不思議の国と僕
辺りは薄暗く、まだ夜は明けていない
本が隙間なく並ぶ、高い二つの本棚の狭い隙間に、僕は仰向けになっていた。
僕はしっかり、自分の部屋の、自分のベッドに、一日を終え、潜り込んだはずだった。
なのになぜ、このような
見知らぬ場所に横たわっているのだろうか。
異世界に召喚されたのか?
んなわけないな。
体を起こして周りを見回しても、異世界の使者や、どこぞの王様どころか、誰も居ない。
少なくとも、ここは〔現実世界〕であるはずだ。
その証拠に、立ち上がった僕の目線、その正面にある本は、〔ルイス=キャロル〕執筆の〔不思議の国のアリス〕だ。
本に関して無知の僕にも、流石に不思議の国のアリスが、現実世界の本であること位はわかった。
暫く歩いて、本棚の端まで来たが、知っている本は、芥川龍之介の羅生門、それから、宮沢賢治の銀河鉄道の夜、これ位しか見当たらなかった。
暫く見て回ると、並べられた本の高さが、がっつりと減っている棚があった。
どうやらここは、ライトノベルの並んでいる
棚らしかった。
色々な文庫の、色々なタイトルの本が、雑然と並んでいたが、どの本もふしぎと居心地が良さそうだった。
その中の一冊を手に取ろうとしたとき…
カタン
今まで、僕の足音以外の物音がしなかった〔図書館〕に、何かを落としたような、音がした。
続いて、「あ」という、人の声が遠くから、だが確かに聞こえた。
高い本棚の隙間を抜け、声のした方に小走りで行くと、
ドアが見えた。
白っぽい木の壁に、濃い茶色のつやのある、木のドア。
「…そう呟く…に….リスは…」
ドアに近づくにつれて聞こえ始める、声。
「…サギを追い…スは穴に」
ドアの正面まで着き、ドアノブに手をかけ、ドアノブを
「飛び込みました」
回す。
ガチャリ
小さな窓の有る部屋、図書館と同じ壁の、小さな部屋。
そして本棚、木製ねの椅子そして
「あ」
それに座る、黒いセミショートヘアの少女が僕を驚いた表情で見ていた。
「あの…夜分遅くに…えっと…始めまして。」
彼女はそう、口を開いた。