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ダメ元というか
これを読ませたら
奴らは不快になるだろうと
考えて書いたものである。
検閲に引っ掛かるのは
最初から覚悟の上である。
職員を見ると
熱心に読んでいる。
しかも
その時間から
推測すると何度も
繰り返し読んでいる。
これは
ダメだね!
書き直して!
という
職員の言葉を
僕は確信していた。
ところが
ところがである。
職員の第一声は
信じられないものだった。
素晴らしい!
と
検閲を終えて
職員は僕に言ったんだ。
えっ?
と
僕は思わず
職員の表情を
観察してしまう。
素晴らしいとは
冗談で言っているのか?
それとも
本心で言っているのか?
それを
職員の表情から
判断するためである。
すると
職員の表情は
いたって真顔だった。
本心から
僕の手紙の内容を
職員は褒めているんだ。




