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鞭と剣を極めし男  作者: 咲哉
プロローグ
2/4

02

 俺は予想外のことに絶望に打ちひしがれたが、馬鹿なのが幸いしてどうにか自分を保っていた。


「アナウンスだし……ガチだよな~」

「うぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおお!?」

「あぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああ!?」


 現実をキチンと見直していたところ、行き成り後ろから奇声を放たれ驚く。と言うかこの声……確実に彼奴だよな……よし、無視だ。


「うぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおお!?」


 無視だ無視。


「うぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおお!?」

「わかったよ俺が悪かったよッ!ごめんなさいでしたぁー!」


 あまりのウザさに敗北した俺は、声のする方へと顔を向ける。やはり貴様かッ!と内心ツッコミたくなるもののこれ以上面倒になる事をさけ、何も言わない。


「わかればいいのだよ君、ところでお前は彰人で間違いないよな?」

「うん間違いないよ、間違いないけども、どうして体格容姿変更をしている俺の名前がわかるのかな!?」

「その対応、お前も私が誰だかわかっているではないか」

「アンタは丸分かりなんだよッ!現実と同じ体格容姿のやつを間違えるかってんだッ!」

「ん?」


 俺の言う通り、こいつは体格容姿変更を本当にしていない。正直自意識過剰ですか!?と聞きたいが自意識過剰でも文句が言えない程の体格容姿をしていらっしゃるので何も言えませんッ!

 一頻り奴は自分の姿形を触って造形を確認したあと、こう言った。


「ミスった」


 最早ツッコム気も失せた俺は一言告げてやる。


「……あっそ」


 ----------


「それで、これからどうするんだ?」

「………あのさ、どうしてそう親しげなの?俺とアンタに現実で接点ありましたか?ありませんよね!?」

「あるさ、教室で話しかけたこともあるだろう」


 あの後、なんとこのつ俺とパーティーを組みたいと言ってきて、俺は丁寧にやんわりと断った。ハズなのに、こうして付きまとわれている。

 この会話から分かるとおりこの人は俺のクラスの同級生だ。名前は……接点がないからわからん。


「お前がが私を無視しているだけじゃないか」


 はいそうですね。それは事実だ。だが俺はそれを見事に全て無視し、接点が無い様に頑張ってきた。故に俺とこの人に接点はないのだ。

 

 いや、一度だけ喋ったことがある。その時の会話は楽しかったし、このつも楽しんでいたようだった。だが、それがいけなかったのだッ!

 先程も言ったとおり、こいつは体格容姿が最早神秘の域に達する美少女だ。因みに現実の俺は同じクラスの男子にこう呼ばれてました。『ファントム』と。酷くないか?要約すると『怪人』ですよ。

 いや~初めてその名で呼ばれたときは一週間引きこもりましたね。

 そして俺が『ファントム』と呼ばれるようになった理由が、こいつにある。

 

 男子の言い分によると『何てめぇ学園一の美少女、いやッ!世界が誇る美少女と親しげに話してやがんだよッ!?』らしい。

 つまり、俺がこいつと話したことが原因と言える。

 その為、その後こいつから話しかけてこられても、俺は全て無視し続けた。しかしこいつは粘着質なたちなのか、それとも維持なのかいくら無視されても俺に話しかけてくる。

 そしてまた男子の言い分だ。『何てめぇ学園一の美少女、いやッ!世界が誇る美少女に話しかけてもらって無視してんだよッ!?』と、理不尽すぎる。

 それから俺はこいつを嫌った。

 

 話すと恨まれ無視して怒鳴られる。ならば、と俺がとった解決方法は簡単だ。こいつが俺に近づくと直様その場を去る。

 一度しか話したことがい=接点が無いのと同じではないか。

 だから俺とこいつに接点はないのだ。


 そこで険しい顔になっていた俺に気付いたのかこいつは気まずそうに口を開く。


「私のせいで色々されたのは知っている……それはすまなかった。だがこの世界でまでそう嫌がらなくてもいいではないか……そこまでされるといくら私でも……泣きそうになる…」

「ちょっ、え?」


 すると本当にこいつは泣きそうな顔になる。何故『ファントム』と呼ばれるような俺に、こいつは執拗にまで拘る?

 正直それは俺には理解できない事だが、やはり女子を泣かせるのは苦である。


「あ?……わかった、わかったから泣くな」

「本当だな?絶対無視しないな?私が近づいても逃げないな?」

「それは無r……無視しないし逃げないからッ!」


 無理と言おうとすると、とうとう涙を流してしまったので慌ててフォローする俺。なんだこいつはッ!?もしかして俺に恋でもしてんのか?意味がわからんッ!


「本当に本当だな……?」

「本当に本当ですのでいい加減泣き止んでもらえませんかね」

「うぅ~………」


 冷たく言い放つとまた泣きそうになる。と言うかキャラは、キャラはどうした?

 こいつははじめのように、学校でも強気な女子だった。それが何故、どうして、『ファントム』の俺なんかに嫌がられたぐらいで此処まで泣く?


「あ~もうッ!」


 よし、決死の覚悟を決めた。

 多分、いや絶対、この周辺に同じ学校の奴はいないだろう、多分。俺は歩み寄り、そっと抱きしめてやる。一瞬こいつはビクッと肩を震えさせたが、すぐに俺の胸に顔を填めた。


「今回だけだかんな……」


 俺はぶっきら棒にそう告げる。

 すると、こいつは小さな声で語りだす。


「私…私ずっと一人で……それで…」


 その時点で全て察してしまう俺は神でもなれるのではないだろうか。 

 つまりこいつはその類まれな、そして神秘的な体格容姿によりずっと孤立していたのだ。誰にでも等しくがモットーな俺は初見で普通に話していたが、普通の同級生達はやはり話しにくかったのだろう。

 だからこいつは普通に話してくれた俺に執拗に話しかけてきた。


 ああ、合点がいった。


「悪かったな……本当…」

「いや、私も何も言っていなかったから…」


 話しかけ、また話しにくい程神秘的な女子と会話したことによって孤立した俺。

 その類まれで神秘的な体格容姿故に孤立したこいつ。


 理由はどうであれ同じ穴の狢だったのだ。


 それから一時、俺達はその状態で過ごした。


 ----------


「んで、アンタこれからどうすんの?」

「私は初めに言ったはずだが」


 そうだった。と俺は頭を抱える。実際には抱えていないが。

 

「別にいいんだが……その…いいのか?」

「私は彰人がそんな事をしないと信じている」

「何で棒読み……」


 つまるところこいつは行き場がないので、知人である俺と行動を共にしたいわけである。

 まあ俺とて行き場はないのだが。


「多分……無理だろうな。ずっと一緒にいれば、アンタに手を出しちまう」

「………………………」


 本音だ。これほどまでの美少女と毎日一緒に生活していて、俺の練り消しの糸のような理性が耐えられるわけがない。

 すると、こいつは俯く。妥当な反応であるため、取り敢えずそっとしておく。

 と、思ったのだが、ほんの2秒程度でこいつは顔を上げる。


「よし、別に手を出されても構わん。大丈夫だ、問題ない」

「あのですねエルシャダイさん。そう言う事は軽く言っちゃ駄目ですよ?本気にしちゃいますよ?」

「エルシャダイとは誰だ?本気にしてくれても構わん。第一お前は私が唯一好意を持つ人物だ。他に好意を持つ奴なんぞおらんから大丈夫だ」

「元ネタ知らずにそれ言ったの!?てか軽く告白まがいのことしてるけど?てか何が大丈夫なの!?」


 ツッコミどころが多いエルシャd……こいつの言葉に思わず大声でツッコんでしまう。

 もしかして俺にはツッコミの才能が眠っているのかもしれない。と言うのはどうでもいい事で。


「確かに告白まがいな事を言っているな……いや、告白でいいんじゃないか、この場合?」

「確かにアンタ俺が一番好きだ的なこと言ったけどもッ!それは好意を持てるのが俺しか居ないってだけで……ってあれ……マジで?」

「大マジです」

「証拠は?」


 ようやく状況が飲み込めた俺は何とも馬鹿らしい質問をしてしまう。そしてそれが自分の発言ミスだと直ぐに思い知らされる。


「んっ…!?」


 眼前にはこいつの顔。つまり俺はキスされているわけだ。まあ触れるだけの短いキスだが。


「証明になるか?」

「なんでそんなに平気なんですかー!?」

「何かお前キャラ崩れてきてるぞ……?」


 確かに。

 俺はこいつの言葉で一端冷静になる。

 つまり俺はこいつに告白されて、キスされて、一緒に行動しようと言われているわけだ。

 

「はぁぁぁぁぁああああああああああああ!?」


 あまりの事態に絶叫する俺。

 告白されたのが切っ掛けか、俺はこいつの顔を覗き込む。うん、惚れ惚れするね。告白されてるんだから受けるのが普通だよね。いやちょっと待て。冷静になれ俺。

 そんな簡単に決めていいのか?

 そんなその場の流れで軽々しく決めていいのか?

 それが俺やこいつのためになるのか?

 ならないね。


「ごめん、今はその気持ちに答えられない。これから行動を共にして、答えを出す。それでいいか?」


 それが俺の答えだった。

 こいつは満面の笑みを浮かべて言う。


「やっぱりお前は私が感じた通りの人間だな」

「ん?」

「相手に誠実で、誰にでも等しい態度が取れる人間ってことだ」


 そこまで言われると何だか照れる。


「それに一緒に行動してくれるって言ってくれたしな、結局お前は優しいんだよ」


 こいつは俺が照れるような言葉を態と選んで言っているのだろうか?

 多分今、俺の顔はかなり赤いはずだ。恥ずかしくて俯く。

 しかし、身長差。

 こいつは俺が俯いていることに気付くと、俺の顔を覗き込んでくる。


「顔が赤いが、どうかしたか?」

「照れてんだよッ!?」

 

 普通話の流れ的にそれしかないだろッ!と心の中で毒づきながら、何も知らないこの世界で初めて出会った知人がこいつで良かったと思う俺であった。


「そいや、アンタ名前なんていうの?」

「………………」

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