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それゆえ
僕のことを
肝っ玉の据わった子だと
所長は思っているんだろう
そいえば
松山さんにも
北海道旅行中に
君は本当に
肝っ玉が据わってるな!
きっと
将来は大物になるぞ!
と
僕は何度も
言われていた。
あの時の
僕ならば
殺すと言われても
恐怖など無かったはず。
それは
いつ死んでもいいと
僕は思っていたからだ。
当時の僕には
失うものなんて
何一つ、無かった。
夢も希望も
持てなかった。
あの頃に
望んだいたことを
しいて言うならば
いつか腹いっぱい
美味しい物を食べたい!
と
いうことだけだった。
それでも
小沢君と野村君との
中学校生活は楽しかった。
その唯一の
楽しみを奪ったから
鬼頭、貴島、間瀬を
僕は懲らしめたんだ。
あの事件当時と
今の僕は違うんだ。
失う物もあれば
僕は死にたくない。




