手を当てていた。
キスってどんな感じなのかしら。私は、誰かと唇を合わせた事もない。好きな人なんて居なかったし、何百年も一人で生きてきたからそんなことをするなんて考えも出来なかった。
でも、今なら?
「今なら……絶対にバレない……!」
意識してしまうともう駄目だ。口から心臓が飛び出して死にそうだ。生き返っちゃうけど。
心臓が早鐘を打ち、顔から蒸気が出そうなほど血が巡る。私は人生の中で今ほど緊張と興奮が同時に来たことは無い。
あれ。
そもそも、キス以上の事すらバレないのでは?
何をしてもバレないのでは?
どうせここまでやってしまったのだから、後はもう流れでいくしかないのでは?
などと思考が光速であらぬ方向に飛んで行ってしまって、オーバーヒート状態になった。
そして、急速冷凍した。
「駄目ね。それだけは駄目よ、私」
愚策中の愚策じゃないの、それは。
そんな既成事実を作るようなやり方、私はともかく想也君の気持ちを蔑ろにするようなやり口は絶対に駄目よ。
想也君は優しいから、 私が悪くても責任を取るだろう。そうしたら一緒に居られるけど……それは、両思いの末じゃないわ。
好きだから一緒にいるのではなくて、責任感で隣にいる事になってしまう。
それは、嫌。
そう思うと、自制することが出来た。
「で、でも、キスぐらいなら別に……良いわよね」
駄目だった。それは我慢できなかった。
寝ていることを良いことに、想也君の唇を奪い、口腔を陵辱してしまった私は、そのあと5時間ほど罪悪感に苛まれていた。
「私はなんてことを…………でも、良いわね。止められなくなりそう」
あとは我慢しよう。
いつの日か、想也君からしてくれるまで。
「日曜日は、ずっと顔を見て一日を過ごすとしましょう」
だから、明日一日は添い寝だけに留めておこう。
お読み頂きありがとうございます




