表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/4

霜の窓にあらわれる、銀の地図

 冬の朝は、音が小さい。

 しん。

 しん。

 その「しん」の中で、窓がきらり、と光っていました。


 サクは布団から顔だけ出して、窓を見ました。

 ガラスいっぱいに、白い霜。

 銀のレースみたい。森みたい。羽みたい。


「わあ……!」


 サクが近づくと、台所からおばあさんの声がしました。


「触ると消えちゃうよ。見るの。見るだけで、きらきらは育つんだよ」


 サクは手を引っこめて、息をそっと窓にかけました。


 はぁ。


 霜の模様がふわっと白くなって――その中から、細い線があらわれました。

 道みたいな線。くねくね、のびる線。

 角には小さな星のしるし。


 ちかっ。

 ちかっ。


 矢印まで光ったのです。


「……地図だ」


「おばあちゃん! 霜が、地図になってる!」


 おばあさんが窓を見て、ゆっくりうなずきました。


「霜の窓に地図が出る朝はね、町のどこかで“あったかいもの”が迷子の日なんだよ」


「迷子?」


「うん。あったかい笑顔。あったかい声。あったかい気持ち。どれかがね」


 サクは地図をじっと見ました。

 線が、ゆっくり動きます。生きているみたい。

 矢印が、右を指していました。


 そのときです。


 霜の結晶が、ぽろっ、とひとつ落ちました。

 サクの手のひらに乗って、きらり。

 きらり。


 結晶が、ちいさな顔になりました。


「おはよう!」


 銀の帽子の、ちいさなこびと。

 息をふくと、きらきら粉が舞います。


「ぼく、しもっこ。銀の地図の案内人だよ」


「ほんとにいるんだ……!」


 しもっこは胸を張りました。


「急ごう。太陽が出ると、霜は溶ける。地図も消える」


 そして、指を一本立てました。


「ルール、言うね。短いよ。

 息を『はぁ』ってかけると、道が明るくなる。

 笑うと、星のしるしが増える。

 『ありがとう』って言うと、矢印がはっきりする。

 触りすぎると、地図がうすくなる。やさしく、見る」


 サクは大きくうなずきました。


 はぁ。

 はぁ。


 地図の線が、ちかっ。ちかっ。


「行ける!」


 サクはコートを着て、マフラーを巻いて、外へ飛び出しました。

冬の朝の霜って、ただ冷たいだけじゃなくて、よく見ると本当にきれいです。

このお話の「銀の地図」は、宝の場所じゃなくて、やさしさの場所を示す地図にしました。

“触ると消える”というルールは、きらきら(小さな気づき)も、乱暴に扱うとすぐ消えてしまう、という気持ちの表れです。

まずは「見る」「気づく」――そこから物語を始めたかったのです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ