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その金額を
所長は知ってるし
院内学級の先生も
薄々知っているだろう。
それゆえ
4月の面談で
私の方が高坂君に
御馳走してもらいたい位だ!
とか
つい所長は
口が滑ったんだろう。
おそらく
妬みまではないが
その大金を手にできる
僕に羨ましさがある。
所長といえど
生身の人間である。
社会人として
何十年もの間
真面目に働いてきたのに
子供の教育費などで
家計は苦しいゆえに
乏しい小遣いである。
しかし
僕のような
16歳の少年が
簡単に大金を得ている。
そのことに
所長は理不尽さを
つい感じてしまったんだ。
羨ましくがあるとか
理不尽さを感じたとか
僕が断言しているのは
後になって
所長は僕に正直に
自分の気持ちを
話してくれたからだ。
ただし
その時には
所長の考えは
もう変わっていた。




