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1 宇宙船

・・船体、進行方向、異常なし。目標確認・・

「船長。あと30分で到着します。」

「・・・。全員準備にとりかかれ。」

 辺りに広がる銀河団。そのなかで無数に存在する星。そして、それらを取り巻いている、ビッグバンを起源として永遠と広がり続けている暗黒の世界、宇宙。この世界の中を移動し続けている一隻の宇宙船があった。楕円形の船体に薄汚い紺色と緑色が混色されたような色が塗られている。側面には二等辺三角形の形をした羽がつけられ、船体の後部には出力装置がつけられている。

「目標確認。千キロメートル先まで接近。小惑星衝突確率1億分の1。異常なし。」

「あれの準備は万全か。」

「ただいま最終調整に入っているところです。75秒後に発射可能です。」

 その宇宙船は、上部の中央辺りから下部の後部にかけて大きく亀裂が入っている。ギシギシと音をたて宇宙空間を移動するそれは、いつそのまま分解してもなんら不思議ではないように思われる。

「船長。小型船部隊の準備が完了との報告がありました。」

「よし。着弾と同時に行動を開始させろ。」

「了解。」

 宇宙船の下部から大砲のようなものが姿を現した。これも同様に薄汚い紺色、緑色が混ざった色をしている。あたりには小さな亀裂が点々としている。

「発射角度45度。出力250。異常なし。発射カウントダウンを始めます。発射20秒前・・19、18、17、16・・」

大砲の延長線上には、一つの星があった。赤色のような色をしている。大きな海は見えないが、極地方には氷のようなものが確認できる。

「6、5、4・・・」

大砲の発射口が明るく光り始めていた。

「3、2、1・・・発射」

楕円形の船体が大きく上下左右に揺れ、新たに小さな亀裂が入った。船体の下部から休憩の物体が勢いよく飛び出した。

「・・・発射成功です・・」

球形をした物体がその星めがけ、直進して行った。

「着弾予想10秒前。小型船部隊発射準備完了」

辺りに静けさが漂った。

「着弾」

赤色の星の中に1つの緑色の点が現れ、それは瞬く間に膨れ上がり、その球体を飲み込んだ。

「小型船部隊発進」

宇宙船の両側上部から数百の小型宇宙船が蜜蜂の軍団のように飛び出し、赤く光る球体の中めがけ、一気に飛び込んで行った。

「作戦施行状況、良好。船長、これが当たれば、ようやく私たちの新しい星が見つかります」

「うむ。いよいよだな。俺達が代々続けてきたこの長い旅が終わる日は近い」

「そうですね。それでは情報が入り次第ご報告いたします」

宇宙船がギシギシと音をたてた。

それから数時間が過ぎた。

「船長。小型船部隊からの報告です。探査機からの発信があったことは確実です。この惑星は、水が存在していたと思われる形跡は確認されました。実際に極地方には氷も発見されています。しかし、温室効果はほぼなく、磁場もありません。調査の結果、主要生物のみならず有機物の存在確率が極度に低いです・・」

「なんだと」

「・・残念ですが・・、居住するには時間が必要かと」

「ちっ、・・。すぐにやつらを退去させろ。最終候補星へ向かう」

「ただ、今までの候補星から考えると、この星はハビタブルゾーンに位置しており、時間をかけて環境整備を行えば、見込みはあるかと・・・」

「うるさい!今すぐ居住可能でなければ意味はないのだ」

「しかし・・・、これ以上の好条件は皆無に等しいのではないかと」

「黙れ!すぐ退去だ。俺に歯向かうのか」

星の中から宇宙空間へ小型船が飛び出し、大型宇宙船の中へと戻って行った。船員からの新たな報告が入る。

「探査機からの発信による最終候補星・・。距離137光年」

そいつの顔はさらに険しくなった。

「おい。お前、ふざけているのか!今言った通り、俺達にはもう一刻の猶予も許されていないのだ。お前も分かっているだろう」

「し、しかし・・私たちの全力の情報収集の結果です。恒星自体は赤色矮星ではありますが、それからの距離は生命維持の条件としては理想に近く・・」

「そんなことは分かっている!速やかに居住できる星が必要なのだ。このままでは我々の未来は絶望的になる!」

そいつの顔の険しさは増し、言葉に怒りがさらに乗りかかってくる。

「船長。申し上げにくいのですが」

追い打ちをかけるるように、他の船員から報告が入る。

「・・・今度は何だ」

「あ。サブライトスピード出力装置が、故障している模様です」

「なんだと。修理にどれくらいかかるんだ」

そいつは怒りを抑えることはもはや無理になってきていた。

「エンジニアが減っているため、半年はかかる見込みです」

「ふざけるなー―!我々に残された時間はもう無いと言っているだろうが!!」

そいつは大声で叫んだ。船員達は何も言わずそいつを見つめている。そんなこと、私達は分かっている。船長だって分かっている。ただ、焦りと怒りを放出できるところがここでしか無いのだ。加えて、これ以上船長を刺激することになってはいけない・・・。船内にはしばらく沈黙の時間が流れた・・・・。

「バットさん、バットさーん。」

船内から陽気な声が聞こえてくる。

「・・・なんだ!船長と呼べと言っているだろ!」

そいつは放出した怒りが収まりかけていたが、あまりにも空気を読まないような陽気で軽々しい態度を取られたことにさらに憤慨をした。

「あ、申し訳ありません。船長」

言葉はそう放たれたが、陽気な雰囲気は変わらない。船員は続けて言う。

「不具合が生じていた探査機が復活していたようで、ようやく情報を受信することができました。これを見てください。」

陽気な船員はそいつに手持ちのモニターを使って情報を見せた。船長のそいつは、怒りは収まらないままではあったが、しぶしぶ情報を見た。そして、一瞬動作が止まった。

「これは・・・有機物の反応・・なのか?」

「はい。そうです!これまで二百機の探査機を送ってきましたが、この反応は見たことがありません。」

「うむ。それにしてもここまではっきりと反応が出るとは疑わしい。やはり故障しているのではないか?」

「そんなことはありません!大丈夫ですよ!」

陽気な船員はずっと陽気なままである。

「ほら、こちらも解析画像も見てください。この星は大量の液体に覆われています。おそらく水です。固体の状態ではありません。水ですよ!バットさん」

そいつはため息をついた。

「本当にお前ってやつは・・・。よく今入った情報をろくに分析もせずこうも肯定的に話せるものだ。まあ、我々に残された時間はもう無いことも事実ではあるが」

「行きましょう!バットさん」

「船長と呼べと言っているだろ!」

「そうでしたね!船長!」

「まったく・・・。まあ、お前の陽気さには幾度となく救われたことも事実・・・」

「距離はたったの約8万kmです。亜光速で移動できなくなった今、行ってみるチャンスですよ。この距離であれば半年ほどあれば到着できます」

「・・・。我々に選択肢はもう残されていない」

そいつはゆっくりと腰を上げ、船員に告げた。

「第12惑星。そう名付ける。我々に残されている時間はあとわずか。一刻の猶予も許されない。失敗すれば・・・、まあ、我々の存在自体が無くなってしまうかもしれない。皆の者覚悟しておけ。出発だ!」

暗黒に包まれていたその古ぼけた乗り物は、瞬く間に白い光を発し、姿を消した。

 彼らが置いていった星は、本来の赤色の姿を取り戻していた。


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