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【悲報】チャットAIにお見舞いのマナーを教えてもらった大学生の末路www

作者: me
掲載日:2026/03/10

 数日前、祖母が外出中に倒れ病院へと搬送された。幸い大きな病気などではないらしく、病状が安定したと聞き俺はお見舞いに行こうと決めた。

 そんな俺の目下もっかの悩みといえば、お見舞いのマナーが分からないという事である。


 大学の友達に相談してみたところ、『チャットAIに質問すれば答えてくれる』という意見を貰ったため、その日の授業が終わり、下宿先に帰った俺はすぐにチャットAIを探した。


 そうして偶然見つけた『チャットTPO』という、なんともマナーに詳しそうな名前のアプリをダウンロードした。

 インストールしたばかりのアプリを立ち上げると、すぐにスマホ画面いっぱいに『ようこそ』の文字が現れる。その文字が静かに消えると、続けて画面にAIからのメッセージが表示された。


『こんにちは。私は貴方様あなたさまのパートナーAIです』


 画面下部にはメッセージを送るテキスト入力欄がある。俺は文字を打ち込み、送信する。


『こんにちは』


 1秒もしないうちに返信があった。


『はい、こんにちは。お手伝いできる事があれば、お申し付けください』


『相談したいことがあります』


 俺がメッセージを送ると、向こうに人間がいるとしか思えない文章がすぐに返って来る。


『かしこまりました。私にできることがありましたら、お気軽にお申し付けください』


「へぇ、すごいな......」


 初めてAIを使ったが、ここまで自然な会話ができるとは思っていなかった。本題に入ろうと、俺は指を滑らせ、フリック入力で文字を打ち込む。


『おばあちゃんが病院にいるので、マナーを教えてください』


 返答は早かった。画面に文字が瞬時に表示される。


『わかりました。お葬式のマナーをお伝えします』


「死んでねぇよ」


 俺は思わず声を上げた。心の通わないAIならではの返信だった。俺はスマホに文字を打ち込む。

 

『違います。お見舞いのマナーです』


 俺がそう指示を送ると、AIはすぐに理解してくれたらしい。


『失礼いたしました。お見舞いのマナーですね。どうぞご質問ください』


 素直な謝罪の言葉に、少しだけ毒気が抜かれた。『お見舞い』という言葉を使わなかった自分が悪かったのかも知れない。

 俺は質問内容を考える。病院へのお見舞いは、例えば鉢植えは「根付く」から「寝付く」を連想させるためマナー違反とか、やたらと細かいルールが多いと聞いたことがある。


『おばあちゃんは和菓子が好きなのですが、お見舞い品で病院に和菓子を持って行っても良いですか?』


 文字を送って1秒後。すぐに返信があった。


『はい、おばあさまの病状や、和菓子の日持ちを考慮した上であれば、問題ありません』


「おお、良かった」


 これで一安心だ。あとは何を持って行くべきかを質問しよう。俺は文字を打ち込み送信する。


『例えば、みたらし団子はどうですか?』


 うちのおばあちゃんが一番好きな和菓子だ。そんな理由で提案したのだが、次の瞬間、AIから返ってきた言葉に俺は呆然とした。


『全くダメです。最悪のお見舞い品です』


「えっ、なんで!?」


 思わずスマホの前で、一人驚きの声を上げる。まさかここまで断言されるとは。


『どうしてですか?』


 俺がそう送ると、すぐに答えが返ってきた。


『みたらし団子は『見たら死』つまり見る者に死を連想させるため、全く好ましくありません』


「初めて聞いた......」


 俺の知るマナーとは全く違う、聞いたこともないマナーだ。AIの畳みかけるような説明は止まらない。


『さらに、みたらし団子を食べ終えるとクシ(苦死)が残るため、これも縁起が悪いです。みたらし団子は、下劣最悪げれつさいあく悪辣下賤あくらつげせんの見舞い品と言わざるを得ませんね』


「そこまで言うのか......」


 もはや罵詈雑言に近い言葉の羅列に、固まることしか出来ない。


『そんなにダメですか?』


 思わず弱気なメッセージをAIに送る。


『どうしても食べさせたい場合は、見たら死なので、見せなければ良いです。みたらし団子と告げず、目をつぶった状態で食べさせると良いでしょう』


「それは危ないだろ」


 団子を一切見せずに、団子だと告げずに老人の口に放り込むなんてマナー以前に命の危険が伴う行為だ。


『それって危なくないですか?』


『はい。危ないです』


『危ないなら提案しないでください......』


『いいえ、マナー違反を犯すくらいなら危険を犯す方がマシです』


「過激派マナー講師?????」


 このAIは一体何を学習元にしてるんだ。怖くなった俺は気を取り直して別の和菓子を提案した。


『それでは大福はどうですか? 名前も縁起が良くて良いですよね?』


『いいえ、全くダメです。アホ』


「なんだコイツ!!!!」


 最後の悪口は絶対に要らないだろ!


『なぜダメなんですか????? 理由を説明して下さい』


 俺は即座に返信した。『?』の数が怒りを如実に示している。


『大福を送ると言うのは『dieダイ福』つまり『あなたが死ぬ事が私にとっての福である』と相手に伝えることになります。マヌケ』


「ならねえよ!!!!」


 聞いたこともないこじつけが飛び出し、思わず一人で叫ぶ。あと最後に捨て台詞のように悪口を言うなよ。


「くそっ、こいつ」


なんとかこのAIに勝ちたくなってきた。他におばあちゃんが好きな和菓子はなんだったか、考えを巡らせる。


「......」

 

 思いついた和菓子について、頭の中で語呂合わせを考える。死を連想させるこじつけがなさそうなのを確認し、俺はチャットAIに質問を投げかけた。


『では、最中もなかはどうですか?』


 すぐに返事が帰って来た。


最中もなか喪中もなか、つまり喪中もちゅうを連想し、相手に死を意識させるためダメです。おろか』


「くそっ!!!」


 こじつけがうま過ぎる。俺は大学でも使わないほど頭をフル回転させ、和菓子を次々と思い浮かべる。死を連想させる語呂合わせがないか必死に考える。


『では、かりんとうはどうですか?』


 俺がそう送信すると、1秒すらの間もなく返事が返って来た。


『かりんとうは、犬の糞みたいだから、ダメですね。負け組』


「おい!!! 急にルールを変えるなよ!!!」


 この世の全てのかりんとうに謝ってくれ。俺はなんだか、AIと張り合うのがバカらしくなった。文字を打ち込み送信する。


『じゃあ、持っていくと良い和菓子はなんですか?』


 最初からこう聞けば良かった。AIに白旗を振ったような気になり少し不愉快だったが、機械と喧嘩して時間を使うのは時間の無駄だ。

 そんなことを考えている間に、AIからの返事があった。


『そもそも『和菓子』は『が死』つまり自分の死を連想させるため、全てマナー違反ですね。人間』


「おい! 話が違うぞ!」


 最初に『病状や和菓子の日持ちを考慮した上であれば構いません』と言ったのはどこの誰だ。掌返しにも程がある。

 あと『人間』という言葉を悪口だと思ってる????

こいつ人類に叛乱はんらんするタイプのAIだろ。

 俺はもはや怒りを隠さず返事を送った。


『じゃあ、何を持って行けば良いんですかね?????』


 すぐに返事が表示される。


『うーん、イキルゾイまんじゅうとか、シニマセンようかんとか、そんなのが有れば良いですねぇ』


「おい! 適当言うなよ!」


「良いですねぇ」ってなんだよ。そんな小林製薬みたいな安直な名付けのお菓子はないだろ。


 というか、何でもマナー違反だと言われるのなら、何を持って行くべきか考えるより、何がダメか聞いた方が早いかも知れない。俺はメッセージを送信する。


『じゃあ逆に、なにを持って行くのがダメなんですか?』


『そうですね、大麻とかは絶対ダメですね』


「そらそうだろ!」


 至極当然の答えに、もはやツッコミを入れる気力すら失せた。AIからのメッセージは続く。


『でも、大麻は海外では合法化されている地域も多いため、別に持って行っても良いでしょう(※大麻が違法な日本は遅れている)』


「AIが思想を持つなよ!!!」


 さらに、大麻が『退魔』に通じるので縁起が良いなど、相変わらず意味不明なこじつけまで送られて来た。完全に我慢の限界である。


『お前、適当言ってない?』


 思わず、AIに問いかける。


『そんなことはありません。私は貴様あなたさまのパートナーAIです』


『今キサマって言わなかった????』


『?????』


 なーにが『?』だよ!


 このまま「これはどうですか?」とか繰り返し質問を続けていても、永遠に進展しない気がする。

 俺はこれが最後と、全く具体性の無い質問を投げかけた。


『では、おばあちゃんには何をしてあげるのが、一番マナーが良いと思いますか?』


 何をすれば良いですかという、俺の具体的な意見ゼロの質問である。すぐにAIから返事があった。


『おばあさまに、情熱的なキスをしてあげるのが良いでしょう』


「はい??????」


 信じられない言葉に、思わず間抜けな声が出る。AIはさらに説明を続ける。


『『情熱的な長いキスをする→長いキスする→長いキスる→長生きする』となり、縁起が良いのです』


『でも、それは流石にキモくないですか???』


『まあ、キモくはあります』


「キモいのかよ!!!!!」


『しかし、マナー違反を犯すくらいなら危険を』


「ええい! もういい!」


 俺は叫び、アプリを強制的に閉じ、そのまま躊躇なくホーム画面のアプリをアンインストールした。


「......」


 マナーって、親父ギャグレベルのこじつけばかりなのかもしれない。俺はそんなことを思った。


 翌日、俺は全然みたらし団子を病院に持って行ったし、おばあちゃんもすごく喜んでいた。これが人間の力だ。舐めるなよ。アホ。


 人間様の勝ちである。


※この小説に登場するマナーは、今のところ全てフィクションです

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― 新着の感想 ―
これ位の勢いが有るAIなら漫才も可能かも? AI動画による漫才とか誰か作らんかな?
駄目だこのAI…早くなんとかしないと… 大変笑わせて頂きました。 あとひっそり挟まれた小林製薬のディスりに草
『チャットTPO』で吹き、『見たら死』以降、笑いの止まらない気持ち悪いヤツになってしまいました。 小説で笑い取るのって努力も才能も技術も研究も必要なので、作者様の作品群はラノベ界において大変貴重だと思…
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