「お断り」なんて出来ないよ
よくわからない短編小説です。こういうのも素敵じゃないかなぁ、と思いつきで書きました。
《あなただけが知ってる〜私は〜それでも〜まだ――》
たまたま付けたラジオから偶然漏れ出した曲。僕はその異様な聞き覚えに違和感を感じずにはいられなかった。
次に生まれたのは怒りの感情。気が付けば身体の制御が出来ておらず、携帯とICレコーダーを持ち出し、車に乗り込んでいた。
目的地は確認出来ていた。近場の公園だ。公開収録らしい。
そして先の流れていた曲は、今や邦楽チャートを総なめしているとのこと。
笑わせてくれる。
着くまでに時間はかからなかった。よくよく考えれば電話で十分じゃないかと思ったがもう遅い。ここまで来たら言いたいこと直接言ってやる。
バリケード越しに見える歌手は、未だ楽しそうに収録を続けている。その表情に僕はもう我慢ならなくなり、大勢の人込みをかき分け彼女に近づいていく。
警備員が取り押さえに来たが、それをも掻い潜る。今の僕を止めることは出来ない。
気が付けば目標は目の前。遂に言ってやる時が来た。
「な、なんでしょうか?」
唖然としている彼女。だが、そのセリフは僕の方だ。
大きく息を吸い込んで一言。
「人の曲ぱくってんじゃねえよ!!!!!」
持ってきたICレコーダーを流しながら突き付けて言ってやった。
勝った。そう思った。
けど、なぜだ?彼女の表情は一変、穏やかなものになっていた。
「やっと会えました」
「はぁ?」
今度は彼女が僕に近づいてくる。そして細々した両手でICレコーダーを持った手を握ってきた。
「はじめて聞いたときからすばらしいなって思ったんです。もう五年も前になりますかね……一度しか聞くことの出来なかったこの曲を音楽の知識が一切ない私に再現させるには少し時間がかかりすぎてしまいました。でも…こうしてあなたに会うことが出来た」
「……あなたは僕の曲を真面目に聞いてくれていたのか」
「……勝手に使ったのはごめんなさい。でも…あなたにもう一度会うにはこれぐらいしかいい方法が思いつかなくて…本当にごめんなさい」
申し訳なさそうに頭を下げる彼女。僕はそれを見て、怒りの感情などどこかに吹っ飛んでしまった。
彼女に頭を上げるよう促す。
「あなたはなぜこんな方法を?」
「……この曲は私だけしか知りませんでした。でも、私はあなたの伝えたかったことをみなさんにも知って欲しかったんです。それに――あなたの伝えたかったことはまだまだあったはずです。私はただそれが知りたかったのです」
新手の告白である。あまりにも斬新だ。しかし、僕は悪い気はしなかった。あのころの僕の思いを代弁してくれていたのだから。
「……あ、あなたの歌を、もっと聞かせてはいただけませんか?」
やれやれ、とは思いながらも、僕は世界でたった一人の僕のファンに返事をした。
「卑怯だ。そんな熱心に頼み込まれたら――」
END
最近、パクったパクられたの話をよく聞きます。でも、そんなパクリの裏に、こんな素敵な事情があったらおもしろくないかな? なんて妄想してみたのです。
しかし、困ったことにこの小説も似た内容のがあったようななかったようなとだんだん不安に…
他人の作品にそこまで意識しないと自分の好きなことが書けなくなるって、ちょっと不自由な世の中ですよね。
パクリかな?なんて思った時は、快くリスペクトされるぐらい自分はすごいんだ、なんて胸を張れるぐらいの気持ちでいたいものです。
ではでは読了有り難うございました。




