番外編二
狐に飲み込まれかけている鬼見月に向かう夏気。ゆっくりと歩いていく彼はしっかりと地を踏みしめている。しかし狐との接触により夏気まで飲み込まれる事態になっては困ると竜胆は叫んだ。
「危ないから離れて!」
しかし夏気が止まる気配はない。
「ナツキくん離れぇ!」
続いて烏丸も叫んだが、同じだった。
先程狐に魂を喰われかけたというのに、夏気は二人の声に全く耳を傾けない。その目は鬼見月だけを見つめ光を宿していたが、彼の後ろにいる二人には見えなかった。
「駄目だわ烏丸、ナツキさん正気じゃない。早く祓うわよ!」
「あいさっ」
榊を握り直し二人は駆け出す。しかし夏気の横を通り過ぎるすんでのところで彼は消えた。続いて鬼見月は目を閉じ、腕や脚の関節など極僅かな部分を残し狐に姿が変わる。
「りんちゃん、二人が!」
「遅かったって言うの? ……っ烏丸、とにかく狐を祓うわよ!」
「うん……っ」
二人は改めて狐と、僅かに見える鬼見月とを引き剥がそうとする。狐はあまり動かず咆哮を浴びせていたが、とどめを刺される前に立ち上がったかと思うと完全な狐の姿に変わった。
「飲まれた……訳やないよね?」
「違う、と思いたいわ。とにかく今は祓うしかない」
「せやね……」
心なしか背が縮んだように見えなくもないが、狐は首を振ると二人目掛けて飛び込んできた。踏み潰されないよう狐を避け、二人はその体に榊を振るう。動きを止めた狐は静かな呻き声を上げ倒れると、そのまま塵のように消えていった。
「……狐は祓った。けれど、あの二人は一体どこに?」
「っ探そう。絶対どっかにおる筈なんよ!」
邪気が残らないよう辺りを浄めてから、二人は夏気と鬼見月を探す為に駆け出した。




