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緑中の光  作者: いとい・ひだまり
第一章 君と共に

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第五話 切る

「なつきさん、あなた憑いてるわよ」

 四限目が終わり、日直のきみつきが先生に付いていったのを見送って少し後。お弁当の準備をしていたらクラスメイトに話しかけられた。

竜胆(りんどう)さん。ついてるって何? ゴミ?」

「……分からないの? あんなに……」

 僕が怪訝な顔をしていると彼女は続けて言った。

「まあいいわ。あなた、いつから彼と一緒にいるの?」

 きみつきのことだろうか。

「中学生のとき」

「そう。彼は変わった?」

「どうしてそんなことを聞くんだよ」

「いえ、気になっただけよ。最近だけでも、考えてみてほしいの。それと……これ、あげる」

「何これ。飴?」

 渡されたのは、親指の爪くらいの大きさをした透明な飴だ。

「すぐ食べきってね。誰にも言わないでよ」

 竜胆さんは何かを気にするように辺りを見回すと「じゃあね」とポニーテールを翻して去っていった。飴は少し塩気があって美味しかった。



 帰り道、竜胆さんに言われたことを考えた。

 きみつきが変わったか、って? 変わってないさ。彼はずっと――彼だった筈だ。

 だけど、何故だかちらつく神社のあの人。昔彼のことを話したら、きみつきにやきもちを焼かれて、今は君だけって言ったのを覚えてる。初めて会った時からずっと変わらないあの色で、僕はきみつきが大好きで。薄くなっていく世界で、一つだけのその色は僕の世界の道導だ。

 いつから一緒にいるかとか、なんで一緒にいるかとか、考えるまでもなく当たり前で。気付けば隣にいて、ずっと一緒で。


 ――いつかの帰り道、不意にきみつきが言った。

「ありがとう。一緒にいてくれて」

 頬を緩めて僕を見つめる、恋慕う顔がとても美しかった。

「僕の方こそ、一緒にいてくれてありがとう」

 繋ぐ手が絡まると、周りが一層鮮やかになって。

「ずっと一緒にいたいね、なつき」

「そうだね、きみつき」

 交わした約束、結んだ手。温かかった。

 僕の世界にはきみつきだけ。それでいい。彼には当たり前みたいに好きが言える。つき合おうって言ったかどうか記憶にないけど、僕達はそういうもの。もうずっと一つだ。それがいいんだ。いつまでも一緒にいたい。



 ――その日の晩。僕は寝ていた筈なのに気が付くと天井を見つめていた。

 やけに落ち着かなくて、何かするべきだという感情が増幅する。それでも、その何かは分からない。ただ、何かが違う。間違っている気がするんだ。


 曖昧な世界から離れようとしたのか、無意識にもがいたのか、僕は……分からなくなってしまった。

 世界は、僕は、本当は何だった?

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