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俺は釣りが好きだ。川釣りだ。
山奥のさらに奥に、誰も知らない絶好の穴場がある。
日曜日、そこに行く。
幹線道路からわきの山道に入り、しばらく進むと分かれ道がある。
右は舗装された道。左は土むき出しの道だ。
当然左に行く。
進むほどに道は荒れ、ぼこぼこになり雑草が生え、落石もある。
そんな道を車で一時間ほど進むと、行き止まり。
そこから川におりて、川べりを歩いたり崖を登ったり、川を泳いだりしながら上流をめざす。
そんな苦行を二時間余り耐えれば、至福の時間が待っているのだ。
――もうすぐだな。
川べりを歩きながらそう思ったとき、何かが川を流れてくるのを見た。
それは川の流れで少し浮き沈みしながら流れてきた。
――?
それは人間の腕。
大きさから子供の手のようだ。
でもそんなものが流れてくるわけがない。
人間の腕でないとしたら、マネキンかなにかか。
しかし誰も来ないようなこんなところで、いったいだれが何の為にそんなものを流すというのだ。
考えていると、それは下流に流れていった。
――なんかの見間違いか?
見間違いなら、何を人間の腕と見間違えたというのだ。




